私は一ノ瀬 光。
綺に職員室へと連れられて2人で職員室前にいる。
綺が走るから、必然的に私も走ることになったわけだが、それが私にとっては早すぎたようだ。
息切れが止まらない。
別にそれは良いのだが──
綺に手を引かれ連れてこられたまま、まだ繋がれている。
私が必死に頷くと、綺が笑った。
綺は本当にそのまま行ってしまいそうな雰囲気を醸し出している。
──この手を繋いだ状態で?
さすがに無理だ。先生方は笑ってくれるかもしれないが、私が死ぬ。
綺がにやにやと笑った。
これは完全に遊ばれている。
だからといってなす術などなく、顔が赤くなるのがわかるだけだ。
やっとの思いで声を絞り出す。
あっさりと手が離される。
少し、驚いたと同時に残念だと思った。
──あれ?私はなぜ残念がっているんだ?
すると、職員室から先生が出て来られた。
手を繋いでいるところを見られなくて良かったと心から安堵する。
綺がそう言うと、先生は「あー!はいはい」と職員室から4箱のダンボール箱を出して、私たちに渡してくださった。意外と軽い。
先生は、自分たちでゆっくり見る方が良いだろうと私たちを生徒会室へ帰らせた。
ダンボール箱は閉じられているので、中身がわからない。いったい何が入っているのだろう。
みんなそう言うではないか。
ダンボール箱を開けると手紙が綺麗に整列されていた。
封筒に入れられたものもあれば、メモ用紙に書かれているものもある。
なるほど。事情がわかってすっきりした。
それと同時に嬉しさが込み上げてくる。
ダンボール4箱分も生徒のみんなが手紙をくれたのだ。生徒会本部に宛てたものもあれば個人に宛てられたものもある。よく見ると、先生方からの手紙もある。
こんなにも生徒に、先生に想われて嬉しくないはずがない。
生徒会本部として、完璧ではなかったかもしれない。イベントを上手く進行できないこともあった。
その度に話し合って、
遅くまで残って準備をして──。
大変ではなかったと言えば嘘になる。
楽しかったがそれだけではなかった。
色々な経験をした。
中学以上にやりがいがあった。
本当に、もうすぐでこの生徒会本部としての仕事も終わってしまうことが惜しい。
私と綺で手紙を分ける。
分けていくと、誰宛の手紙が多いのか少ないのかがわかってしまうわけで──。
私と綺の手紙が圧倒的に多かった。
綺の手紙は可愛らしいデザインのものが多いから、女子生徒からの手紙が多いということだろう。綺は男からも人気だが、それ以上に年下の女子生徒から絶大な人気を誇っているのだ。手紙が少ないわけがない。
私の手紙はシンプルなものが多かった。女子生徒からの手紙もあるが、男子生徒からの手紙も多い。自分の友人の名前が多くて少し嬉しくなる。
この手紙の量の差は他のメンバーに申し訳ないから、他のメンバーの手紙の量に合わせて自分の手紙を少し持ち帰ることにした。
そう言う綺は嬉しそうだ。
それもそうだ。全校生徒分+余り分の短冊を用意するのだ。なかなかの重労働である。
本当に職員室の先生方には頭が上がらない。
そう言う綺の声は弾んでいた。私の心も弾む。
毎年恒例の七夕企画は玄関ホールの笹に生徒が書いた短冊を自由に取り付けられるというもので、生徒会本部の最後の仕事だ。
みんなに手紙というパワーをもらったのだ。
最後まで全力でやり遂げよう。
そう決意すると同時にチャイムが鳴った。
また放課後に。
そう言って綺と別れる。その足取りは軽やかで、誰もが憧れる生徒会長の姿そのものだった。
お待たせいたしました。
明日はコンクールで、投稿ができるか怪しいのですが……本当にもう少しで完結です。
よろしくお願いいたします。
誠に季節外れですが、6月中旬〜7月までのお話です。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。