思わず口にすると、婆ちゃんはポカンと口を開けた。
婆ちゃんに変な反応をしてしまったことを少し後悔する。
別に悪意があって言った訳では無いことは分かっている。
あいつらの名前も、顔も、抱えてる物も、何もかも知らないはずだから。
最寄り駅、と言っても車で15分かかる。
本当に、ドがつくほどの田舎に帰ってきたことを流れる風景を見て思う。
意外とこの故郷は嫌いじゃない。
少なからず知り合いもいるし、皆が自由きままに生きていて都会の喧騒などと全く縁がないからだ。
しばらく助手席でぼーっとしたり婆ちゃんとぼちぼち話したりすることを繰り返すと、車が止まった。
見覚えのある人影に気づき、窓を開ける。
すると向こうも俺のことを気づいたのか、こちらに向かって手を振りながら歩いてくる。
次々とそまたちが朗らかに喋るのに対し、後ろの二人の様子がどうもおかしい。
ばぁうはこれでもかという勢いで頭を下げ続けるが、それを不機嫌そうにゆきむらはきっと睨む。
見てはいけないものを見てしまったのかと思い、こそこそと近くにいたそまに耳打ちする。
そまは困ったように眉毛を八の字にして、少し口角をあげて首を振った。
気にしないで、と言われると気になってしまうのが人間の本能だ。
だけれども、睨み合う本人たちに聞きに行く勇気もないので、まぁ良いかと流した。
黙って俺達の様子を見ていた婆ちゃんが、声を上げて車内へと手招きする。
婆ちゃんに気づいたそまが、慌てて頭を下げる。
礼儀正しい奴だなぁとまじまじ感心していると、てるとやまひとも口々に「お邪魔します!」とぺこりとお辞儀をした。
動きも何もかもそっくりシンクロしていて、仲いいガチの兄弟なのではと疑いたくなる。
きっと、夏休みに入って家にいることで仲が深まったんだろう。
首元を掴まれたまま引きずられ状態でうなだれるばぁうに、思わず吹き出す。
そんな俺を見たばぁうは、何か奇妙なものでも見たかのような視線を送ってきた。
軽快な婆ちゃんの掛け声で、一同車に乗り込む。
確かに、と共感の意味を込めか皆首を振る。
誘ったのは俺なのに、だらしねえなと苦笑する。
婆ちゃんが鋭く口を挟む。
海、という単語の響きにてるとは目を輝かせた。
そういえば、俺達の住んでる県に海はなかったなとふと思う。
てるとが嬉しそうに目を細めてた瞬間、車は動き出した。
車から降りる時、ぺこりとお辞儀をして車から出ていく。
しゆんは面倒くさそうに手で払いのけるような仕草をした。
遠ざかる車に全員で手を振る。
ようやくその姿が消えたところで、皆は騒ぎ出す。
てるとがまひとの手を引いて、元気に駆けていく。
随分と第一印象より違うなぁとぼんやり考えていると、同じことを思っている人たちがいた。
我ながら親みたいだな、と小さく笑い合うふたりを、通り越して駆けていこうとするまひてるの襟を掴む。
ふたりが慌ててこちらを向く。
はーい!と元気な返事があたりにこだまする。
本当に分かっているのか、と疑問に思いつつ砂浜へと抜ける林の中を走った。
アンケート
騎士Xちゃんと追ってる方
追ってるよー✌
61%
全然今の騎士わからんて(・・;)
25%
ぶっちゃけ冷めてる(
14%
投票数: 185票
ただ単に読者のみんなどんな感じか知りたかっただけ(需要なし)




















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。