第2話

✼ episode.1
1,597
2022/08/11 01:26 更新









「 好きです。」


















────────「は?」



自分なにいうてんの?



カーテンの向こうから声がしたと思ったら ベッドを囲うそれが “ シャーッ ” と 無遠慮にとっぱらわれる。





(なまえ)
あなた
  あ、もも。  
もも
もも
  あ、もも⋯ やあらへんよ。んなアホ面して。
(なまえ)
あなた
  ふぇ?

自分ついに壊れてもうたん?────骨折やってきいてたけど、あれなん⋯?ココロのヤマイッテヤツ?


とかとってつけたような、感情も、実もない言葉をお見舞いされ、
(なまえ)
あなた
  ばーーか  

ただそうとだけ 応えた。


基本憎まれ口を叩いてるももだが、なんだかんだこうやって毎日会いに来てくれる。


それが、口下手で不器用な彼女なりの、何よりもシンプルでストレートなお見舞い気持ちの表れだってことはわかってはいるが、_これまで築いてきた関係があるから、本質それだけを汲んで、彼女がペットブーやドビーにするようにただ愛でて受け入れてあげるわけにはいかない。

(なまえ)
あなた
 あんなぁ、 ももは人を好きになったことないん? 
もも
もも
おってもあなたには教えんわ
(なまえ)
あなた
そうだな、ももの好きなやつのことなんて知りたないわ  
もも
もも
 な……!

売り言葉に買い言葉で、こんなの朝飯前。
(なまえ)
あなた
 ん 〜  なんか複雑な気持ちになりそうやし?


開いた口が塞がってないももの姿を認め、中身は5歳の彼女から語彙力と戦意を奪ってしまったことに気づき、いたたまれなくなって思わずフォローのそんな言葉が口を出た。


入院する前いつもと同じ空気が流れているように思えるが、ももはわざわざ・・・・足を運んでくれている客人だ。( 一応 )

もも
もも

(なまえ)
あなた
自分には見せたことない一面知ってるやつが他におるなんて、思いたないやん?


幼いころからずっと一緒にいるから、ちょっとした表情の変化から心のひだが読み解ける。

…と、思っている。

できれば、ももを傷つけたくない。

とはいえ、本心から出た言葉やった。

もも
もも
 そーゆーとこ…

うつむき加減にももはなんか言っていたが、あなたの一人称には聞こえなかった。

(なまえ)
あなた
 へ?
もも
もも
あなたに見せたことないとこなんてあらへんよ
 

・・・・・!!!

(なまえ)
あなた
 んー?


めずらしく可愛いことを言う もものその言葉がなんやえらい嬉しくて、聞こえてんのに満更でもない気持ちで生返事すると、

もも
もも
  2度は言わんで?  

なんて、先程の素直さは束の間。

いつもの感じでももはあなたの一人称にこう言い捨てたが、言葉とはうらはらに表情はだいぶ柔い。

(なまえ)
あなた
ははw
なんやもものことは自分がいちばん知ってるってゆー自負? があるからか、他のやつしか知らんとこがあるんはなんや、悔しいんよな

もも
もも
 …… 


ももからなんの言葉も返ってこないから、自分がさっき放った言葉が腹話術のように遅れて脳内に反芻される。

(なまえ)
あなた
( ……ん? )

ふと目をやれば、心做しか赤くなってるももがいて、幼馴染うちららしからぬ空気感に耐えられなくなったあなたの一人称は

(なまえ)
あなた
……え?何コレ告白ぅ??

