私のパパは、とーっても優しい。何か欲しくなったら、買ってくれるの。
今日は学校で、人気のショルダーバッグの話題が出た。
「緋咲ちゃん、見てみてー。これ、『リーフ』のショルダーバッグだよー!」
話しかけてきたのは、クラスのムードメーカー、真希ちゃん。ショルダーバッグは、ブランド名にふさわしい、緑の生地のショルダーバッグ。可愛い葉っぱとハートがあしらわれている。
「真希ちゃん、それ学校に持ってきちゃっていいの?」
「大丈夫!バレなきゃ平気だよ!緋咲ちゃんは、持ってるの?『リーフ』のやつ、みんな、持ってるよ!」
「そうなの!?私、持ってないな…」
「買ってもらいなよ」
「分かった!パパにきいてみるねー!」
***
「パパー」
「緋咲。どうした?」
「『リーフ』っていうブランドのもの、みんな持ってるんだってー。買ってよ」
「『リーフ』? 分かった、買ってやるよ」
「わーい!ありがとう、パパ!」
欲しいものは、こうやってなんでも手に入るの。
今度は、何をお願いしようかな…?
***
「パパー!スマホ買ってー」
「緋咲、お前まだ小学生だぞ」
「みんな持ってるから、買ってよ」
「分かった、分かった。買ってやるよ」
「わーい」
真希ちゃんが持っていたスマホ。買ってもらえた。
他にも、こうやってスケボーとか、一輪車とか、本とか、文房具とか、買ってもらった。そんなある日。
***
「緋咲ちゃん、明日授業参観だね!」
「あ、そうだね!いいところ見せられるように頑張ろう!」
「うん!そういえばさ、緋咲ちゃん家、いっつもパパだよね〜」
ぎくっ。
「そうなの。ママ、忙しいんだー」
「へぇ」
もちろん、うそ。お母さんは、家にはいなかった。ちっちゃい頃に、死んじゃったんだって。だから、ママのことは、全く覚えてない。
翌日。授業参観。みんな、ママが来ている。パパとママが両方来てくれているお家もあった。でも、家は、パパだけ。
「緋咲、すごかったじゃないか。あんな問題も、解けるようになったんだな。パパ、嬉しいよ」
「えへへ。ねぇ、パパ、欲しいものがあるの」
「なんだい。ご褒美に、なんでも買ってあげよう」
「じゃあ、私、〝ママ〟が欲しい」
「…え」
「ええ?だって、〝みんな、持ってるよ〟?」












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。