第256話

‥指揮者‥
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2020/04/24 12:42
?「なぁなぁっ」




肩を掴まれて振り替えると、2人組の男の子。




?「君、そのジャージ手作り?」



あなた「へ?」




……あ、そっか、稲荷崎のジャージだ。




あなた「いや……」




?「よぉできとるなぁ。そないバレー部が……宮ツインズが好きなん?」



小馬鹿にしたような言い方に少し苛立ちを覚える。



あなた「いや……」



?「せやけど自分、ごっつ可愛えな。宮ツインズは手におえんけぇ、俺んしとかん?」



自分を指差しながらヘラヘラ笑う。



チャラ男かてめぇ。




あなた「遠慮しときますっ」




苛立つ気持ちを押さえながらニコッと笑って見せると、それでも食い下がる。




?「せやけど……叶わん恋やで?傷つくだけやで?」



"叶わん恋"かぁ。



あなた「そんなの、分かんないじゃないですか」




確かに西谷先輩へのこの気持ちは、ずっと叶わないのかもしれない。



でもそんなちゃんとした確証もないのに諦められるほど、簡単な気持ちで想っていない。



この人は治さんや侑さんについて言っているのかもしれないけど、私にとっては同じことだ。




決めつけられるのは不愉快。





治「あなたしゃがめぇ!!」



スッ


ドムッ


?「ふぅごふっ!」



突然の大声に迷わずしゃがみこむと、さっきまで話していた男の人の顔にボールが当たった。



?「痛ぅ……」



流石にギャラリーまで飛んでくる流れ弾にそこまでの威力がある訳もなく、でもまぁそこそこ痛そう。



治さんが打ったの……?



コートを見なくても、侑さんのセットアップで治さんが打ったのだとすぐに分かった。



ギャラリーの女の子達の盛り上がりようがヤバイから。




あなた「おさむさっ______」

「きゃぁぁぁぁっかっこええええ!」

「ボール私のとこきてぇぇぇぇっ!」

「ぶつけられたぃぃぃぃい!」

あなた「治さ……」

「もっかいもっかいいいい!!」

「アンコールしてやぁぁぁっ」

あなた「……あのっ」

「ちょっ、誰か今の録画してへんの!?」




うるさ……。



頭ガンガンする……。



と、侑さんがボールを持ち、右手を宙に掲げた。



「あっつーむ!!!!あっつーむ!!」




そしてその拳を、ギュっと握った瞬間。



「あっつーm_______……………………」



頭にガンガンと響いていたあの甲高い声援が、一斉に止んだ。



こんな統制とれるように思えなかったのに……。



オーケストラの指揮者みたい……。





侑さんは掲げた拳を握ったまま、ギャラリーを見渡す。




侑「自分らぁ…………道開けぇや」




スススッ _-)))



あなた「!!!!?」



静まった体育館に通ったその声で、階段までの道が一気に空いた。



侑「あなた、降りてきぃ」



…………。




いや、行き辛い……。



でも、こんな道開けてくれた訳だし……このチャンスを逃したらもう出ていけないよね。





ペコペコ頭を下げながら、できるだけ顔を見られないようにコート側に顔を向けて走る。





あぁ……また呼び出されるのかな。



?「…………(ニヤッ)」




ガッ!




あなた「っ!!!?」



何かに……否、意図的に出された足に・・・・・・・・・・躓き、体が前のめりになる。




うわ……油断した。







倒れ込みながら、咄嗟に考えていたのは肩からかけた鞄に入っているお弁当をらどうやって守ろうかということだった。

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