顔面に海水をかけられて、不貞腐れるてるとを遠目から眺める。
ばぁうはそんなてるとの様子をどこか嬉しそうにして、更に水をかけている。
ばぁうの発言にわかりやすくしかめっ面をする。
近くで海底を見つめ続けていたそまに縋るように、素っ頓狂な声を上げた。
急に話を振られたそまさんが、目を白黒させる。
近くを泳ぐ魚に夢中で、全くふたりの話を聞いてなかったらしい。
しゆんはカオスな三人に構うこと無く、砂浜に寝そべって昼寝をしている。
こんな晴れているから日焼けしそうなのに、随分とマイペースなやつだ。
モデルみたいに白い肌がこんがりと焼ける妄想をしてみたが、どうもピンとこなくて気持ち悪かった。
隣にちょこんと座るまひとが、どこか寂しそうに笑った。
木陰…といっても砂浜にはないので、崖のようなところが作ってくれた日陰にありがたく居座らせてもらっていた。
ちゃっかり”たち”と言われている所、もう僕のしていることも聞かないでも分かるのだろう。
リストカットに、海は最悪だ。
水着などでは肌の露出が増えるし、傷口に染みてあまりの痛さに死にそうになる。
最後にプールに入ったのなんて、小学生の授業の時だと思う。
中学校にプールが無くてよかったと、再度安心した。
僕が回想の世界で考え込んでいたせいか、まひとがしょんぼりと俯く。
僕は誤解を解くべく、慌てて首をふる。
本心なのか?疑うような視線を向けられて、僕は少々機嫌が傾き加減になった。
別にリスカのことは、なんも気にしていない。
強いて言うならば、未だに取らない敬語に苛立っているんだろうか。
そんな微妙な顔つきの変化で、他人を見抜くことに驚いて逆に表情を変えた。
家庭環境とは、ここまで人格を左右するのだと思った。
多分まひとは、孤立無援の状態で生きていくために人の顔を伺うのが精一杯だったのだろう。
まひとの顔がはて、と疑問に満ちた。
思ったよりすんなりタメに移行されて、拍子抜けした。
そんな僕の心情を汲み取ったかのように、まひとは微笑した。
ゆきむ、と呼ぶ人がまた増えた。
てると、まひと。そして始まりの祖である、君。
まひとはてるとの真似をしているだけだと思うが、てるとは何思ってこの呼び名にしたのだろう。
黙っていた僕に飽きたのか、まひとはしゆんと同じように脱力し砂浜に仰向けになった。
からかうように言うと、まひとは真剣そうな真顔に一瞬なって、かすかに口角をあげた。
軽そうに短く、まひとは紡ぐ。
でも、どうにも紙のように薄っぺらい言葉なんかじゃなくて、きちんと意思があるかのように重く水平線へと飛んでいく。
まひとの言葉に思わず目を見開く。
そして互いに顔を合わせたまま数秒経つと、ふたりでくすりと笑う。
どこかで聞いたことあるアニメのセリフを口にすると、まひとはぷぷっと吹き出す。
なんの意味もないのに、ひとしきりに笑い続けた。
そうしているうちに、地元からここまで抱えながら連れてきた、”罪悪感”がふわっと消えていく。
肩が軽くなった感触がして、僕も砂浜に寝転ぶ。
今日は、八月十五日。
この日は、君が帰って来る日。
お盆の中心となる今日は、死者が向こう岸から帰ってくるらしい。
一年ぶりの再会となるはずだったから、凄く悩んでいたけれど、今はその気持ちが軽くなっていた。
さぁ、と首をわざとらしく傾げるまひとと、空を見上げる。
入道雲一つない快晴と、青く光る海が見渡す限り広がっている。
海辺から聞こえてくる賑やかな声で安心するように、目を閉じた。
投稿サボりすぎてすいません毎回これ言ってるな(10日ぶり)

アンケート
どっちのほうが気になる?
あの夏の、君と。
40%
欠けていく声。
60%
投票数: 141票



















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。