私は首を振った。
あれから私たちは立ち話もなんだからと公園のベンチに座って話している。
一応フードをかぶっているので、はたから見れば男同士が話しているようにしか見えないはずだ。
敬語使わなきゃ!と武道が言っていたので、別にいいよと言っておく。
武道はそういうと少し真剣な表情になった。
私の言葉で武道は表情を固くした。
そういうと武道は今度は困惑した表情になる。
コロコロ表情変わるなぁ、この子。
そう思っていると武道は眉根を寄せた。
どうやら笑っていたらしい。
私は自分の口元に手を当てる。
確かに口角が上がっていた。
私はそっと微笑んで頷いた。
武道は納得していない表情だった。
その時だった。
視線を上げるとそこには赤毛の男の子が立っていた。
その後ろに3人の男の子もいる。
あ、この子達確か武道とよく一緒にいる子達だ。
赤毛の子───確か・・・・アッくん?───が私を見つめた。
その質問に武道はアワアワしていた。
もしかして元々この子達と武道は一緒にいなかった感じかこれ?
・・・・合わせておいた方が良さそうだ。
私は地声よりも少しだけ声を低くして話した。
たくさん話しすぎると性別がバレそうなので口数は少なめで。
無愛想に見えるかもしれないけど許してほしい。
だって、なんかヒナちゃんに申し訳なく感じちゃうから・・・・
自意識過剰だろうけども・・・・
武道もいじられそうだし。
アッくんは少し目を細めて私を見たあと、そっか、とだけ呟いた。
今日は日曜日で学校には人があまりいないらしく、明日の月曜日に案内してくれることになった。
一回高専に戻るか・・・・
そう思っていると後ろから顔を覗き込まれた。
アッくんだった。
距離近・・・・
私は顔を背けて距離を取る。
小さく笑った後アッくんは武道達のところへ走って行った。
・・・・なんだったんだ。
てか、今時のカップルは他の人と話してたら浮気って言われるのか・・・・?
浮気って結婚してる人たちの間でしか使わないのかと思ってたけど・・・・
どーでもいいことを考えながら私は高専の自分の部屋にとんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。