港のすぐ近くの薄暗い倉庫
結局、報酬に目が暗み虎探しを手伝うことになった中島
木箱の上に膝を抱え座り込んでいる
あなたの下の名前は木箱に寄りかかって立ちボーッと空を眺めている
太宰はというと木箱に腰掛け暗い中で本を読んでいる
本には〝完全自殺読本〟と書かれている
空を見上げながらハッキリとそう答えるあなたの下の名前
一体何を見つめているのだろうか
その表情からは何も読み取れない
チラリと太宰の方を見る
そしてまた空を見上げる
雲間から月が顔を覗かせる
月明かりが倉庫内を薄らと照らす
ガシャンッッ!!
音に驚き木箱から転げ落ちる中島
パタンッ
太宰は読んでいた本を閉じ静かに話し始める
立ち上がり腰掛けていた木箱から飛び降りる太宰
いつの間にか太宰の横まで移動していたあなたの下の名前が中島を見つめている
雲が晴れていき月明かりが中島を照らす
雲が完全に晴れ大きな満月が空へ浮かんでいる
それをただじっと見つめる中島
ドクンッ
突然苦しみ出す中島
そしてみるみる姿が変わっていく
目の前には巨大な白虎が
獲物を狙うようなギラギラとした目を向けている
バキバキガシャンッッ!!
勢い良く襲いかかってくる虎
攻撃を避け続ける二人
虎の攻撃を避けているといきなり腕を引かれ横抱きにされる
そのまま壁際まで下がっていく
太宰はあなたの下の名前を降ろし後ろに下がっているようにと言う
再び攻撃しようと距離を詰めてくる虎
〝人間失格〟
襲いかかって来た虎に太宰が触れる
強い光を放ったかと思うと人間の姿へと戻った中島
そのまま太宰の方へ倒れ込む
ポイッと手を離す太宰
倒れる寸前であなたの下の名前が支える
そしてゆっくり自分の膝に中島の頭を乗せ横にする
ホッとしているあなたの下の名前
だが納得いっていない様子の太宰
自分の言った言葉なのに納得いかないようだ
その様子に呆れてため息を吐く
すると聞き馴染みのある声が聞こえてきた
一枚の紙を突き出す
国木田の後ろには三人の人影が
能力名〝君死給勿〟
能力名〝超推理〟
ワシャワシャッと頭を撫でられ嬉しそうに目を輝かせているあなたの下の名前
ついでに飴を貰っている
能力名〝雨ニモ負ケズ〟
能力名〝独歩吟客〟
能力名〝人間失格〟
静かに膝の上で眠る中島を見つめる
能力名〝??〟
何時ものようにキレる国木田
その他、宮沢を除く社員全員が呆れている
それすらも気にしていない太宰
膝枕をされていたことに気づき顔を真っ赤にする中島
すぐに体を起こし飛び退く
自分の右手を見つめる
そこには大きなもふもふした毛と鋭い爪が
能力名〝月下獣〟
現実逃避するようにブンブンと右手を振り回す中島
中島に真実を伝える
最初こそ信じていなかったものの、獣化した右腕や武装探偵社と異能の存在により信じざるを得なかった
中島は一先ず今日は社宅に泊まることになり皆も帰っていく
中島を思うと気の毒で仕方ない
だが彼にとってこれが最前なのだろう
そう思いこれ以上は何も言わないでおく
たまに彼の反応が遅れることがある
恐らく考え事をしているのだろう
だが何を考えているのかは教えてくれないのでもう聞くのは諦めた
背を向け歩き始める太宰を見つめる
彼は社内の全員が知っているように自殺マニアだ
何故そんなに死にたいのかは知らないし別に興味もない
彼の過去も態々聞こうとは思わない
彼には彼なりの理由があるのだろうと思っている
でもこの時だけは…
いつもおちゃらけた姿の太宰が
何を考えているのか分からない謎の多い彼の背中が
小さく見えた
一人にさせたくないと思ってしまう自分がいる
無意識に太宰の袖を掴み引き止めていた
思っていたことをそのまま口に出してしまい焦るあなた
盛大な溜息にアタフタするあなたの下の名前
迷惑だったのだろうかと焦ってしまう
小さく聞こえるか分からないほどの声量
だがあなたの下の名前にはちゃんと聞こえたらしい
笑顔で返事をし太宰の手を引き自宅へと招くのだった




















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。