第29話

舞い散る朱の
289
2021/10/28 08:21 更新
私達は、建物の隙間を進んでいる。
邸宅へ最短距離で行くためと、敵から隠れるためだ。
ルキナ
鬱さん、脚はどんな感じ?痛むなら、もう一度鎮痛剤を打つけれど…
鬱先生
大丈夫やで。ありがとうな
口ではそう言っているが、進むのもやっとなのは一目瞭然。
…早くしんぺい神さんの所に行かないと。
敵兵
…おい、そこで何をしている‼︎
振り返ると、三名の敵兵がこちらに向かってきていた。
チーノ
っ御三方!忘れ物してますよ?
チーノ
取りに「戻ってください」!
即座に回れ右する敵兵達。
彼らは慌てた様に、元きた道を走って行った。
ルキナ
…凄い「スキル」ね
チーノ
いえいえ。…この能力、ホンマに注意深いやつには効かなくて
鬱先生
前トントンに使って即バレしとったな
シャオロン
「嘘吐けぇ‼︎」って
その口真似が可笑しくて、私達はこんな状況なのに笑ってしまった。
地響きの様な音と共に、すぐ隣の路地を敵戦車が通っていく。
ルキナ
…急ぎましょう
シャオロン
わかった
………………………………………………………
チーノside
俺は辺りの様子を探りながら、チラリとルキナさんを見た。
ルキナさんは大先生に声を掛け、励ましながら歩いている。
…振られはしたが、俺はやっぱり。
チーノ
好きやなぁ
シャオロン
チーノ、なんか言ったか?
チーノ
いえ、なんでも
ルキナ
さ、もうすぐ見えてくるわよ。後少しだけ…
彼女の言葉を掻き消すように響く轟音。
振り返った俺達が見たのは、後ろの建物を轢き崩して来る敵戦車の姿だった。
明らかに発見されている。
シャオロン
ッ、チーノ‼︎
チーノ
無理ですよ!中のやつに、声が届かないと…!
砲身がゆっくりとこちらを向く。
負傷中の大先生がいる今、回避は難しい。
…一か八か。
チーノ
大先生、「走れます」よね⁉︎
鬱先生
お、おう‼︎
叫ぶと同時に、俺はルキナさんを抱えて路地の脇に跳んだ。
直後、俺達のいた場所に砲弾が炸裂した。
石畳の破片が飛散し、俺を掠める。
チーノ
ルキナさん、大丈夫ですか⁈
ルキナ
ええ…チーノさんは?
チーノ
俺も大丈夫です。…シャオロン、大先生!生きてます⁈
シャオロン
生きとるで!
鬱先生
僕も大丈夫や!
よかった。
チーノ
このまま、邸宅まで!早く‼︎
シャオロン
わかっ…
鬱先生
チーノッ、後ろ‼︎
チーノ
え?
視界の端に映ったのは、戦車から突き出された機関銃。
銃口は、俺に狙いを定めていた。
チーノ
…やば…
長い長い銃声が響き、俺の目の前に朱の飛沫が散った。

















 

しかし、銃弾は俺には当たらず。








チーノ
ルキナ…さん…?




















俺を庇う様に両手を広げた彼女の身体を、引き裂いていた。
雪国
次回をお楽しみに。
雪国
それでは、また。

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