第35話

第33話:「共犯」
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2025/07/08 01:04 更新
開かれたガラスの向こう。
一颯と彩女は、今まで一度もなかった距離で対面していた。

ほんの数十センチ。
だけど、それは今までの世界のすべての境界線だった。

「じゃあ、一緒に堕ちる?」

彩女の問いに、一颯は静かにうなずいた。

「堕ちるんじゃない。
 お前を、そこから引きずり上げるんだよ」

ふ、と彩女が笑う。

その笑顔は、今まで一颯が見てきた中で、
いちばん“彼女自身”に見えた。



彩女は言った。

「この施設には“購入候補者リスト”があるの。
 売られる直前に指名できる制度。
 普通の生徒には一切見せないけど……アクセスできる人間は、限られてる」

「誰?」

「特別クラスの上位成績者と、運営本部の推薦者。
 ……そして、外部資金提供者の“推薦枠”」

(つまり、“買う側”と“売る側”が、
 生徒の中に混ざってるってことか)

「今の私にはまだアクセスできない。でも──」

彩女はポケットから、小さなICカードを取り出した。

「これは、私の部屋のサブキー。
 特別クラスの宿舎には、監視抜けの通信端末が一台ある。
 一颯、あなたにしかできないことがある」

「行くよ。今夜、忍び込む」

「危険だよ」

「……その“危険”に、もう遅いも早いもないだろ?」

彩女が微かに目を伏せる。

「ありがとう。私のために、ここまで来てくれて」

「違うよ、彩女。
 俺は“誰かを売って生きてるこの学校”が許せないだけ」



場面は変わり──夜。

特別クラスの宿舎は、鉄柵と生体認証で管理された閉鎖空間。
けれど彩女のカードキーで、一颯は侵入に成功する。

(誰かに見つかれば即退学。
 でも、それでもいい。俺は──)

部屋に入り、指定された端末へ。
彩女の指示通り、裏ファイルへのアクセスを試みる。

──パスコード入力。

画面が揺れた後、現れたのは購入候補者リストのページ。

そこには、神楽彩女の名前と並んで──

「第3購入予約者:真壁 陸(まかべ りく)」

その名前が表示されていた。

「……嘘、だろ……?」

親友の名前。
自分の一番近くにいたはずの男が、“買おうとしている”。

それは、一颯のすべてを打ち砕く一撃だった。

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