#03[きっかけ]
あれから月日は流れ、今日は大和くんが出演するドラマを彼らの寮で一緒に見る。
出演オファーが来た時最初は断っていたらしいけど気持ちの変化があったのか引き受けてくれたらしくIDOLiSH7の新しい道を作ってくれた。
当の本人は恥ずかしいのか自室に戻ってしまったので他のメンバーと共にドラマを見る。
そこに映っていたのは完全に【役】になりきっている二階堂大和。
初めてのはずなのに緊張している様子は微塵も感じられなく、むしろ主役を食ってしまう程の演技力。
あまりの演技の凄さに見ている全員が唖然とする。
やっぱり彼の表現力は想像以上だった。
うっかり以前の出来事を思い出してしまいそうになったが考えないようにしてドラマに集中した。
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夜中、動画撮影無しで普通にゲームをしている最中キャラクター選択をしているとオンラインで一緒にやっていたキヨが通話で若干テンション高めに尋ねてきた。
「なぁ!こないだ【16歳の教室ー2ー】に出てた二階堂大和ってお前の弟くんのとこのメンバーだよな?」
やっぱりこの男も見てたか。
地上波で放送されているドラマはほぼ見ているのではないかと思うくらいキヨは生粋のTV好きだ。
今回の大和くん出演のドラマはスペシャルなのもあり、元々話題性があったのでキヨは必ず見ると思って敢えて教えていなかった。
「IDOLiSH7ね!うん、リーダーで私と同い年なんだ。」
「へぇ、素人目で見ても初めてのドラマ出演とは思えないくらい演技が凄かった。俳優業向いてそうだな。」
「うん。これがきっかけでWeb番組も視聴者が増えて軌道に乗ってきているし、デビューも近いと思う。」
「そういえばデビューさせた後もレッスン講師続けるのか?」
「そうね、彼らの曲の振付も担当しているしLIVEの構成とかも手伝ってるから…。」
それにTV局に侵入する口実もあるし。
「あんまり無理すんなよ、自分の活動だってあるんだからさ。新曲の制作もあるだろ?」
「大丈夫よ、あともう少しで完成だし。心配してくれてありがとう。」
「別にそんなんじゃねぇけど…。」
こうは言っているがキヨはいつもこうして思いやってくれる優しい人。
何だかんだ私が勝手に置いていったIDOLiSH7のCDも聴いてくれているみたいだし今度彼らのLIVEにキヨも来てもらおうかな。
「新曲、今回は海でMV撮影したいなって思ってるんだよね。どこにしようかな。」
海と月がテーマだから夜の海、とか良いかもしれない。
いつも撮影協力してもらっている友人に提案してみよう、撮影場所も探して許可を取らないと。
「また忙しいな、今俺とゲームやってる場合かよ…。」
「まぁ息抜きも必要!あ、そうだ私が勝ったら次のLIVE出てよ。1曲歌って。」
「何でだよ!!」
「せっかくだし1曲作ろうかな!何かやる気出てきた!」
「勝手に話進めんな!!」
喚くキヨを無視してキャラクターを選択し、勝手にゲームを再開させる。
「よーいスタート!」
「クソ!!…ぜってぇ負けねぇ!!」
勝負がどうなったのかは後のお楽しみ。
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彼女が自分たちのレッスン講師になって数ヶ月が経った。
初めて会った日はあの雨の中の路上LIVE、緊迫した空気の中で突然現れ、流れるようにその場を収めて去って行った。
その日一瞬だけ見せた微笑みは何故か印象的でえらく脳裏に焼き付いた。
第一印象は風のような人。
後日レッスン講師が就くと言われ自分たちの前に現れたのは昨日会ったばかりの彼女、しかも今後の活動の為に参考になる物を探している途中たまたま見つけた1つの動画の投稿者。
この曲を初めて聴いた時言葉にならない程の感動がありそのまま他の動画にも興味を惹かれ、次々と再生ボタンを押しているうちにあっという間に彼女の作品の虜になった。
沼にはまるというのはこういう事なのだろう、そのくらい魅力的だった。
そんな彼女が自分たちのレッスン講師、IDOLiSH7がさらに成長出来ると確信するが内心では憧れている人を間近にして緊張と嬉しさが込み上げてうっかり顔に出そうになった。
自室でひとり出会ってから今までを振り返り、改めて彼女のことを知ろうとPCを起動させてラビチューブを開く。
1番再生されている動画は自分が初めて聴いた曲、投稿日は3年前と思ったより前の物だ。
ネットで調べてみるとこの曲がさらに人気を伸ばし、現在の地位を作っているらしい。
他の楽曲も良い物ばかりだがこの曲は特別心に残る、歌詞は切ない失恋ソングのようだが何より曲に想いを込めた歌声が心に響いた。
一体彼女は当時どんな思いでこの曲を歌ったのか、気になって仕方なくなってしまったが本人に直接聞ける訳もなく、考えるのをやめた。
いつか誰も知らない彼女の事を知れますように、なんて。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!