第4話

三羽
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2025/07/15 13:36 更新
港のすぐ近くの薄暗い倉庫

結局、報酬に目が暗み虎探しを手伝うことになった中島

木箱の上に膝を抱え座り込んでいる

あなたの下の名前は木箱に寄りかかって立ちボーッと空を眺めている

太宰はというと木箱に腰掛け暗い中で本を読んでいる



中島敦
中島敦
太宰さん…何を読んでるんですか…?
(なまえ)
あなた
聞かなくていいと思うよ…
太宰治
太宰治
良い本
中島敦
中島敦
こんな暗い中でよく読めますね…
太宰治
太宰治
目はいいから
本には〝完全自殺読本〟と書かれている
太宰治
太宰治
それに内容はもう既に頭に入っているし
中島敦
中島敦
じゃあなんで読んでるんですか…?(汗)
太宰治
太宰治
何度呼んでも良い本は良い
中島敦
中島敦
……
中島敦
中島敦
本当に虎はここに現れるんでしょうか…
(なまえ)
あなた
現れるよ
中島敦
中島敦
空を見上げながらハッキリとそう答えるあなたの下の名前

一体何を見つめているのだろうか

その表情からは何も読み取れない
(なまえ)
あなた
心配しないで大丈夫だよ
(なまえ)
あなた
ね?先輩
チラリと太宰の方を見る

そしてまた空を見上げる
太宰治
太宰治
あぁ、虎が現れても私達の敵じゃないよ
太宰治
太宰治
こう見えても、武装探偵社の一隅だ
中島敦
中島敦
凄い自信ですね…
中島敦
中島敦
なんか羨ましいです…
中島敦
中島敦
僕なんか孤児院でもずっとダメな奴って言われてて…
中島敦
中島敦
その上今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で……
中島敦
中島敦
確かにこんな奴が何処で野垂れ死んだって誰も気にしない……
中島敦
中島敦
いや、いっそ虎に食われて死んだ方が……
(なまえ)
あなた
敦くん
(なまえ)
あなた
人がどう言おうがどう思おうがその人の勝手だ
(なまえ)
あなた
大切なのは自分がどうしたいか
(なまえ)
あなた
誰かに決められたように生きるなんてつまらないだろ?
(なまえ)
あなた
コレは君の人生なんだから
(なまえ)
あなた
どうせ未来なんて誰にも分からないんだ
(なまえ)
あなた
自分が後悔しないようにすればいい
中島敦
中島敦
あなたの下の名前くん…
(なまえ)
あなた
僕は後悔だけはしたくないんだ……
太宰治
太宰治
(なまえ)
あなた
さて…時間ですよ?
雲間から月が顔を覗かせる

月明かりが倉庫内を薄らと照らす

ガシャンッッ!!
中島敦
中島敦
ッッ?!!
中島敦
中島敦
うわぁッ!!
音に驚き木箱から転げ落ちる中島
中島敦
中島敦
い、今奥で物音がッ…!
太宰治
太宰治
そうだね
中島敦
中島敦
きっと奴ですよ!!
(なまえ)
あなた
きっと風で何か落ちただけだよ
中島敦
中島敦
人食い虎だ!!
中島敦
中島敦
僕を食いに来たんだ!!!
パタンッ

太宰は読んでいた本を閉じ静かに話し始める
太宰治
太宰治
落ち着きたまえ、敦くん
太宰治
太宰治
虎はあんなところからは来ない
中島敦
中島敦
どうしてわかるんですか!!
太宰治
太宰治
そもそも変なのだよ
太宰治
太宰治
経営が傾いたからってそんな理由で養護施設が児童を追放するかい?
太宰治
太宰治
大昔の農村じゃないんだ
太宰治
太宰治
いや、第一に
太宰治
太宰治
経営が傾いたのなら、一人二人追放した所でどうにもならない
太宰治
太宰治
半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ
(なまえ)
あなた
……
立ち上がり腰掛けていた木箱から飛び降りる太宰

いつの間にか太宰の横まで移動していたあなたの下の名前が中島を見つめている

雲が晴れていき月明かりが中島を照らす
中島敦
中島敦
何を言ってるんです…?太宰さん……
太宰治
太宰治
君がこの街に来たのが一週間前
(なまえ)
あなた
虎が街に現れたのも一週間前
太宰治
太宰治
君が鶴見の辺りにいたのが四日前
(なまえ)
あなた
同じ場所で虎が目撃されたのも四日前
中島敦
中島敦
……
雲が完全に晴れ大きな満月が空へ浮かんでいる

それをただじっと見つめる中島
太宰治
太宰治
国木田くんが言っていたろ?
太宰治
太宰治
武装探偵社は異能を持つやからの寄合だと
ドクンッ
中島敦
中島敦
ッッ!
中島敦
中島敦
ウァァアァァァアッッ!!!
突然苦しみ出す中島

そしてみるみる姿が変わっていく
太宰治
太宰治
あまり知られていないが
太宰治
太宰治
この世には異能の力を持つものが少なからずいる
太宰治
太宰治
そしてその力で成功する者もいれば…
太宰治
太宰治
力を制御出来ずに身を滅ぼす者もいる
目の前には巨大な白虎が

獲物を狙うようなギラギラとした目を向けている
(なまえ)
あなた
おそらく、施設の人は虎の正体を知っていたが
(なまえ)
あなた
君だけに教えなかった
(なまえ)
あなた
君だけが分かっていなかったんだね
(なまえ)
あなた
君も異能の力を持つものだよ
中島敦
中島敦
グルルル…
太宰治
太宰治
写し身に奇獣を宿す月下の能力者
中島敦
中島敦
ガァァッッ!!
バキバキガシャンッッ!!

