第9話

あやねさんリクエスト 約束_フレッド
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2025/05/05 00:12 更新
兄のセドリックは、私の誇りだった。ハッフルパフの星、トライウィザード・トーナメントの代表。4年生の私は、最後の試合を見送る時、「お兄ちゃん、優勝してね」と耳元で呟いた。セドリックは「ああ、任せて」と笑った。

だが、運命は残酷だった。ハリーと会場に戻った時、兄の顔は冷たかった。父さんと駆け寄ったが、セドリックは死んでいた。大好きなお兄ちゃんを失い、私は泣き崩れた。そばにはチョウもいた。

心に穴が空いた。父さんとは手紙も交わさず、家族と縁を切った。父さんの悲しむ顔を見られなかった。ホグワーツのハッフルパフ談話室で一人、ぼんやり過ごした。誰の声も届かなかった。

ある夜、廊下の隅でセドリックの写真を握り、涙が止まらなかった。「お兄ちゃん…なんで…」 肩が震えた。グリフィンドール6年生のフレッド・ウィーズリーが現れ、そっと隣に座った。セドリックとクィディッチで競った彼は、静かに言った。「なあ、あなた…セドリックなら、君が泣いてるの知ったら、きっと嫌がるだろ?」と彼は私の肩を抱き、セドリックがよくしたように引き寄せた。「もっと誰かに寄り添っていいんだぞ。ほら、こうやって」 その温かさに、お兄ちゃんの面影を見た。「ほっといて…」と呟いたが、フレッドは毎日話しかけてきた。「あなた、昼飯まだだろ? 一緒に食おうぜ?」「セドリックのこと、話したい時あれば、いつでも俺に言えよな!」 軽い口調に真剣な目。胸の痛みが薄れた。

5年生の夏、フレッドが「あなた、うちに来ねえ? 母さんの料理はうまいぞ」とウィーズリー家に誘った。家族を失った私に、帰る場所はなかった。モリーの「あなた、もっと食べなさい!」やジニーの「あなた!一緒にクィディッチやろう!」が、凍った心を溶かした。夏休みはずっとウィーズリー家にいた。フレッドが「そうだ、庭でクィディッチの練習付き合えよ。セドリックみたいに飛べるだろ?」と笑うと、笑顔が戻った。

夏の終わりのある夕方、ウィーズリー家の裏庭で、フレッドと私がクィディッチの箒を片付けていた。夕陽がオレンジ色に庭を染め、遠くでジニーがロンのボールを奪って笑ってる声が響く。フレッドが箒を肩に担ぎ、ニヤッと笑った。「なあ、あなた、俺と本気のクィディッチ対決、やってみねえ? セドリックの妹なら、俺をビュンビュン追い越せるだろ?」 私が「絶対無理! フレッドのフォーメーション、ズルいもん」と笑うと、彼はわざと大げさに胸を押さえた。「おっと、ズルいだって? 俺の作戦は芸術なんだぞ!」 そう言って、私の手から箒をサッと奪い、くるっと回してポーズを決めた。笑いが止まらなくて、久しぶりに胸が軽くなった。

その夜、ウィーズリー家のリビングで、モリーが編み物をしながら「フレッド!あなた、またいたずらグッズでロンを驚かせたでしょ!!」と叱る声が響く。フレッドはソファに寝そべり、私の隣でクスクス笑った。「ははっ!あなた、母さんのあの顔、最高だろ? でもさ、ほんとは俺のこと大好きだからな」とウインク。私は「うん、モリーさんが作るシチューって、ほんと美味しいよね…」と呟くと、フレッドが急に真剣な顔で私の手を握った。「なあ…あなた、いつでもここに来いよ。セドリックのこと、俺ちゃんと覚えてるから。…お前が笑ってると、なんか、ホッとするんだ」 その言葉に、セドリックの笑顔がチラッと頭をよぎり、胸が温かくなった。「…ありがとう、フレッド」と小さく答えると、彼は「よーし、じゃあ明日はジニーにクィディッチで勝つ作戦考えるぞ!」とまたいつもの調子に戻った。モリーが「あなたたち、そろそろ寝なさい!!」と叫ぶ中、笑いながら2階に上がった。


