再開された佐狐vs柊のタイマン。先刻に輪をかけて迫力のあるタイマンに、会場内の全員が息を飲み、手に汗を握っていた。
獅子頭連側の観客席がざわつくが、それは風鈴も同じことだ。
口をぽかーんと開けて固まってしまった楡井の前に、あなたの玲央菜が手をかざすが、反応がない。目の前のタイマンの情報量でショートしてしまったようだ。
桜もまた、半ば呆然とした様子で柊と佐狐のケンカに釘付けだ。
あなたの玲央菜と蘇枋の言葉に、桜はなぜか顔を赤くしてそっぽを向き、ぶつぶつと文句を垂れた。
あなたの玲央菜は桜の顔を見てにっこり微笑んだ。
桜が赤い顔でそっぽを向いてしまったので、タイマンに目を戻す。
獅子頭連側の観客席も、迫力満天のタイマンに活気づいていた。
興奮して両の拳を握る兎耳山に、十亀はのんびり答え、色付きサングラスの奥から佐狐の奮闘を窺った。
佐狐の蹴りを身を屈めて避けた柊が佐狐の横っ面を蹴り上げた。
佐狐は目の前の柊を睨み付けた。
脳裏に浮かぶ、風鈴の制服を着た柊の後ろ姿。
記憶は数年前に遡った。まだランドセルを背負っていた頃。いじめられていた佐狐を、あなたの玲央菜と翔琉、そして柊が助けてくれた。
差しのべられた手に、無我夢中ですがりついた。その日から、オレの生活は変わった。
あの頃のあんたと翔琉さんはめちゃくちゃ強くて、
自分から群れを作ることはなくても、自然と人がついていくような人達だった。
オレももちろん、その一人だった。
出会いも相まって強烈に憧れた。
この人達の後ろを歩けるようになったことが心底誇らしかった。
この人達の後ろを、ずっとずっと歩いていけるのだと思っていた。
あなたの玲央菜は仲のいい友達で、梶と知り合ったのもあなたの玲央菜が引き合わせてくれたから。二人でよくあなたの玲央菜と翔琉さんの家に遊びにいった。
そのとき、いつも出迎えてくれたのが、梨恵さんだった。
そう言える日々が続くと思っていたのに、中1の秋、梨恵さんが死んだと知らされた。交通事故らしい。
葬式ではあなたの玲央菜が呆然と俯いて目を見開いていた。オレの隣では梶がボロボロ泣いていたのを覚えてる。
わかったのは、梨恵さんにはもう会えないということと、人はどれだけ善良だろうが強かろうが、簡単に死ぬということだけだった。
梨恵さんの死から1年後、柊さんと翔琉さんが中学を卒業して風鈴に入ることになった。
淡白な返事だったけど、オレは気にせず続けた。
無邪気に続けるオレを、2人が同時に振り向いた。
当時統一されていなかった風鈴で、あんた達がてっぺんを獲る。オレはそれを間近で見るんだと、本気でそう思っていた。
頭が真っ白になった。
この人は今、何て言ったんだ?ついてこない方がいい?
もう言わないでくれ。
そう言って歩いていく2人の背中を、呆然と見送った。梨恵さんを見送ったように。
なんで?
その日からオレはケンカに明け暮れた。朝から晩まで、学校にも行かずひたすら。あなたの玲央菜や梶から心配するメールが毎日届いたし、2人は毎日授業で配られたプリントや学校の手紙を家に届けてくれた。でも、顧みる余裕はなかった。
その日、いつものように絡んできたヤツらをボコボコにした。手が血で真っ赤に染まっているが、自分の血なのか相手の血なのかわからない。興味もなかった。
だけど、
緩慢な口調で語りかけてきたその声だけが、いつもと違った。
子供のようにはしゃぐ兎耳山さんを押さえつけながら、十亀さんは当時のオレを獅子頭連に誘った。
重要なのはそれだけだ。
掴んでいたヤツの胸ぐらを手放しながらピシャリと言った。上も下もどうでもいい。
強くなって、あいつらを倒して、
後悔させてやる
その一心でここまで来た。だから
負けるはずない。
柊さんの股下を潜って背後を取り、殴りかかる。だけど、オレの拳が柊さんを殴るよりも、柊さんの蹴りがオレの顔面に叩き込まれる方が早かった。
それでも、倒れるわけにはいかない。
がむしゃらに放った拳は柊さんの大きな掌にすっぽり収まった。
拳から力が抜ける。腹にでかい衝撃がぶつかって、床に体が崩れ落ちた。振れた視線に、いつの間にかオリに入ってきてた翔琉さんの姿が映った。
耳に響いた柊さんの『すまなかった』。違う、そうじゃない。あなたが謝ることなんてなにもないんです。翔琉さんも、悪くないんです。
気を使ってくれたのは、本当はわかっていたんです。でも、
『お前はついてこない方がいいよ』
それだけは言ってほしくなかった。あなた達どちらの口からも聞きたくなかった。
姉のように慕っていた人を亡くしたあと、あなた達を無我夢中に追いかけて喪失感を埋めていたから、いきなり目の前が真っ暗になってしまったような気がしたんです。どうすればいいかわからなくなったんです。
自分勝手なのはわかっています。でも、あなた達はずっとオレの目標だったから...
あなた達がどこで誰をかつごうが、どうでもよかったんです。オレはただ....
柊さんと翔琉さんに、『ついて来い』って言ってほしかったんです....
毎度恒例作者の駄弁りコーナー😃✌️🎉
この回原作でもアニメでもマジで泣いたよね....原作の2倍辛くしちゃってごめんよ佐狐君....
今回は佐狐君が主人公でしたね。そしてしれっとオリに入ってきてる翔琉兄ちゃんはなにやってんだ。今頃水木さんと中也兄ちゃんが怒り狂って探してんぞ。
次回はあなたの玲央菜ちゃんと翔琉兄ちゃんが佐狐君と話します。ちょっと涙腺崩壊もありかも?(手前ごときの小説で誰が泣くかよby中也)
あと、中原兄弟の年齢直しました。1歳下になってます。佐狐君のプロフ見ておかしいことに気づいたんで。
『オレも来年、風鈴で手伝わせてください』=佐狐君は柊さんと翔琉兄ちゃんの一個下。つまり梶くんと同い年。→梶くん2年生→あなたの玲央菜ちゃん1年→年齢おかしい→修正
↑イマココ




















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。