森本side
「甘えろ」って、みんな簡単に言うけど。
あれ、難しくない?
どうやって甘えるの。
昨日泣いたのは、限界だったから。
でも今日は、限界じゃない。
普通の日。
だからこそ、試してみる。
“自分から甘える”。
楽屋。
ジェシーがソファでストレッチしてる。
北斗は台本読んでる。
樹はスマホ。
(誰いく?)
一番ハードル低そうなのは……
慎太郎「……樹」
樹「ん?」
顔を上げる。
心臓うるさい。
慎太郎「ちょっと隣座っていい?」
沈黙。
樹、固まる。
樹「は?」
ジェシーが吹き出す。
ジェシー「何そのお願いの仕方!」
北斗も顔を上げる。
北斗「敬語みたいになってる」
うるさい。
慎太郎「いいから!」
樹が横をぽんぽん叩く。
樹「来いよ」
座る。
……近い。
何これ、めっちゃ恥ずい。
慎太郎「……特に用はない」
樹「甘える練習だろ」
バレてる。
慎太郎「なんで分かるんだよ」
樹「顔」
即答。
ジェシーが立ち上がる。
ジェシー「俺も混ざる!」
慎太郎「増やすな!」
でももう片側に座られる。
挟まれた。
北斗がゆっくり近づく。
北斗「で、何してほしいの」
直球すぎる。
慎太郎「何してほしいって……」
分からない。
ただ、隣にいてほしいだけ。
慎太郎「……ちょっと、寄りかかってもいい?」
言った。
言えた。
一瞬、全員静止。
ジェシー「待って待って録音する」
慎太郎「すんな!」
樹が肩を貸す。
樹「ほら」
北斗が反対側に座る。
北斗「時間制限なしな」
慎太郎、ゆっくり体を預ける。
あったかい。
鼓動が少し落ち着く。
ジェシーが頭をくしゃっと撫でる。
ジェシー「甘えられてる〜!」
慎太郎「騒ぐな!」
でも嫌じゃない。
むしろ、安心する。
北斗が小さく言う。
北斗「昨日より顔、柔らかい」
樹「成功じゃん、練習」
慎太郎、目を閉じる。
甘えるって、
泣くことだけじゃない。
隣に座ること。
寄りかかること。
それだけでいいんだ。
慎太郎「……たまになら、してもいい?」
ジェシー「毎日でもいい!」
樹「調子乗るな」
北斗「頻度は本人に任せる」
笑いが起きる。
胸がじんわりあったかい。
甘えるの、悪くない。
少しずつでいい。
ちゃんと、練習していけばいい。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。