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第7話

2人だけの睡眠スポット


 その日の朝、目覚ましが鳴るよりも早くに望からメッセージが届いた。

草飼 望
草飼 望
もし起きてたら、学校に来てほしい


 今までになかった急なメッセージに驚き、私は急いで支度をして学校へ向かった。

 いつもの登校時間より1時間も早く来たのに、すでに教室では望が疲れた様子で眠っていた。


 私は声をかけずに隣に座ったが、彼はすぐに目を覚まして苦笑する。

草飼 望
草飼 望
朝からごめんね。なかなか眠れなくて、少しだけ……そば、に……


 ずいぶん疲れていたようで、彼はお願いを言い終える前に深い眠りに入ってしまった。

茨野 透花
茨野 透花
(こうやって少しずつでいいから、何かお返しをしていきたいな……。けど、なんでこんなに疲れてるの? 何かあったのかしら?)
茨野 透花
茨野 透花
(頼ってもらうためにもドジは減らして、もっと社交的になれたら一番よね。それから、望のメッセージには今後も気付けるようにしておかなきゃ)


 少しずつでもいいから変えていこうと、私は再び心に決める。

 少しでも彼の役に立てるように。




 みんなが登校してくるころには望は目を覚まし、いつも通りの綺麗きれいな笑顔を見せてくれる。

 お昼休みにご飯を食べ終われば、元気に私の手を引いて屋上へと連れて行ってくれた。

草飼 望
草飼 望
透花、眠い?
茨野 透花
茨野 透花
そんなに、かしら。
けど、眠れるわよ?
草飼 望
草飼 望
うぅん、今日はお昼寝はお休み!
茨野 透花
茨野 透花
ふふっ、お昼寝がお休みってなんだか変ね
草飼 望
草飼 望
あぁー、ははっ、たしかにそうだね。
けど、真剣! 今日はお昼寝スポットをさがしに行こっ!
茨野 透花
茨野 透花
屋上じゃだめなの?
草飼 望
草飼 望
屋上は仮拠点かりきょてんみたいな感じ。
ここっていつ人が来てもおかしくないでしょ?
茨野 透花
茨野 透花
まぁそうね
草飼 望
草飼 望
まずは俺が知ってるところを案内するから!


 そう言って彼はまた私の手を引いて嬉しそうに歩きはじめる。


 朝のことが嘘のように感じるけど、今までにもあって隠していただけなのかもしれない。

茨野 透花
茨野 透花
(私が踏み入っていいことじゃないのかな……?)
茨野 透花
茨野 透花
(……こんなに暗い気持ちでいちゃだめね!
望は楽しんでお昼寝スポットをさがしてるんだから、私も楽しまなきゃ)
草飼 望
草飼 望
最初は資料室!
もうあんまり使われてない教材ばっかりで、先生は全然来ないんだ
茨野 透花
茨野 透花
へぇー、前はこういうところで寝てたの?
草飼 望
草飼 望
うん、もともと人前で寝るのって慣れてなかったから
茨野 透花
茨野 透花
意外ね。望ってどこでも眠れる人なのかと思ってたわ
草飼 望
草飼 望
まあ、眠れないわけじゃないよ。けど、疲れが取れないと困るから、ゆっくり寝たくてね
茨野 透花
茨野 透花
そうなのね
草飼 望
草飼 望
はい、じゃあ次行こっか!
さがす時間も取りたいから、ちょっと早めに回ろう


 彼は気を取り直すように、ぱちんっと手を鳴らし、少し速足で歩きはじめる。


 図書室の端にある使われてない自習スペースや校舎裏の桜の木の下、人通りの少ない階段の踊り場、冗談なのか保健室にまで連れていかれた。

茨野 透花
茨野 透花
こんなにたくさん私に教えてくれてよかったの?
望の秘密の場所でしょ?
草飼 望
草飼 望
透花は特別!





     ドキッ



茨野 透花
茨野 透花
(うぅん、これはきっと睡眠仲間だからよ。……勘違いしちゃだめ)
茨野 透花
茨野 透花
ありがとう


 望の知っている場所を回り終え、私たちの校内探索が始まる。

 見慣れた校舎内を歩き続け、良さそうな場所を観察する。けど、見つからないように慎重に移動した。下手をしたら人が集まってしまうから。

 それはなんだかかくれんぼみたいで、私はお昼寝スポットさがしを遊びのように楽しんでいた。



 やがて、望がとある部屋を見つけて足を止める。

草飼 望
草飼 望
ここ教室札がどこにもないね?
茨野 透花
茨野 透花
本当ね。なんの部屋かしら


 ドアノブに手をかけて押せば簡単に開き、部屋の中を覗ける。

 服や雑貨の入った段ボールがいくつか、そして、部屋の一番奥には綺麗な状態のソファが置かれていた。

草飼 望
草飼 望
演劇部の部室だったのかもね
茨野 透花
茨野 透花
だった、ってことは廃部になったの?
草飼 望
草飼 望
うん、1年の時にそんな話を聞いたよ
草飼 望
草飼 望
あのソファお昼寝には最適だと思わない?
茨野 透花
茨野 透花
けど、まだ整理中かもしれないのに、使ったらまずいんじゃない
草飼 望
草飼 望
だとしたら鍵を開けっ放しにしたりしないよ。
見つかった時は、正直に謝る! ね、お願い!
茨野 透花
茨野 透花
もう、とりあえず少しだけよ?


 そう言って私たちは、ふかふかのソファに沈み込むように座る。

草飼 望
草飼 望
この寝心地はいいね!
やっぱりここにしよう!
茨野 透花
茨野 透花
首もいたくなったりしないし、いいかもしれないけどー……
草飼 望
草飼 望
ほら、もう透花眠くなってるでしょ?
ここに決めちゃおうよ
茨野 透花
茨野 透花
うーん、見つかったら私は正直に話すからね
草飼 望
草飼 望
もちろん! じゃあ、ここは俺と透花だけの秘密だからね


 望は人差し指を立てて口元にあて、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。

茨野 透花
茨野 透花
えぇ、秘密よ
茨野 透花
茨野 透花
(こんな風に期待ばかりさせて、望は私のことをどんな風に思っているの? けど、誰にでも優しいんだから、あんまり深く考えちゃだめよね)


 目をつむってそんなことを考えていると、頭の後ろに彼の腕が差し込まれる。

草飼 望
草飼 望
今日は2人だけの睡眠スポット誕生日だから、特別に腕枕うでまくら
茨野 透花
茨野 透花
そんな、しびれちゃうでしょ。いいわ


 私が頭を浮かせようとすると、彼はそれを許すまいと腕を曲げて手のひらで私の頭をおさえる。

草飼 望
草飼 望
いーの。少しは甘えてよ
茨野 透花
茨野 透花
(これは反則でしょ!? 恥ずかしくて寝れるわけないじゃない!?)


 そんなことを思っていたのもつかの間、私も望もいつの間にか眠りについていた。



 ふかふかのソファは寝心地が良すぎて、この後、私たちは大幅に授業に遅刻していくこととなった。