その日の朝、目覚ましが鳴るよりも早くに望からメッセージが届いた。
今までになかった急なメッセージに驚き、私は急いで支度をして学校へ向かった。
いつもの登校時間より1時間も早く来たのに、すでに教室では望が疲れた様子で眠っていた。
私は声をかけずに隣に座ったが、彼はすぐに目を覚まして苦笑する。
ずいぶん疲れていたようで、彼はお願いを言い終える前に深い眠りに入ってしまった。
少しずつでもいいから変えていこうと、私は再び心に決める。
少しでも彼の役に立てるように。
みんなが登校してくるころには望は目を覚まし、いつも通りの綺麗な笑顔を見せてくれる。
お昼休みにご飯を食べ終われば、元気に私の手を引いて屋上へと連れて行ってくれた。
そう言って彼はまた私の手を引いて嬉しそうに歩きはじめる。
朝のことが嘘のように感じるけど、今までにもあって隠していただけなのかもしれない。
彼は気を取り直すように、ぱちんっと手を鳴らし、少し速足で歩きはじめる。
図書室の端にある使われてない自習スペースや校舎裏の桜の木の下、人通りの少ない階段の踊り場、冗談なのか保健室にまで連れていかれた。
ドキッ
望の知っている場所を回り終え、私たちの校内探索が始まる。
見慣れた校舎内を歩き続け、良さそうな場所を観察する。けど、見つからないように慎重に移動した。下手をしたら人が集まってしまうから。
それはなんだかかくれんぼみたいで、私はお昼寝スポットさがしを遊びのように楽しんでいた。
やがて、望がとある部屋を見つけて足を止める。
ドアノブに手をかけて押せば簡単に開き、部屋の中を覗ける。
服や雑貨の入った段ボールがいくつか、そして、部屋の一番奥には綺麗な状態のソファが置かれていた。
そう言って私たちは、ふかふかのソファに沈み込むように座る。
望は人差し指を立てて口元にあて、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。
目を瞑ってそんなことを考えていると、頭の後ろに彼の腕が差し込まれる。
私が頭を浮かせようとすると、彼はそれを許すまいと腕を曲げて手のひらで私の頭をおさえる。
そんなことを思っていたのもつかの間、私も望もいつの間にか眠りについていた。
ふかふかのソファは寝心地が良すぎて、この後、私たちは大幅に授業に遅刻していくこととなった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。