冬休み、ウィーズリー家にある暖炉の前でココアを飲みながら、フレッドが言った「あなた…俺と付き合わねえ? あなたが一人でいるの、嫌なんだ…」と、あなたは「急に、何?」 と答えたが、セドリックの笑顔がよぎり、胸が締め付けられた。「あなたを放っとけないんだ、セドリックの分もな」と真剣な目を見て、「…うん」と答えた。それで、私たちは付き合いを始めた。

ウィーズリー家での毎日は、色づいた。クリスマス、モリーとジニーに教わり、フレッドのためにマフラーを編んだ。「あなた、ここ歪んでるわ!」とジニーが笑い、モリーが「心がこもってるから大丈夫よ」と抱きしめてくれた。完成したマフラーをフレッドに渡すと、彼は私の顔を覗き、隣に座った。「あなた、これ、すっごく暖かいな。…大丈夫か? なんかあったら、いつでも言えよ」 その言葉に、セドリックのような温かさを感じた。

6年生の夏、フレッドとジョージの店「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ」に遊びに行った。「あなた、このキャンディ、試してみねえ? 失敗作だけどさ!」 と笑った。私が「もう!色が危なそうだよ?」と笑うと、「俺がそばにいるから大丈夫さ!」とウインク。家族を失った私には、こんな日々が宝物だった。

だが、7年生の夏、暗雲が垂れ込めた。フレッドが「大事な用事がある。でも、すぐに戻るよ」と言い、詳しく話さなかった。それはハリーを守る「7人のポッター作戦」だった。ウィーズリー家でジニーと待つ間、セドリックの死が蘇り、胸がざわついた。

ドアが開き、フレッドが血だらけで帰ってきた。腕に深い傷、顔は青白い。「フレッド!?」 彼は「大丈夫、ちょっとやられただけ。心配すんな…」と笑った。モリーが泣きながら治療し、ジニーが震える私の手を握った。誰も作戦のことなんか、教えてくれなかった。

セドリックの死がよぎり、涙が溢れた。「また…私は誰かを失うの?」 フレッドは私の肩を抱き、セドリックのような温かさで引き寄せた。「俺はあなたを一人にさせない。約束だ…」 その声の震えに、不安が心を刺した。

第二次魔法戦争が始まり、ホグワーツは戦場と化した。1998年5月、7年生の私はハリーやハーマイオニー、ダンブルドア軍と並び、戦いに身を投じた。セドリックの死を胸に、杖を握った。フレッドはジョージと行動を共にした。彼らはいつも互いの背中を守っていた。

戦いの前夜、ウィーズリー家の庭で、フレッドが私を呼んだ。「…あなた、ちょっと話そう」 彼は私の肩を抱き、そっと引き寄せた。「明日は忙しくなると思うけど…でも、俺ちゃんと戻るからな」と真剣な声で言った。

「約束?」 セドリックの笑顔が掠め、不吉な予感に息が詰まった。フレッドは私の顔を覗き、セドリックの温かさを思わせる目で言った。「俺はあなたを絶対に一人にさせねえよ。あと、セドリックの分までな…」 そう言うと、彼の唇が触れた。初めてのキスは震えるほど切なかった。フレッドと抱きしめ合い、互いの鼓動を感じた。だが、冷たい風が吹き、心がざわついた。

戦いが始まった。城は呪文と叫び声で揺れ、私はハリーたちと廊下を守った。フレッドとジョージは別の場所で戦い、時折彼らの笑い声が響いた。「あなた、気をつけろよ…!」 フレッドが遠くから叫び、ウインクした。その笑顔が、セドリックのようで胸を刺した。

戦場のホグワーツは、まるで地獄だった。崩れた壁の隙間から、赤や緑の呪文の光が飛び交い、叫び声と爆発音が耳をつんざく。私はハーマイオニーと背中合わせで、死喰い人の「クルーシオ!」を「プロテゴ!」で跳ね返した。汗と埃で顔がベタつき、杖を持つ手が震えた。「あなた、右だ!」 ハリーの叫び声に振り向き、咄嗟に「ステューピファイ!」を放つ。死喰い人が倒れるが、すぐに別の影が迫る。心臓がバクバクして、セドリックの冷たい顔がチラつく。「お兄ちゃん…私、負けないよ…」 自分に言い聞かせ、前に進んだ。

