カキツバタは、私のことを優しく抱き締めた。
片方の手は腰に回し、片方の手で頭をなでて
くれた。
大きくて、少しゴツゴツしてたけど、とっても、
温かい手だった。
気付けば私の手錠は外されていて、スグリ君に
バレた時の事よりも、眼の前の安心に縋りたくて、
カキツバタのその大きな背中に腕を回し、
私も目一杯に抱き締めた。
優しく微笑んで私に問い掛けるカキツバタ。
私はどういう事か分からず聞き返した。
にぱりと明るい笑みを見せるカキツバタ。
しかし私には懸念があった。
…スグリ君が居る。
彼は…私は、彼が怖い。
▷ 行く
▷ 行かない
▶ 行く
 ̄ ̄
▷ 行かない
カキツバタはニヤリと笑った。
そしてぽんぽん、と私の頭を撫でると、
〝じゃあ行くかぁ!〟と笑顔で言った。
もう、何もいらない。
ポケモンも、バトルも、友達も、なにもかも。
私はこの人さえいれば居れば良いと思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。