第72話

始まり
641
2024/01/20 03:00
翌日。
私は学長に呼ばれ、久しぶりに学長の部屋に通された。
あなた
失礼します。
夜蛾正道
来たか。
学長はぬいぐるみを撫でながら視線をこちらに向ける。
夜蛾正道
悪い、なんせ人手不足なもんでな。
あなた
気にしてませんよ。
私がそういうと学長は少し驚いたようだ。
私のことをじっと見つめたあと、ふ、と少しだけ笑った・・・・気がした。
夜蛾正道
伊地知から聞いているとは思うが、今日から大溝中学校に行ってもらう。
あなた
はぁ・・・・
夜蛾正道
どうやらその中学校は呪いが多いらしくてな。いつ呪霊が発生するかわからない。
あなた
・・・・私は呪霊になる前の小さな気配も見えるから適任ってことですか。
夜蛾正道
そうだ。
あなた
わかりました。
夜蛾正道
俺にも詳しいことはわからん。呪いの原因を祓うように、としか言われていない。
そんな曖昧な・・・・とは言えず、曖昧に頷く。
あなた
最善は尽くします。
夜蛾正道
頼んだ。
そのあと私は学長からその中学校の周辺の地図を渡してもらい、部屋を出た。

ここから割と遠いな・・・・
あなた
えーと・・・・電車乗って・・・・
ふと、ある公園の名前が目についた。

あれ、この公園の名前、どこかで見たような・・・・
この世界に来た頃・・・・?

私は目を閉じてある公園を強くイメージした。
一瞬足が地面から離れる感覚のあと、空気が変わる。
そっと目を開けてみるとそこは・・・・






マイキーと初めて会った公園だった。
その公園の名前が書いてある看板と地図を見比べる。
あなた
やっぱりそうか・・・・あの建物の名前もこの地図にあるし。
てことは、この中学校は東リべの誰かの中学校だったりする?
・・・・てか、東リベに出てくるキャラクターって中学生だっけ?
あれ、高校生だっけ?
あれで中学生はすごいけどな・・・・体つきとかもはや高校生じゃん。
あなた
・・・・とりあえずこの大溝中学校ってとこに行ってみるか。
私は地図をくるくる回して方角を確かめながら一歩踏み出した、その瞬間だった。
???
あの・・・・
あなた
っ!?
後ろから声がした。
振り返るとそこには────
花垣武道
溝中になんか用ですか?
少し警戒している武道の姿があった。
突然の主人公の登場に言葉を失う。

これは・・・・どっちだ?
未来の武道か、今の姿のままの武道か。
わからない。

私は少し考えたあと、もし未来の武道なら怪しまれることは確定してしまうがこう質問した。
あなた
直人って人と握手したことある?
花垣武道
っ!
あ、この反応は未来の武道か。
あなた
あー、おっけ。ありがと。
花垣武道
・・・・あんた、何者だ。
あなた
・・・・んーと、多分君には迷惑はかからない人のはず。
多分。
私がいてもいなくてもそちらの未来とは関係ないはず。

私がそういうとますます怪しんだようだ。
花垣武道
ごまかすな。
あなた
いやいや、本当だって。・・・・君だって、仲間に話せないことあるでしょ?
花垣武道
あなた
それと一緒。私も不用意に誰かに話しちゃうとどうなるかわからないの。
花垣武道
・・・・もしかしてお前も?
あなた
・・・・君が何想像してるかは知らないけど。まぁ、訳ありってとこは一緒かな?
そういうと武道は少しだけ警戒を緩めたようだ。
花垣武道
名前、訊いてもいい?
あなた
あなたの下の名前だよ。あなたの名字あなたの下の名前。
花垣武道
そっか。俺は花垣武道。
にっと笑うと武道は手を差し伸べた。

何故に握手?

そう思いながらも無視するのは礼儀が悪いと思い、そっと手を握った。










これが出会いであり、始まりだった。

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