第2話

第1章 終わりと始まりの月 第1話
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2026/05/24 00:39 更新
沫が目を覚ますと日は沈みかけていて、夕日が部屋に差し込んでいた。どこか見覚えのある景色に感じたが、モヤが掛かったように思い出せなかった。
そっとドアをあけ廊下にでる。そこには誰もいなかった。
ただ花瓶の飾られた小さな棚だけがあった。
沫の部屋は端にあったようで迷わずに下の階に降りられた。
店主
おや、沫さん!起きたんですね!ちょうど晩御飯の用意ができたので、良かったらどうですか?
沫
それじゃあ……いただきます
出されたのは具沢山のスープ。沫は口いっぱいに頬張った。
沫
この味……なんだか、懐かしい気がする…………
店主
そうでしょう?このスープはエリュシアの郷土料理なんですよ!
沫
そうなんですね……
郷土料理だから懐かしい感覚がする。それも間違ってはないかもしれないが……
『本当に昔から馴染みのある味』
そんな気がしたが、よく分からなかった沫はまた口いっぱいにスープを頬張った。

晩御飯を食べ終わってから沫は、布団の中でぐるぐると考えていた。
兄はどこに行ってしまったのか。自分は何を忘れてしまったのか。スープの異常なほどの懐かしさはなんだったのか。
何も分からないまま、気づけばまた夢の中へと転がり込んでいた。
朝、鳥のさえずりで目を覚ました沫。
沫
おはよう……お兄ちゃ――
その時ハッとして、声が詰まった。
兄はここにはいない。涙がこぼれそうになりながらも、堪えて顔を洗ってから下に降りる。
店主
おはようございます、沫さん!
沫
おはようございます、店主さん
店主
あの後イグニス様に連絡したのですが、良ければ一緒に朝食にしようと仰っていましたよ?
沫
そうなんですか?それなら是非
店主
そうと決まれば早速行きましょう!イグニス様が待ってますよ〜!!
沫
あ、ちょっと……店主さん……!
勢いよく飛び出して行った店主を見て思わず呆れてしまった。
仕方ないと思いながら外への扉を開ける。
そこには賑やかな声が響く広場があった。鍛冶屋や、陶芸屋……さすが火の国と言ったところか、火を扱う物が沢山ある。

とても熱気があり、沫は思わず見入っていた。
大きな楽しみとほんの少しの懐かしさを抱えて、とりあえず歩き始めた。

しばらく歩き続けて、沫は今更自分が迷子になっていることに気づいた。『神様なのだから豪華な家だろう』なんて考えで、人の少ない方へ来ていたのだ。帰る方向すら分からず、途方にくれていたが――
草むらがガサガサ揺れ、足元で
???
ぷぇ……
そんな可愛い声がどこからか聞こえた。
小さな声を頼りに見つけ出した声の主は『スライム』だった。
ただ、今まで様々な世界を旅した沫にとって、過去一可愛いスライムだった。丸くてもちもちした見た目。くりくりの目。あまりの可愛さに、思わず撫でてしまった。
???
んぇ……食べないで……僕は美味しくないよ……!?
沫
…………?!
さすがに喋るスライムは初めてで驚いた。口のようなものは見当たらないが……どこにあるのだろうか……?
???
僕、お腹がすいちゃったんだ……何か……なにかないかな……?
沫
えっと……勘違いかもだけど、スライムって草とか食べれるんじゃないかな……?
どの世界のスライムも、雑食でなんでも食べる性質だった。この世界ではどうなのかは分からないが……
???
あ!!そうだ!そうだった〜!僕、葉っぱ食べれるじゃん!
沫
やっぱり……
???
どうして気づかなかったんだろう?!ありがとう〜!えっと君は……
沫
私は沫だよ
シアン
シアン
沫〜!よろしくね!僕はシアンだよ〜!
見た目に似合わない、かっこいい名前だった。
沫
かっこいいね……!
シアン
シアン
そうでしょ!でもどういう意味かわかんないんだ  みんな名前にかっこいい意味があるんでしょ?
沫
うーん……綺麗な水色のことをシアンって呼ぶんじゃなかったかな?
シアン
シアン
そーなの?!そっかぁ〜!!僕、綺麗な水色なの?
沫
あ、そうか、自分の色見えないよね  とっても綺麗な水色だよ!海みたいに!
シアン
シアン
やったぁ〜!!
シアンのぷるぷるな体が日光に反射してキラキラと輝いていた。
沫
あ、そういえば……!私迷子になってたんだよ。イグニス様に呼ばれてるんだ
シアン
シアン
そうなの〜?僕、案内するよ!僕は物知りさんだからね!!
沫
……そっか、ありがとう
シアン
シアン
ほらほら〜!こっちだよ〜!
シアンは沫の方を振り返りながらぴょこぴょこと進んで行った

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