「見てごらん、千代」
凪くんに連れられてやって来たのは、見晴らしのいい丘の上だった。
夕方だ。赤みがかった夕焼け空が、カントリー調の街を照らす。
「綺麗····だけど、」
ずっと気になっていたけど、聞いてはいけないような気がして聞けなかったこと。
私はゆっくり息を吸って、彼に問いかけた。
「ここ、どこなの···?」
彼は困ったような顔をして、どこか哀しむような、憐れむような目で私を見た。
「後悔、しない?知っても。」
「え··」
彼の言った言葉の意味は、よくわからなかった。
私はわからないまま、曖昧に頷く。
「ここは…」
彼はたっぷり間を置いて、もったいぶるように言った。
「あやかしが住む世界だ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。