帝統が乱数の事務所から帰ったあと、乱数は早速幻太郎の容態を見に向かった。そこには生気が感じられない幻太郎がベッドの上に寝ていた。まるで電池が切れたロボットのようだ。
乱「さーてとっ、さっさとこの幻太郎処分しちゃいますか」
乱「直る見込みのないやつをとっておくより捨てて新しいの作った方がいいしねっ♪」
乱数は最初から幻太郎を直す気なんてなかったのかもしれない。それに彼も同じクローンだ。クローンが直る確率は極めて低いことぐらいわかっているのだろう。それに乱数は感情はあっても普通の人間に比べて僅かにあるだけだ。それだけでも珍しいことだが。
そのため彼は慈悲の心なんてなかったのかもしれない。そんな彼が壊れたクローンを捨てるのなんて当然のことだろう。
乱「はあ〜結構上手く作れたんだけどなあ〜ざーんねん。後で帝統にお金請求しとこっかな〜。ま、今は無理かっ♪」
そのときだった。
幻太郎の瞳から一粒の雫が流れた。それは普通の人間なら当然のこと。だが、今の幻太郎には天地がひっくり返ってもありえないことなのだ。
乱「げんた…ろ…?」
幻「………」
幻太郎はそのままぽろぽろと泣き出した。顔は変わらない。ただ涙が出ているだけだ。
乱「ま、まさかっ…!!」
乱数はまだ幻太郎のプログラムが生きているかもしれないと思い、すぐに幻太郎の脳のデータを調べた。脳のプログラムは完全に壊れており、動くはずがない。それならと乱数は身体の隅々のプログラムを調べ尽くした。だがいずれも全て壊れている。動くはずがないのだ。
乱「幻太郎…お前…」
幻「……………。」
そう、動くはずがない。人間の感情が宿っていなければ、動くはずがないのだ。人間の感情が宿っていなければ。
乱「そん…な…。ありえない…だがこれは…。」
そのとき幻太郎の口が開いた。最初は音にもなっていなかった掠れ声が、段々と音量をあげて行き、それはやがてハッキリ捉えられるようになった。
幻「帝統…」
この男、このクローンはそこらの人間よりもずっと大きな愛を持っていたのだ。自分を殺しかけてしまうほどの、大きな愛を。だが、その愛はそれよりも更に大きくなり、やがで生命を再び宿すほどのものとなった。そう。
新しく、人間として。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!