第6話

ダンボール箱いっぱいの
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2023/07/31 11:13 更新
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
はぁ、はぁ、綺……待ってくれ……
私は一ノ瀬 光。
綺に職員室へと連れられて2人で職員室前にいる。
綺が走るから、必然的に私も走ることになったわけだが、それが私にとっては早すぎたようだ。
息切れが止まらない。
別にそれは良いのだが──
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
(て、手が……!)
綺に手を引かれ連れてこられたまま、まだ繋がれている。
二階堂 綺
二階堂 綺
すまない、走って悪かった。大丈夫か?
私が必死に頷くと、綺が笑った。
二階堂 綺
二階堂 綺
それじゃあ、職員室入ろうか?
綺は本当にそのまま行ってしまいそうな雰囲気を醸し出している。

──この手を繋いだ状態で?

さすがに無理だ。先生方は笑ってくれるかもしれないが、私が死ぬ。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
あ、綺……その……
二階堂 綺
二階堂 綺
ん〜?
綺がにやにやと笑った。
これは完全に遊ばれている。
だからといってなすすべなどなく、顔が赤くなるのがわかるだけだ。
やっとの思いで声を絞り出す。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
手……!手を、離してくれないか……?
二階堂 綺
二階堂 綺
ああ、そんなことか。いいぞ?
あっさりと手が離される。
少し、驚いたと同時に残念だと思った。

──あれ?私はなぜ残念がっているんだ?
すると、職員室から先生が出て来られた。
手を繋いでいるところを見られなくて良かったと心から安堵する。
二階堂 綺
二階堂 綺
先生!ちょうど良かったです。
例のダンボール箱を取りにきました。
綺がそう言うと、先生は「あー!はいはい」と職員室から4箱のダンボール箱を出して、私たちに渡してくださった。意外と軽い。








先生は、自分たちでゆっくり見る方が良いだろうと私たちを生徒会室へ帰らせた。

ダンボール箱は閉じられているので、中身がわからない。いったい何が入っているのだろう。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
綺はもう中身を知っているのか?
二階堂 綺
二階堂 綺
ああ、知っているぞ?でも開けてからのお楽しみだ。そうでないと面白くないからな。
みんなそう言うではないか。

ダンボール箱を開けると手紙が綺麗に整列されていた。
封筒に入れられたものもあれば、メモ用紙に書かれているものもある。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
こ、これは……
二階堂 綺
二階堂 綺
職員室の方で、私たちが会議をしている放課後の間、生徒へ「生徒会本部にお礼を伝えよう!」という企画をやってくれたそうだ。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
なるほど……
それで手紙を募集した、ということか?
二階堂 綺
二階堂 綺
その通り。想像以上に集まってしまって、ダンボール一箱では足りなくなったらしい。文化祭のすぐ後だったから、ダンボール箱がなくて生徒会室のを使おうということになったそうだ。
なるほど。事情がわかってすっきりした。



それと同時に嬉しさが込み上げてくる。

ダンボール4箱分も生徒のみんなが手紙をくれたのだ。生徒会本部に宛てたものもあれば個人に宛てられたものもある。よく見ると、先生方からの手紙もある。

こんなにも生徒に、先生に想われて嬉しくないはずがない。
生徒会本部として、完璧ではなかったかもしれない。イベントを上手く進行できないこともあった。

その度に話し合って、
遅くまで残って準備をして──。

大変ではなかったと言えば嘘になる。
楽しかったがそれだけではなかった。
色々な経験をした。
中学以上にやりがいがあった。

本当に、もうすぐでこの生徒会本部としての仕事も終わってしまうことが惜しい。
二階堂 綺
二階堂 綺
すごいだろう?この手紙の量。一人ひとりに宛てられた手紙をわけないといけないんだ。
光、もちろん手伝ってくれるよな?
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
ああ、もちろん。手伝おう。
私と綺で手紙を分ける。
分けていくと、誰宛の手紙が多いのか少ないのかがわかってしまうわけで──。
一ノ瀬 光
一ノ瀬 光
……綺の手紙、多いな。
二階堂 綺
二階堂 綺
光も人のこと言えないだろう?
私と綺の手紙が圧倒的に多かった。

綺の手紙は可愛らしいデザインのものが多いから、女子生徒からの手紙が多いということだろう。綺は男からも人気だが、それ以上に年下の女子生徒から絶大な人気を誇っているのだ。手紙が少ないわけがない。

私の手紙はシンプルなものが多かった。女子生徒からの手紙もあるが、男子生徒からの手紙も多い。自分の友人の名前が多くて少し嬉しくなる。


この手紙の量の差は他のメンバーに申し訳ないから、他のメンバーの手紙の量に合わせて自分の手紙を少し持ち帰ることにした。
二階堂 綺
二階堂 綺
あと、七夕の笹と短冊も職員室の方で用意してもらったぞ。そういうのは私たちがやりますって言ったのに、先を越されてしまってな……
そう言う綺は嬉しそうだ。
それもそうだ。全校生徒分+余り分の短冊を用意するのだ。なかなかの重労働である。
本当に職員室の先生方には頭が上がらない。
二階堂 綺
二階堂 綺
笹を見せていただいたのだが、けっこう大きかったぞ。あとで笹、玄関ホールに取り付けよう。テストも終わったんだ。忙しくなるぞ〜?
そう言う綺の声は弾んでいた。私の心も弾む。
毎年恒例の七夕企画は玄関ホールの笹に生徒が書いた短冊を自由に取り付けられるというもので、生徒会本部の最後の仕事だ。
みんなに手紙というパワーをもらったのだ。
最後まで全力でやり遂げよう。

そう決意すると同時にチャイムが鳴った。

また放課後に。

そう言って綺と別れる。その足取りは軽やかで、誰もが憧れる生徒会長の姿そのものだった。
お待たせいたしました。
明日はコンクールで、投稿ができるか怪しいのですが……本当にもう少しで完結です。
よろしくお願いいたします。

誠に季節外れですが、6月中旬〜7月までのお話です。

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