遠くで、フレッドとジョージの声が聞こえた。「ジョージ、左だ!」「任せろ、フレッド!」 2人の軽口が、戦場の重さを一瞬だけ和らげる。彼らは大広間の入り口近くで、死喰い人と対峙していた。フレッドの赤い髪が、呪文の光に照らされて揺れる。「あなた、そっち大丈夫か!?」 彼が私を振り返り、いつものウインク。だが、その瞬間、背後の壁に死喰い人の「ボンバーダ!」が炸裂した。爆音が響き、瓦礫が舞う。フレッドの姿が煙に飲み込まれた。「フレッド!?」 叫んだが、声は戦場の喧騒にかき消された。

ハーマイオニーが私の腕を掴み、「あなた、行くわよ!」と引っ張るが、足が動かない。胸が締め付けられ、セドリックの死の記憶が蘇る。「いや…フレッド、どこ!?」 ハーマイオニーの手を振りほどき、崩れた廊下を走った。瓦礫を乗り越え、煙を掻き分ける。喉が焼けるように痛み、涙が頬を伝った。「フレッド! お願い、返事をして!」 叫びながら大広間にたどり着くと、ジョージが壁にもたれ、血まみれで膝をついていた。彼の目から涙が溢れ、フレッドの名を呟いていた。「ジョージ…フレッドは?」と聞くと

ジョージは震える声で、「フレッドが、爆発に…」と絞り出した。私は瓦礫の山を見た。そこには、フレッドの姿。動かない体と、血に濡れた赤い髪。私のマフラーの切れ端が、彼の手に握られていた。「嘘…フレッド…」 膝から崩れ落ち、冷たい石の床に手をついた。セドリックの死が重なり、心が粉々に砕けた。ジョージが私の肩を抱き、2人でフレッドの名を呼び続けた。遠くでハリーの叫び声が響く中、戦場はまだ燃えていた。



戦争が終わり、ウィーズリー家とも疎遠になった。
私は1人、ポケットにマフラーの切れ端を入れ、肌身離さず、フレッドを思いながら暮らした。毎晩、彼の笑顔とセドリックの微笑みが夢に現れ、心の穴を埋めようとした。


ある日、フクロウ便が届いた。ホグワーツの同窓会のお知らせだった。気力はなかったが、お兄ちゃんの恋人だったチョウ・チャンからの手紙が心を動かした。「あなた、行こうよ。セドリックやフレッドも、きっと来てほしいって思うよ。一緒にいれば、いいこともある」 お姉ちゃんのように慕っていた彼女の言葉に、会場へ足を向けた。

会場には懐かしい顔ぶれがいた。ハリー、ハーマイオニー、ジニー、でも、セドリックやフレッドはいなかった。チョウと話しながら、ふと聞き慣れた声がした。「…ジョージかな?」と振り返ると、バルコニーに座る人影。そこにはフレッドの笑顔があった。

あなたは涙が溢れ、駆け寄った。「フレッド!?」 彼は私を抱きしめ、セドリックのような温かさで額にキスをした。「約束だっただろ?」と言った。

「そばにいてくれるって…約束したじゃない」 あなたは、ボロボロと泣いた。チョウやハリーがバルコニーを見ても、誰も気づかなかった。フレッドは困った顔で笑った。「ごめん、でも、あの後、ずっとあなたのそばにいたよ。毎日、俺のこと思っててくれたろ?」 彼は私のポケットを指した。そこには、マフラーの切れ端。「それ、俺だと思って、これからもそばにいてくれよ」と言った。

ふと、隣にセドリックがいた。微笑み、フレッドに言った。「フレッド、僕の代わりにあなたを頼むよ」 私を優しく見守り、静かに消えた。あなたはフレッドを見つめ、「見えなくても、そばにいてくれるんだね?」と呟いた。「ああ、俺たちの約束だからな」 彼は私の涙を拭い、キスをしてくれた。

フレッドはバルコニーの柵に立ち、「また会いにくるから、俺のこと忘れないでくれよ。そばにいるからな」 ウインクして、フレッドは消えた。

会場に戻ると、ハリーが近づき、小さな石を差し出した。「これ、蘇りの石なんだ、あなたがフレッドやセドリックに会えたら、安心すると思って」 目を見開き、胸が熱くなった。

同窓会に来てよかった。バルコニーの夜空を見つめ、マフラーの切れ端を握った。「ありがとう、フレッド、セドリック、私のそばにいてくれて…もう1人じゃないんだね」 彼らの笑顔が、星の向こうで輝いている気がした。

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