と、焦り半分冗談半分に言うと

もも
もも
 何言うてんねんほんまに  

とかわらうももの横顔があまりにも整っていて。


そっか、ももって美少女だったよな……


って。昔から変わらない事実が浮き彫りにされて、なんだか気恥ずかしくなってしまう。

(なまえ)
あなた
ちょ、ももおまっ!どうしてくれんねんこの空気っ

そんなこといってもものことどついてたら、カーテンの向こうからあなたの一人称を呼ぶ声がする。



─────「あなたの苗字さぁーん?」





「はぁーい?」



─────「検温の時間なので開けますね〜?」



「あ、はぁーい」




そう答えて1拍おいたのち、さっきとは違い、丁寧に、静かに開かれるカーテン。

サナ
サナ
 あ♡こんにちはぁ〜 

これ以上ないんじゃないかってくらい愛想の良い笑顔をくれる看護師さんとももの目がばっちり合う。
もも
もも
  コンニチハ   

(なまえ)
あなた
 …ぷっ  ももおまえ何借りてきたネコなってんねん


ももはよう知らん人と顔を合わせることになって、固まってる。

ちゃんと目を合わせて挨拶はしていたが、さっきとは別人のようなももの姿に笑いが止まらなくなる。


そんなあなたの一人称をももは静かに睨んでくるが、もはやそこまでがセットとなり、絶妙にあなたの一人称のツボを刺激してくる。


もものやつ、ほんまおもろい。



サナ
サナ
あなたちゃん、大事なひと来てるところ申し訳ないんやけど、血圧と体温だけ測らせてなー?

といい、馴れた手つきであなたの一人称の上腕を圧迫してくる。

(なまえ)
あなた
 はぁーい 
もも
もも
 あ、うち帰…
(なまえ)
あなた
何言うてんのきたばっかやん。ちょっとまってて?
   そう言って反対の手でももの手をひく。

こいつ…どんだけ人見知りこじらせてんねん。
(なまえ)
あなた
サナさん、イスどこにあんねやっけ?
サナ
サナ
 はい♡ どぉぞ〜?
目ェ くりくりやね〜   ぱっちりおめめェ〜

かわいい〜〜♡♡♡ なんて言って、微笑んでいるサナさん。
もも
もも
 あ、ありがとうゴザイマス 
(なまえ)
あなた
 っぷ……ほんまももおまえww

コミュ力の鬼、サナさんをもってしてもニコリともしないももに笑いが込み上げてくる。

もも
もも
 なんやねん… 

て言いながら、助けを求めてくるような視線に保護者欲がいい感じに充たされたあなたの一人称は
(なまえ)
あなた
 ッッ よく言えましたァ〜 

なんて、思わず頭をなでてしまう。

イス出してもろたらお礼言わなあかんもんなァ〜??
なんて、わしゃわしゃしてたら

ももはあなたの一人称に撫でられた跡を消すかのように、ごしごししている。


サナ
サナ
 らぶらぶやなぁ…… 

ほんま、じゃましてごめんな?……いちばんたのしい時期よな?


なんてぶつぶついってるサナさんの声が耳に入る。

(なまえ)
あなた
え?……ああ、ももとは長い付き合いやから 
サナ
サナ
うん、そんな感じィ〜 

て相変わらずただただニコニコしているサナさん。

(なまえ)
あなた
サナさんやって、ミナさんとらぶらぶやん 

真意がよく分からず、なんも珍しいことやないで?と思ってそう返せば

サナ
サナ
え?みーたん??そりゃ、みーたんは同期やからなぁ

なんて肩透かしの答えが返ってくる。

同期?同期なんてもんやないぞこっちは…!

(なまえ)
あなた
こっちはももと生まれたときから同期やから

なんて会話のラリーピンポンラリーをしていれば

サナ
サナ
ははっ あなたちゃんそれ何のマウントぉー?

なんて大爆笑している。

一見おしゃべりに本腰入れてるように見えるサナさんは、いつの間に終えたんか血圧計やら温度版をぱぱっとまとめ、

サナ
サナ
じゃあ、カノジョさんごゆっくりね〜

なんて、この場を去ろうとする。

(なまえ)
あなた
 ??? 

(なまえ)
あなた
 え?彼女やないし…… 


混乱しながらも頭を働かしてはみたが、言葉が口を出たのは、ここを囲う布が開閉された後だった。


目線をももに落とせば、用意されたイスにお行儀よく座り、うつむいていた。


(なまえ)
あなた
もも…?なんかごめんな、変な勘違い生んでしもて


そう声をかければ、その体勢のまま、ももは頭を横に振る。

ももの頭の動きに合わせて髪が規則的に揺れて、窓からの光をまとったそれはなんかやたらきれいやった … 。




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