【赤葦 side】
俺の日常は、いつも同じ色をしている。
授業、部活、帰宅、課題。
嫌いじゃない。けど、予想のつく毎日だ。
そんな繰り返す日常の中に、"彼女"は突然現れた。
***
その日も、変わり映えのないはずだった。
先生に頼まれて課題を職員室に運び、教室に戻る途中。
角を曲がった瞬間、誰かとぶつかった。
赤葦「すみません...!!怪我してませんか...!?」
条件反射で声をかけると、相手は長い茶髪をひとつに結んでいる小柄な女子だった。
そんな彼女は俺に視線を移すと勢いよく謝罪してきた。
?「大丈夫です...!!私の方こそ前見てなくてごめんなさい...!!」
俺は彼女の何度も頭を下げる仕草に、謝罪というより、どこか怯えているように見えたんだ。
だからこそ、余計に心配になって再び声をかけようとした時。
校内にチャイムが鳴り響き、彼女は「すみませんでした!!」とだけ残して走り去っていった。
その後ろ姿を追うように振り返る。ふと目に入ったのは、俺と同じ色の上履き。
つまり同学年ということになる。しかし、見覚えは...ない。
赤葦「同じ色の上履きだけど...あんな子居たっけ?」
そう呟き考えるも思い出せず、頭を悩ませた。
(今度会った時にちゃんと謝らなきゃだな...。)
遠くから友だちの声が聞こえ、俺はすぐに教室に戻った。
***
教室に戻ると、いつもよりざわついていて驚く。
ざわめきの中心は、前の席の川内だった。
川内は俺を見るなり、顔を輝かせて身を乗り出してくる。
川内「なぁ、赤葦!今日、転校生来る日だぞ!」
赤葦「...あぁ。昨日、先生がいってたやつか。」
川内「そうそう!男かな?女かな?笑」
赤葦「さぁ...。俺はどっちでも。」
川内「なんだよ~!乗り悪ぃな!」
俺の温度に構わず、川内は予想を並べて他の男子と盛り上がり始めた。
窓の外に目を向ければ、校庭の端に春を感じさせる桜が揺れ、花びらがヒラヒラと舞っている。
その静けさと、教室の騒がしさが、妙に対照的に感じた。
やがて、チャイムが鳴り、担任が教室に入ってきた瞬間シーンと静まった室内。
(ほんと毎日...なんか退屈なんだよな...。)
俺がそう思った瞬間。教室が一層騒がしくなった。
俺も視線を教壇の方に向けると、見覚えのある姿がそこに...。
(あ、あの人は...。)
長めの茶髪をひとつに束ねた、小柄な女子。廊下でぶつかった"彼女"だった。
担任の「簡単な自己紹介をしてもらおうか!」に頷き、彼女は深呼吸をひとつして口を開く。
柔らかい声。けれど、少し緊張で硬い。
名前を告げるその姿を、俺は特に理由もなく目で追っていた。
興味なんて持たないと思っていたのに...なぜか、少し印象が残った。
そして、先生が指定してきたのはまさかの俺の隣の席。
俺が挨拶すると、礼儀正しくお辞儀までして挨拶を返す彼女の姿に好感が上がる。
俺が知ってる女子とどこか違う雰囲気を漂わせる彼女に、普段は女子と会話を避けているはずの俺は会話を続けていた。
***
放課後、まさかの木兎さんの登場に呆れつつも天野さんの方を見ると、俺は言葉を失った。
何故か顔が真っ青で、体が震えているのだ。声を掛けたが、天野さんは教室を飛び出して行ってしまった。
俺も追いかけようとしたのだが、木兎さんに捕まり追いかけそうにない。
七瀬に目配せをすると、七瀬も頷いて天野さんの後を追いかけにいってくれた。
後に連絡がきた文章には《家の用事で帰っただけだって》の文字が。
(あの時に見た表情は、俺の勘違いだったのかもしれないな...笑)
心配のし過ぎだと、そう思いながら部室に向かった。
また明日、天野さんと話が出来るよう願いながら。
***
今日、天野さんと出会って、俺の中で何かが変わった。
表情豊かなところとか、会話する時の話し方・聞き方とか、授業を受ける真面目な態度が妙に目に焼き付く。
(どうしてなんだろう...。)
気づけば、その理由に名前をつけれるくらいには___
俺は、天野 あなたさんに惹かれていたんだ。
それが"恋"だと気づくのはまだ先の話なのである。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。