私達は、建物の隙間を進んでいる。
邸宅へ最短距離で行くためと、敵から隠れるためだ。
口ではそう言っているが、進むのもやっとなのは一目瞭然。
…早くしんぺい神さんの所に行かないと。
振り返ると、三名の敵兵がこちらに向かってきていた。
即座に回れ右する敵兵達。
彼らは慌てた様に、元きた道を走って行った。
その口真似が可笑しくて、私達はこんな状況なのに笑ってしまった。
地響きの様な音と共に、すぐ隣の路地を敵戦車が通っていく。
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チーノside
俺は辺りの様子を探りながら、チラリとルキナさんを見た。
ルキナさんは大先生に声を掛け、励ましながら歩いている。
…振られはしたが、俺はやっぱり。
彼女の言葉を掻き消すように響く轟音。
振り返った俺達が見たのは、後ろの建物を轢き崩して来る敵戦車の姿だった。
明らかに発見されている。
砲身がゆっくりとこちらを向く。
負傷中の大先生がいる今、回避は難しい。
…一か八か。
叫ぶと同時に、俺はルキナさんを抱えて路地の脇に跳んだ。
直後、俺達のいた場所に砲弾が炸裂した。
石畳の破片が飛散し、俺を掠める。
よかった。
視界の端に映ったのは、戦車から突き出された機関銃。
銃口は、俺に狙いを定めていた。
長い長い銃声が響き、俺の目の前に朱の飛沫が散った。
しかし、銃弾は俺には当たらず。
俺を庇う様に両手を広げた彼女の身体を、引き裂いていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。