この日、望は朝から元気がなく、授業中も眠っていた。
顔色が悪く、今にも倒れてしまいそうだ。
彼がそこまで保健室に行きたくないなら、私は見守ることしかできない。
けど、弱っているのは明確にわかり、私は望のそばを離れなかった。
昼休みになっても少ししか食事を取らない望。
私は食べ終わったのを見計らって、彼の手を引いてあの部屋まで歩き始めた。
彼は私の頭を撫でて微笑んでくれるけど、それはいつも通りに見えて少し違った。
いつも緊張で顔が強張ってしまう私にはわかる。
彼は言い当てられたことに驚いた様子で、私の後を大人しくついてきてくれる。
部屋についてソファに座らせれば、彼は崩れ込むように寝転んだ。
隣をポンポンと叩くのを見て私がそこに座ると、彼は一言呟いて倒れ込んできた。
柔らかい髪の毛を梳くように撫でてあげれば、彼は瞼を閉じてぽつり、ぽつりと話し始めてくれる。
望は今にも泣いてしまいそうな笑顔を私に向ける。
そう言えば、望は安心したように寝息をたてはじめる。
私もそんな彼の寝顔を見守りながら眠りについた。
放課後、私は元気になった望と途中まで一緒に帰った。
彼はいたずらっ子のような無邪気な笑みを浮かべて私の頭を撫でる。
遠のいていく望の背はぴんと伸びていて、ちゃんと元気を取り戻しているのが分かる。
その後ろ姿が見えなくなるまで、私は目を離せなかった。
彼は恰好悪くなんてない。私は彼の新たな一面を知る度に、惹かれていっているのだと自覚してしまった。
それでも気づかないふりをした。まだこんな私では、彼とは対等になれない気がしたから。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!