[山を抜け、川を渡り、やっとの思いでたどり着いた先は、戦場でした。]
地獄、という表現が最も正しいであろうその場所では、幾つもの鬼殺隊であったモノが転がっていた。
『姉さん、姉さん!』
[姉は、ひとりで戦っていました。]
[見るに堪えないほどボロボロになっても、仲間が瞬く間に殺られていっても。]
「逃げなさいあなたの名前(前世)!!!」
『いや、いやよ!姉さんを置いてなんて行けない!』
たった一人の鬼が、これだけの人を殺したという事実は、あなたの名前(前世)に、そしてそれを見守る保護者()に大きなダメージを与えた。
「ケヒヒッ、せっかくの飯だ。逃がすわけないだろ?」
『っ!』
「早く逃げなさい!」
『シィィィィ───春の呼吸壱の型、立春』
息を飲むほど美しく、舞うようで鋭い剣技が鬼を襲う。
しかし、
「甘いなァ、ケヒッ、その技はもう見飽きたぞ?」
無情にも、その技は軽々と躱され、鬼の鋭い蹴りが、あなたの腹に突き刺さった。
『ッ!?カハッ!!』
ベックが鬼の頭に銃を打つも、これは夢である。
あまりにも強い覇気によって、バタバタとクルー達が倒れていく()
「あなたの名前(前世)!!!!!」
『シィィッ―――春の呼吸参の型、春風』
何とか呼吸によって受け身をとるが、ダメージが大きい。
そんな中で、立ち上がることの出来ないでいるあなたの名前(前世)には
「そろそろ終わりにするかァ!」
今にも自分を殺さんと、迫り来る鬼を前に、為す術もなかった。
ウタがあなたの名前を全力で突き飛ばそうとするが、これは夢である(n回目)
他のクルー達は、最早現実に目を向けることが出来ていない。
なんなら気絶している←
[私はもう、ここで死ぬのだと、そう思いました。]
『ッダメ!!』
「―――炎の呼吸壱の型、不知火!」
もう終わりだと思った瞬間、あなたの名前(前世)の前に赤い炎が舞った。
「よもや!どうやら間に合ったようだ!」
あなたの名前(前世)と奏を救ったのは誰よりも熱く燃え上がるような男だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。