森本side
最近、ずっと胸の奥がざわざわしてた。
大きな失敗はしてない。
怒られたわけでもない。
でも。
リハで自分だけ何回も止められた日。
収録で思ったように言葉が出なかった瞬間。
「大丈夫?」ってスタッフに気を遣われたこと。
全部、些細なこと。
でも“些細”が重なると、静かに削られる。
(俺、足引っ張ってないかな)
そんな考えが、夜になると大きくなる。
でも言わない。
だって俺は、明るい末っ子だから。
その日も、楽屋のドアを開けた瞬間に笑う。
慎太郎「おはよー!今日テンションMAX!」
ジェシー「朝から元気すぎ!」
笑いが起きる。
それでいい。
でも北斗の視線は、外れない。
収録中。
一瞬、言葉に詰まる。
空気が止まる。
慎太郎「ごめん、もう一回!」
笑いに変える。
ジェシーがすぐ被せる。
ジェシー「慎太郎今日サービス多め!」
助けられる。
そのたびに思う。
(俺、何やってんだよ)
収録後、楽屋。
一気に静かになる。
ソファに座った瞬間、息が深く漏れた。
その横に、北斗が座る。
北斗「今日さ」
慎太郎「ん?」
北斗「限界近い顔してる」
心臓が跳ねる。
慎太郎「してないって」
北斗「してる」
即答。
逃げ道がない。
反対側にジェシーが座る。
ジェシー「慎太郎」
名前を呼ばれただけで、喉が詰まる。
ジェシー「最近さ、俺らに頼ってないよね」
慎太郎「頼ってるって」
北斗「どこが」
声が優しいのに、鋭い。
北斗「お前、しんどい時ほど笑う癖ある」
図星。
でも認めたら崩れそうで、笑う。
慎太郎「考えすぎだって」
ジェシーが肩に腕を回す。
ぎゅっと強い。
ジェシー「なぁ」
少しだけ声が低い。
ジェシー「お前さ、末っ子なんだから元気なフリしなくていいんだよ」
その言葉で、胸の奥が揺れる。
北斗「俺ら、お兄ちゃんだろ」
沈黙。
視界が少し滲む。
(やめろよ)
優しくしないで。
今優しくされたら――
慎太郎「……迷惑かけたくない」
ぽろっと零れた。
ジェシー「は?」
北斗「誰に」
慎太郎「俺がちゃんとしてなきゃって思って」
声が震える。
止められない。
慎太郎「最近、全然うまくできなくて」
喉が痛い。
慎太郎「俺、足引っ張ってない?」
静まり返る。
その瞬間、ジェシーが強く抱き寄せた。
ジェシー「バカか」
震える声。
ジェシー「誰がそんなこと思うんだよ」
北斗がそっと前に回る。
目が真っ直ぐ。
北斗「お前がいないSixTONES、想像できる?」
その言葉で、何かが切れた。
目から涙が落ちる。
止めようとしたのに、止まらない。
慎太郎「でも……」
北斗「でもじゃない」
優しく遮る。
北斗「完璧じゃなくていい。弱い日あっていい」
ジェシー「甘えろって言ってんの!」
背中を強くさすられる。
あったかい。
苦しくて、あったかい。
慎太郎「……しんどかった」
声が崩れる。
慎太郎「ちょっとじゃない、結構しんどかった」
涙がぽろぽろ落ちる。
ジェシーが頭をくしゃっと撫でる。
ジェシー「それ言えたじゃん」
北斗「それで十分」
肩に手が乗る。
逃げなくていい空間。
慎太郎「……甘えていい?」
泣きながら聞く。
ジェシー「当たり前」
北斗「今さら許可取るな」
小さく笑う。
涙混じりの、弱い笑い。
でも本物。
ジェシー「今日から俺らに定期的に甘える制度ね」
北斗「義務」
慎太郎「制度って何だよ……」
声がまだ震えてる。
でも胸は軽い。
末っ子でよかった。
強くなくても、ここにいていい。
涙が止まる頃には、ちゃんと呼吸ができていた。
- リクエスト











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!