第7話

鏡の中の恋
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2026/03/04 02:00 更新
新田 桃音
新田 桃音
私なんかに、こっちの私のふりなんて出来るのかな
三条 彬
三条 彬
“私なんか”って?
新田 桃音
新田 桃音
……私、こっちの世界に逃げてきたから
新田 桃音
新田 桃音
元の世界では、中学の時にいじめられてて
新田 桃音
新田 桃音
きっかけは何だったのか、今でも分からないの。でも多分、弱そうな子なら誰でもよかったんだと思う。こういうのって、順番に回ってくるから
新田 桃音
新田 桃音
すごく辛かった。私なんていないものみたいに、無視されて。無視するくせに、私が傷ついてるのを見て笑ったり
新田 桃音
新田 桃音
だからね、高校では絶対に繰り返したくなくて。レナたちの、クラスの中心のグループに入れてもらって
新田 桃音
新田 桃音
入れてもらったって言っても、仲間とか、友達にはなれなかった
新田 桃音
新田 桃音
いいように使われてる。ただの、パシリ
新田 桃音
新田 桃音
でも、中学の時みたいに戻るよりは、マシだと思って。レナたちを、友達だと思いこむことにしてた
新田 桃音
新田 桃音
あは……
新田 桃音
新田 桃音
(私、楽しくもないのに、なんで笑ってるんだろう)
三条 彬
三条 彬
……
新田 桃音
新田 桃音
こっちの私は、紗奈──松川さんと仲がいいみたいだけど
新田 桃音
新田 桃音
私の世界での松川さんは、ひとりぼっち。誰も、話しかけたりしない
新田 桃音
新田 桃音
私、最低なの。松川さんみたいになるのは絶対嫌って、いつも思ってて
新田 桃音
新田 桃音
こっちの紗奈は、私を本気で心配してくれたのに。こっちの私が、私みたいな卑怯者ひきょうものとは全然違う子だからなんだよね
新田 桃音
新田 桃音
昨日ね、レナたちにいじられて。するつもりもなかった告白して、フラれて
新田 桃音
新田 桃音
うち、家族はママしかいないんだけど、家事とかは全部私の仕事なの。今までいっぱい頑張ってきたつもりなんだけど、それも否定されて
新田 桃音
新田 桃音
なんだか、ぜーんぶ。嫌になっちゃった
新田 桃音
新田 桃音
こんな世界に居たくないって、本気で思った。どこでもいいから、逃げたかった。そしたら、こっちの……違う世界に来ちゃった
三条 彬
三条 彬
……
三条くんは、ずっと黙ったまま私の隣にいてくれる。
新田 桃音
新田 桃音
(迷惑だよね。こんな話、聞かされて)
新田 桃音
新田 桃音
なんて、ごめんね、こんな話。あはは……
すると、大きな手が頭を撫でて……
新田 桃音
新田 桃音
えっ? な、なに?
三条 彬
三条 彬
うん? ……うん。泣きそうな声で、笑ってるから
三条 彬
三条 彬
頑張ったねって、褒めてあげたくて
新田 桃音
新田 桃音
っ……
三条 彬
三条 彬
新田は、自分のこと卑怯者って言ったけど、そんなことないよ
三条 彬
三条 彬
自分の心を守りたいって、当たり前の感情でしょ
三条 彬
三条 彬
いっぱい傷ついたのに、自分でも自分を傷つけることはないよ
すごく穏やかに笑う顔に、涙が出そうになる。
どうして、こんなに優しくしてくれるんだろう。
新田 桃音
新田 桃音
(こっちの三条くんが、ずっとそばにいてくれたらいいのに)
新田 桃音
新田 桃音
(こんなことを思ったら、ダメなのに)
今さら、三条くんが言った「新田の好きなものは?」って言葉を、思い出す。
元の世界で、三条くんに告白をしたのは、レナたちにやらされたことだけど。
新田 桃音
新田 桃音
(今、目の前にいる、この人に感じる気持ちは、多分……)

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