第9話

8⚠️
412
2026/02/16 00:08 更新





〈あなたの下の名前 side〉







何がどうなっているのか、全く分からない。





傭兵1
傭兵1
全員ラボに来い
…緊急事態だ





傭兵の男が無線に話しかけ、
そのままマークにスッと銃を向ける。





すると、天井に張り付いていたマークが
突然ドサッと地面に落ちた。
傭兵の男は絶好の機会を逃すまいと
即座に引き金へと指をかけた。




(なまえ)
あなた
ダメ!打たないで!!





私の言葉を無視して引き金を引いたその時、




傭兵1
傭兵1
うわっ、?!





マークが目にも止まらぬ速さで傭兵の男に襲いかかる。
命の危険を感じた私は、
チソンの手を引いて手術室を出た。





外からドアの鍵をかける。
目を覚まさせようと必死になり、
窓を強く叩きマークの名前を呼び続けた。




(なまえ)
あなた
マーク!!
マーク!!!
傭兵1
傭兵1
うぅ゙あ゙ああっ!!
(なまえ)
あなた
?!
や、やめて!!





叫び続ける傭兵の男の首元にマークは容赦なく噛みつく。
ぷしっ、と皮膚から血が噴き出す音がした。
傭兵の男の断末魔がラボに、船内に、響き渡る。




(なまえ)
あなた
マーク…!!





しばらくして傭兵の男の断末魔が止み、
うずくまっていたマークが立ち上がる。





さっきまで抵抗していた傭兵の男の
血だらけの両腕が、だらんと垂れ下がった。
振り向いたその顔は…





尖るような鼻先と、大きくなった耳。

澄んでいたはずの瞳は血のような紅に染まり、

ふっくらした唇から大きな牙が姿を見せる。

何年も一緒に仕事をした同僚の面影は全くない。
今のマークはまるで、ヴァンパイアそのものだった。





あり得ない。
一体何が起きているのか全く理解できない。





理性を失い獲物に襲いかかるような視線が私を刺す。
マーク……だったはずの目の前の生きものは、
おびただしい量の血に濡れた傭兵の遺体を、
頭蓋骨の目の穴に指をかけて持ち上げた。

まるでボウリングのボールを…持つように。





あまりのグロテスクさにウッと吐き気を催す。
と同時に、彼にとんでもないことをしてしまったという
後悔が全身をガクガクと震わせた。




jisung
jisung
そ、んな、……
(なまえ)
あなた
チソンア、!





横にいたチソンがフラ…と倒れ込む。
咄嗟に身体を支えた時には、既に気絶していた。





開け放たれたままのラボの扉から、
銃を持った傭兵たちがゾロゾロと現れる。





変わり果てたマークとラボの惨状を見るなり、
一斉に大なり小なりの銃を彼に向けた。




(なまえ)
あなた
待って、打たないで、!
銃をおろして!
傭兵2
傭兵2
失せろ!!
(なまえ)
あなた
きゃ…!





突き飛ばされた勢いで、背後の鉄の塊に
ガツン!と後頭部を打ちつけてしまった。





グニャリと視界が歪む。
そのまま冷たいコンクリートの地面に倒れ込んだ。




(なまえ)
あなた
(ダメ、ダメ……)





意識を手放したらダメだと奮い立たせるも、
その抵抗も虚しく瞼がすっと沈んでいく。





気を失う直前に目にしたのは、
手術室の窓ガラスを突き破る獣の姿だった。



















手術前に交わしたマークとの会話を思い出す。




mark
mark
これ…やるよ
(なまえ)
あなた
なに、また折り紙?
mark
mark
そう、ジャックラッセルだ
俺が死んだらきっと価値が出る
(なまえ)
あなた
…最期の贈り物にしないで





俺が死んだらって何よ、先に逝くつもり?
まだろくにデートもしてないじゃない。
私はずっと、貴方に想われるのを待ってるのに。





これで最期になんかしたら、
許さないんだからね……。




プリ小説オーディオドラマ