来た道を引き返す。
帰りも魔物が絶えなく襲って来るので、周囲に結界を張る。
残りの魔力は……あと、1000くらいしかないかな。
結界張るの、大変だったもん。
少し歩みのスピードを速くする。
おらふくんが皮袋に入れた魔石を数えながら言う。
魔石は、売ったらお金になるし魔術具の材料にもなるので集めている。
確かに、結構倒したよね。
あんまりたくさん来ると魔力を食われるから嫌なんだけど……
いや、そんな当たり前のように言われましても。
どういうこと?
俺の魔力に引き寄せられてる…って、俺呼んだ覚え
なんてないんだけど?
やってみるかぁ…
魔力もあんまり残ってないから無駄に戦いたくないし。
外に漏れないように…ってことは、自分の内側に押し込めるイメージ?
目を閉じて魔力の流れを見る。
騎士の人も断言してるし、これで大丈夫かな。
魔力の制限は随分と効果があったらしく、それきり
魔獣に襲われることはなくなった。
逆に、今までどれだけ魔力を放ってたんだよ俺……
森を出た頃には、太陽は既に沈みかけていた。
ほんと、今日中に終わってよかったぁ…
外で寝泊まりとか、めんどくさいもん。
まぁ、魔王討伐の旅に出たらそんなことも言ってられないんだろうけど。
魔王討伐、か………
倒せば、俺らは現実世界に帰れるんだよね。
……学校の卒業までが、あと2年。
それに加えて魔王討伐の旅なんてしてたら、帰れるのはいつになるんだろう。
別に、この世界が嫌いなわけではない。
みんなといる時間は、現実世界よりも楽しいと感じる時もある。
でも、俺には……やらなきゃ行けないことがあるから。
俺に期待している、お父さんとお母さんもいる。
やっぱり、少しでも早く帰らないといけない。
………現実世界でも、みんなと会えたらいいな…
やがて学校の前まで辿り着く。
魔力の制限のやり方も教えてもらっちゃったしね。
正直、結構楽しかったし。
そう言って騎士の人は去っていった。
校門を潜って学校の中へとつながる階段を登る。
『…………………………、………』
え?
『プレイヤー1への接続、完了』
これ……システム音声?
『対象を強制テレポートします』
その声のした瞬間、足元に魔法陣が浮かび上がる。
突然のことに戸惑っていると、視界が歪んでくる。
あわせて、めまいのような感覚。
さっき、テレポート…って言ってたよね。
ってことは、これはテレポート魔法……?
みんなの声が遠下がっていく。
どうにか止めようとするも、魔法陣を消す魔法なんて知らない。
そうこうしているうちに、俺の視界は白い光に包まれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!