由里の…思ってるとおり…?
嘘、つかれた…?
じゃあ、私との関係はなんなの?
別に先輩に言い寄ってないし。
告白してきたのそっちだし。
なんで本当の事を言わないの?
隠して由里先輩を安心させてるの?
本当の彼女は…
私じゃないの…?
目からこぼれ落ちた一滴の雫。
今まで…
私は何をしてたんだろう…
空気が重くて。
苦しくて。
私は走って逃げた。
「はぁっ、はぁっ…」
中庭から、下駄箱を通って校庭まで来た。
誰もいない。
それもそのはず。
みんなもう帰っている。
この日、私は委員会で遅くまで残っていたから。
雪が降る中、私は校庭の真ん中で1人立ちつくしていた。
コートは教室、マフラーもしていない。
手が赤くなり、ジンジンと痛んだ。
「ふ…うっうぅっ」
どうして…っ
私がこんな目に遭わなきゃいけないのっ…
大声で叫びたかった。
泣きたかった。
でも私は声を殺して泣いた。
だって、悔しかった。
ここで泣いたら…
惨め。
ただ振り回されてた負け犬。
あの由里先輩からも鼻で笑われるんだ。
そんなのは絶対に嫌だった。
「あなた!」
後ろから私を呼ぶ声がした。
振り返りたくない。
だってその声、
遥斗先輩…。
なんで、
なんで来たの?
私は頑張って前に進んだ。
逃げた。
でも逃げ切れるはずがない。
寒さで上手く足が動いてくれない上に、相手は男の子だ。
直ぐに追いつかれて、肩を掴まれた。
「嫌っ!
離して!!」
私は肩に触れられた遥斗先輩の手を振り払った。
私はなんでもないんでしょ!
遥斗先輩の彼女じゃないんでしょ!!
「あなたっ!
とりあえずお前、これ着ろっ」
遥斗先輩は自分が着ていたコートを脱いで私に被せた。
「な、何するんですかっ」
「コートも着ないでこんなところ…
風邪引くぞっ」
意味わかんないよっ
なんで優しくするの?
「いいですっ
もう教室戻りますからっ」
私はコートを返そうとした。
しかし、それは遥斗先輩に阻まれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!