第50話

story48
1,335
2020/12/26 03:25

私が目覚めて5日。


今日は夏祭り。


ホントなら超ウッキウキで家出てたはずなのに……

天瀬あなた
あのー、どうしてもだめですかね?ちょっっと行ったらすぐ戻るんで…
医者
医者
だめです(^^)
天瀬あなた
くそ…この医者バチクソ頭硬え…ほんとうざ…
医者
医者
スチャッ←謎の液体が入った点滴
天瀬あなた
まっことに申し訳ありませんでしたぁぁッッッ!!

だめだ。


今年も夏祭り行けない…


昨日イツメンが来て、


玄弥の無事と、詐欺師の逮捕が告げられた。


へっ私のおかげで逮捕できたんだぜいって


みんなに自慢してたら。


私が倒れた後に無一郎が助けてくれたらしい。

時透無一郎
時透無一郎
玄弥を信じてなかった訳じゃないけど、ちょっと心配だったから。

無一郎いなけりゃ


私は誘拐されてたかもしれない。 


改めて親友に感謝だ。


私が眠っていたのは丸1日。だけ。


ほんとにどうってことなかった。


けど、誘拐されかけたのは事実。


責任を感じていたらしいおはぎ先生は


ずっと私に付き添ってくれていたらしい。














ふと現実に意識を向けると、


遠くで太鼓の音が聴こえる。


ああ、祭りがそろそろ始まるのか。


そういえば今年は花火が上がるとか言ってたな。


それくらいは、ここから見えたらいいなぁ…







コンコン





1人寂しく窓を見つめていたら突如聞こえたノック音。


みんなは祭りに行ってるはずだし、誰…?

不死川実弥
不死川実弥
天瀬ェ、いるかァ…?
天瀬あなた
あらおはぎ先生いらっしゃい
不死川実弥
不死川実弥
お前退院したら覚えとけよォ
天瀬あなた
死亡フラグ建設完了☆←


どうやら夏祭りに行けなかった私のために


わざわざお菓子を買ってきてくれたらしい。


天瀬あなた
先生は夏祭り行かんのん?
不死川実弥
不死川実弥
そんなのではしゃぐような歳じゃねぇよ
天瀬あなた
そっか、もうオジサンだもんね!←
不死川実弥
不死川実弥
おかしいなァ、俺はまだ23なんだがなァ?
天瀬あなた
えぇー、全然そんなふうに見えない……
不死川実弥
不死川実弥
絞め殺してやろうか←
天瀬あなた
申し訳ありませぬ←←

内容は怖いけど


先生とこうして楽しく話せたなら、


夏祭り行けなくても良かったかな。


そう思ってた時。


ふと、あの夢を思い出す。


あの、「天月あなた」の夢。


あの夢には無一郎のそっくりさんも


宇髄先生のそっくりさんも、


おはぎのそっくりさんもいたなぁ……


「天月あなた」も、私にそっくりだった。


あんなにも具体的で、前にも見たことある感じ。


なによりあの詐欺師が言っていた「元鬼狩り」。











「天月あなた」が「天瀬あなた」の前世だって、


否定するほうが難しい。


じゃあ、あの夢に出てきた


無一郎も師匠も風柱も、


みんなそれぞれの、前世?


























































天瀬あなた
風柱、さん……
不死川実弥
不死川実弥
っ!


思わず呟いてしまったその言葉に、


目を大きく見開いて固まる先生の反応は、


その事実を物語っていて。


彼は私と同じ元鬼狩り。


鬼殺隊の風柱だった。


そして、私が前世で想いを寄せていた人……


テストでは全く頭回らないくせに、


こういうときだけ頭の回転は早くて。






今の私が持っている先生への気持ちすら


理解してしまった。







私は、今もこの人が………



恥ずかしくなって、


窓の外を見るふりして顔をそらす。

天瀬あなた
そろそろ、花火始まりますかね…
不死川実弥
不死川実弥
………

はっ馬鹿だなぁ私。


あんなこと言ったら、


こんな風に気まずくなることくらい


分かっていたはずなのに。


私達の前世は、


思い出してもいいことなんて無いのに……



不死川実弥
不死川実弥
……あの後
天瀬あなた
え?
不死川実弥
不死川実弥
お前が……天月・・が、死んだ後……
天瀬あなた
……!

先生の口から聞こえた


その懐かしい・・・・呼び方にハッとする。


先生の方に顔を向けると、


上を向いて、


顔を隠すように手で覆っていた。


そしてそのまま話を続ける。
不死川実弥
不死川実弥
1番悲しんでたのは時透……無一郎、だ。
天瀬あなた
……は?無一郎は……あの時にはもう……
不死川実弥
不死川実弥
生きてた。あいつは、生きてたんだよ
天瀬あなた
嘘…
不死川実弥
不死川実弥
嘘じゃねェ。アイツは、アイツの兄ちゃん殺した鬼を自力で倒して重症を負った所をあまね様に助けられた。
天瀬あなた
あまね様……


その人はたしか、鬼殺隊の長みたいな人…


そうだ、御館様の奥さんだ。
不死川実弥
不死川実弥
あァ。ただ、しばらく記憶を失っててな……
不死川実弥
不死川実弥
天月が死ぬ、少し前に記憶を取り戻していた。
天瀬あなた
じゃあ、その時には……!
不死川実弥
不死川実弥
お前の事も思い出していただろうな……お前への、気持ちも…
天瀬あなた
気持ち?
不死川実弥
不死川実弥
アイツは…時透は、お前が好きだったから…
天瀬あなた
…………

そっか……


無一郎、前世から私の事……

不死川実弥
不死川実弥
だから、お前が死んだって聞いたとき、また記憶を失くしてしまうんじゃねぇかってほどショックを受けててよォ……
不死川実弥
不死川実弥
すっけぇ、泣いてた……
天瀬あなた
っごめん、無一郎……

私は前から無一郎のこと


男の子として好きでは無かったけど、


確かに私の大切な人だった。


好きな人だった。


例えその好き・・の意味が違っても、


大切な人が亡くなったと知った時の哀しみは、


私もよく知ってる……


あの日の絶望は、忘れられない……


あの日流した、涙も………





不死川実弥
不死川実弥
俺は、泣けなかった。
天瀬あなた
え?
不死川実弥
不死川実弥
宇髄も時透も、お前と仲良かった竈門達も泣いていたのに、俺は涙が全く出てこなかった。
天瀬あなた
そりゃまぁ、そうでしょうね……

私がこの人に

私がこの人に抱く感情と


この人……不死川さんが


私に向ける感情は全く違う。


そんな事は、とっくに分かってる……





ドーン ドーン



思わず下がっていく


私の気分とは反対に、


窓の外では光の花が


夜空へ上がってゆく。


………綺麗だなぁ









ドォーン







不死川実弥
不死川実弥
った…
天瀬あなた
え?なんて??



花火と重なって、


声が聞こえない。











































































不死川実弥
不死川実弥
俺も、お前が好きだったのになァ……



































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