「 好きです。」
────────「は?」
自分なにいうてんの?
カーテンの向こうから声がしたと思ったら ベッドを囲うそれが “ シャーッ ” と 無遠慮にとっぱらわれる。
自分ついに壊れてもうたん?────骨折やってきいてたけど、あれなん⋯?ココロのヤマイッテヤツ?
とかとってつけたような、感情も、実もない言葉をお見舞いされ、
ただそうとだけ 応えた。
基本憎まれ口を叩いてるももだが、なんだかんだこうやって毎日会いに来てくれる。
それが、口下手で不器用な彼女なりの、何よりもシンプルでストレートなお見舞いだってことはわかってはいるが、_これまで築いてきた関係があるから、本質だけを汲んで、彼女がペットにするようにただ愛でてあげるわけにはいかない。
売り言葉に買い言葉で、こんなの朝飯前。
開いた口が塞がってないももの姿を認め、中身は5歳の彼女から語彙力と戦意を奪ってしまったことに気づき、いたたまれなくなって思わずフォローの言葉が口を出た。
入院する前と同じ空気が流れているように思えるが、ももはわざわざ足を運んでくれている客人だ。( 一応 )
幼いころからずっと一緒にいるから、ちょっとした表情の変化から心の襞が読み解ける。
…と、思っている。
できれば、ももを傷つけたくない。
とはいえ、本心から出た言葉やった。
うつむき加減にももはなんか言っていたが、あなたの一人称には聞こえなかった。
・・・・・!!!
めずらしく可愛いことを言う もものその言葉がなんやえらい嬉しくて、聞こえてんのに満更でもない気持ちで生返事すると、
なんて、先程の素直さは束の間。
いつもの感じでももはあなたの一人称にこう言い捨てたが、言葉とはうらはらに表情はだいぶ柔い。
ももからなんの言葉も返ってこないから、自分がさっき放った言葉が腹話術のように遅れて脳内に反芻される。
ふと目をやれば、心做しか赤くなってるももがいて、幼馴染らしからぬ空気感に耐えられなくなったあなたの一人称は
と、焦り半分冗談半分に言うと
とかわらうももの横顔があまりにも整っていて。
そっか、ももって美少女だったよな……
って。昔から変わらない事実が浮き彫りにされて、なんだか気恥ずかしくなってしまう。
そんなこといってもものことどついてたら、カーテンの向こうからあなたの一人称を呼ぶ声がする。
─────「あなたの苗字さぁーん?」
?
「はぁーい?」
─────「検温の時間なので開けますね〜?」
「あ、はぁーい」
そう答えて1拍おいたのち、さっきとは違い、丁寧に、静かに開かれるカーテン。
これ以上ないんじゃないかってくらい愛想の良い笑顔をくれる看護師さんとももの目がばっちり合う。
ももはよう知らん人と顔を合わせることになって、固まってる。
ちゃんと目を合わせて挨拶はしていたが、さっきとは別人のようなももの姿に笑いが止まらなくなる。
そんなあなたの一人称をももは静かに睨んでくるが、もはやそこまでがセットとなり、絶妙にあなたの一人称のツボを刺激してくる。
もものやつ、ほんまおもろい。
といい、馴れた手つきであなたの一人称の上腕を圧迫してくる。
そう言って反対の手でももの手をひく。
こいつ…どんだけ人見知りこじらせてんねん。
目ェ くりくりやね〜 ぱっちりおめめェ〜
かわいい〜〜♡♡♡ なんて言って、微笑んでいるサナさん。
コミュ力の鬼、サナさんをもってしてもニコリともしないももに笑いが込み上げてくる。
て言いながら、助けを求めてくるような視線に保護者欲がいい感じに充たされたあなたの一人称は
なんて、思わず頭をなでてしまう。
イス出してもろたらお礼言わなあかんもんなァ〜??
なんて、わしゃわしゃしてたら
ももはあなたの一人称に撫でられた跡を消すかのように、ごしごししている。
ほんま、じゃましてごめんな?……いちばんたのしい時期よな?
なんてぶつぶついってるサナさんの声が耳に入る。
て相変わらずただただニコニコしているサナさん。
真意がよく分からず、なんも珍しいことやないで?と思ってそう返せば
なんて肩透かしの答えが返ってくる。
同期?同期なんてもんやないぞこっちは…!
なんて会話のラリーをしていれば
なんて大爆笑している。
一見おしゃべりに本腰入れてるように見えるサナさんは、いつの間に終えたんか血圧計やら温度版をぱぱっとまとめ、
なんて、この場を去ろうとする。
混乱しながらも頭を働かしてはみたが、言葉が口を出たのは、ここを囲う布が開閉された後だった。
目線をももに落とせば、用意されたイスにお行儀よく座り、うつむいていた。
そう声をかければ、その体勢のまま、ももは頭を横に振る。
ももの頭の動きに合わせて髪が規則的に揺れて、窓からの光をまとったそれはなんかやたらきれいやった … 。
























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。