

ネコおじside
おんりーチャンの頭の出血は大したこと無かったらしい。
頭の傷も、倒れた時にできたもので、事件性は皆無と。
でも、脳に影響があるかもしれないから検査をしなければいけないと。
俺は、状況などをお医者さんに話し終わって、待っててくださいと言われた廊下のソファに座っていた。
疲れかどっときて、空を仰ぐ。
まぁ、天井だけど
『生きている』その事実だけで心に余裕が持てる。
そして、余計な思考が入る隙間が出来て、疑問が生まれる。
『どうして皆はいなかったんだ?』
屋上の鍵は、ドズさんが取りに来て、ぼんさんが返しに来る。
今日も、ドズさんに鍵を渡した。
つまり、少なくともドズさんは屋上にいた。
『なぜおんりーチャンが怪我したことを言わなかった?』
頭からの出血。意識不明。
この二つの情報が揃ったら、皆先生や救急車を呼ぶだろう。
ドズさんは医者を志しているから、尚更。
『屋上に入らなかった?』
いや、鍵を閉めるぼんさんは、絶対に1度覗いてから閉める。
おんりーチャンは、扉を開けたら絶対に見える。
つまり、おんりーチャンは、『みんなと別れたあとに倒れた?』
おんりーチャンがぼんさんに「おれが最後に帰るんで鍵ください」って言ったら可能。
でも、鍵は、おんりーチャンよりちょっと遠い扉付近に置いてあった。
『なぜ?』
フッも全身の力が抜けて瞼が落ちる。
緊張が途切れたからだろうか
「おんりーチャン、異常なんて無いでくれよな」
そう思いながら、意識は闇の中に落ちていった。
目の前には看護師さん。
外を見ると、カラスが鳴くくらい暗くなっていた
「流石に学生1人に聞かせるのは」?
なんだろう………嫌な予感がする。
今回のことで、俺の予感は本当に当たると知った。
………いやだな
病室に入ると、ベッドの傍で資料を持っている先生と、頭に包帯を巻いてベッドに横たわっているおんりーチャン。
よかった、起きたんだ
こちらを見て微かに微笑んでくれるおんりーチャン。
カワイイ!!!
あ、いや。俺にとっては大事だけど、そんなこと言ってる場合じゃなかった。
起きたばかりというのに、「頭がちょっと…」と答えてくれるおんりーチャンに、「ほんとに良かった」と、しみじみ思っていると、
と、お医者さんに言われてしまった。
すみません。
一呼吸おいて、お医者さんが話す。
……?
なにそれ?
おんりーチャンの方をむくと、同じように首を傾げている。
なっ、なんなんだ?その「MTBI?」というものは
性格診断か何かか?
お医者さんは、理解されないことに慣れているのか、手際よく説明していく。
お医者さんが、言いにくそうに続ける。
無言。
誰も何も言わない。
それもそうだ。「今まで通り生活することは出来ない」と言われて、はいそうですか。とはならない。
待っている間に気になっていたことを問う。
すると、思いもよらない答えが帰ってきた。
え……っと…………?
どういうこと?
頭の中が、クエスチョンマークで埋め尽くされる。
え?
誰かを庇っているのか?
でも、本当に訳が分からないと言った表情をしていた。
もし本当に覚えていないのなら、それは………………。
「ごめんなさい。」
そう言って頭を下げる彼に、こちらの方が申し訳なくなる。
でも、なぜ覚えていないんだろう?
お医者さんは、脳に異常はないと言っていた。
じゃあ、何故?
そこまで考えて、一つの可能性を思いつく。
解離性健忘は、強いストレスを感じた時に重要な記憶を消す自己防衛だ。
苦笑混じりの声で。窓の外の夕日を見る姿に何も言えないでいると、
「ピリリリリ、ピリリリリ」
と、場違いな電話の音がした。
少し寂しそうに笑うおんりーチャンを見て、「行きたくねぇ!」と思うも、仕事に関わることだと出ないとマズイ。
イヤイヤ病室の外に出て、電話をかけてきた名前を見る。
「ドズル」
そう書いてあった。



















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。