「っ……すげぇ……。」
ミアが発動した魔術は、固有魔術と呼ばれるもの。なのでこの場合、世界でミアしか使えない代物だ。
そう、俺にはそもそも〝扱えない〟魔術で。普通の魔法使いなら、嫉妬するだろうが、俺はただただこう思っていた。
(なんて綺麗な魔術だ……。)
それにしても、杖固有の魔法とミアの魔術を掛け合わせるなんて高等技術をいつ覚えたんだろうか……。いや、ミアなら、ほいほい食いつきそうな技術だな。あいつは魔法や魔術に関しては目ざといし、がめついから。
魔法回路も、魔術回路も、世間では似ていると言われるが、全くもって別のものだ。それ故に、掛け合わせるなんて普通なら考えつかない。思いついたとしても、一朝一夕で身につく技術でもないし、人間の寿命だったら生涯かけても不可能かもしれない。
そんな行為を、ミアは平気でやってみせた。どれ程の天才かが嫌でも分かるだろう。
「ほへぇ〜……この魔術は良いね。次も使おうかな。」
「……は?」
「……え、変なこと言った?」
どうやらミアは、この魔術をたった今、初めて使ったらしい。最早、嫉妬を通り越して呆れすらある。正直、受け入れたくない。そんな所業は、俺にもできないことだ。
“直感の天才”。
“生ける魔導書”。
“創作魔法の申し子”。
いつの日か、ミアが民衆に言われていたその言葉が、心に響いた。俺は――
「解呪終わったよ〜……って、あ?!」
またもやミアは、大事なことを思い出したように、大きな声をあげた。
「そもそも私たちって、邪竜……ドラゴンの件でここに来たんじゃなかったっけ……?」
……あ。
「忘れてたな、すっかり。」
「ついでに我のことも忘れないでもらいたい。」
そう言えば、レザーソールもドラゴンも居たんだった。こんなことを伝えれば、レザーソールは悲しむだろう。
「忘れてねぇよ? さっきまで記憶がなかっただけで。」
「それを忘れている、というのだ……。」
レザーソールの旅芸人としてのレベルも上がったところで、パチッという音が脳内に弾けた。俺の魔法に反応があったのだ。
俺が常時展開している魔法は、およそ三十個あるが、そのうちの一つ、【生体魔力探知】に巨大な魔力が引っかかった。
「「ドラゴン発見!」」
俺とミアが同時に声を上げると、もう呆れたというようにレザーソールは頭に手を当てて、俺たちに向き直った。
「二人に、正式にドラゴン討伐を……いや、邪竜討伐を依頼する。」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。