勢い良く襲いかかってくる虎

攻撃を避け続ける二人
(なまえ)
あなた
凄い力ですね
太宰治
太宰治
人間の首くらい簡単にへし折れるね
(なまえ)
あなた
ウワッ?!
(なまえ)
あなた
だ、太宰さんッ?!
太宰治
太宰治
ちょっと失礼
虎の攻撃を避けているといきなり腕を引かれ横抱きにされる

そのまま壁際まで下がっていく
太宰治
太宰治
少し下がっててね
(なまえ)
あなた
コクン
太宰はあなたの下の名前を降ろし後ろに下がっているようにと言う
中島敦
中島敦
ガオォォ!!!
再び攻撃しようと距離を詰めてくる虎
太宰治
太宰治
虎に食い殺される最後というのもなかなか悪くないが…
太宰治
太宰治
まだ守るべき者もいる
太宰治
太宰治
それに君では私を殺せない
太宰治
太宰治
異能力…
〝人間失格〟

襲いかかって来た虎に太宰が触れる
太宰治
太宰治
私の能力は凡る他の異能力触れただけで無効化する
強い光を放ったかと思うと人間の姿へと戻った中島

そのまま太宰の方へ倒れ込む
太宰治
太宰治
男と抱き合う趣味はない
(なまえ)
あなた
ッと
ポイッと手を離す太宰

倒れる寸前であなたの下の名前が支える

そしてゆっくり自分の膝に中島の頭を乗せ横にする
(なまえ)
あなた
怪我は特にないみたいですね
ホッとしているあなたの下の名前

だが納得いっていない様子の太宰
太宰治
太宰治
なんで膝枕〜!
太宰治
太宰治
私にもしておくれよ!
(なまえ)
あなた
男と抱き合う趣味はないんでしょう…
太宰治
太宰治
ムスッ…
(なまえ)
あなた
はぁ…
自分の言った言葉なのに納得いかないようだ

その様子に呆れてため息を吐く

すると聞き馴染みのある声が聞こえてきた
国木田独歩
国木田独歩
おい太宰、あなたの下の名前!
(なまえ)
あなた
国木田先輩!
太宰治
太宰治
遅かったねぇ、国木田くん
太宰治
太宰治
虎は捉えたよ
国木田独歩
国木田独歩
まさか、この小僧が?
(なまえ)
あなた
虎に変身する能力者です
国木田独歩
国木田独歩
全く…
(なまえ)
あなた
国木田独歩
国木田独歩
なんだこのメモは…!
一枚の紙を突き出す
太宰治
太宰治
十五番街の倉庫に虎が出る、逃げられぬよう周囲を固めろ
太宰治
太宰治
実に簡潔で良いメモだ
(なまえ)
あなた
いや、要点が抜けてますよ…
国木田独歩
国木田独歩
次からは事前に説明しろ
国木田独歩
国木田独歩
お陰で非番の奴等まで駆り出す始末だ
国木田の後ろには三人の人影が
国木田独歩
国木田独歩
後で皆に酒でも奢れ
宮沢賢治
宮沢賢治
おぉ〜
(なまえ)
あなた
賢治くん!
宮沢賢治
宮沢賢治
あなたの下の名前くん!✨️
(なまえ)
あなた
非番なのにごめんね
宮沢賢治
宮沢賢治
あなたの下の名前くんもですよねぇ?
(なまえ)
あなた
ボクは太宰先輩についてきただけですよ
与謝野晶子
与謝野晶子
なんだい、怪我人は無しかい
与謝野晶子
与謝野晶子
つまんないねぇ
能力名〝君死給勿〟
江戸川乱歩
江戸川乱歩
なかなかできるようになったじゃないか、太宰
江戸川乱歩
江戸川乱歩
まぁ僕には遠く及ばないけどねぇ
能力名〝超推理〟
(なまえ)
あなた
江戸川先輩!✨️
江戸川乱歩
江戸川乱歩
あなたの下の名前〜、君もできるようになったねぇ
(なまえ)
あなた
まだまだですよ
江戸川乱歩
江戸川乱歩
ハイ、ご褒美に飴をあげよう
(なまえ)
あなた
ありがとうございます!✨️
ワシャワシャッと頭を撫でられ嬉しそうに目を輝かせているあなたの下の名前

ついでに飴を貰っている
宮沢賢治
宮沢賢治
でもこの人どうします?
能力名〝雨ニモ負ケズ〟
宮沢賢治
宮沢賢治
自覚はなかったわけでしょう?
国木田独歩
国木田独歩
そうだな
国木田独歩
国木田独歩
どうする太宰
能力名〝独歩吟客〟
国木田独歩
国木田独歩
一応、区の災害指定猛獣だぞ
太宰治
太宰治
フフッ
太宰治
太宰治
実はもう決めてある
能力名〝人間失格〟
(なまえ)
あなた
静かに膝の上で眠る中島を見つめる

能力名〝??〟
太宰治
太宰治
うちの社員にする
宮沢賢治
宮沢賢治
おぉ〜✨️
(なまえ)
あなた
マジですか…
与謝野晶子
与謝野晶子
何それ…
江戸川乱歩
江戸川乱歩
やっぱり馬鹿だな、太宰は
国木田独歩
国木田独歩
はぁ?!!?!
国木田独歩
国木田独歩
何の権限があって貴様はァ!!💢💢
何時ものようにキレる国木田

その他、宮沢を除く社員全員が呆れている

それすらも気にしていない太宰
太宰治
太宰治
起きろ少年!!
中島敦
中島敦
うぅ……
(なまえ)
あなた
……
中島敦
中島敦
アレ…?
(なまえ)
あなた
目が覚めたかい?
中島敦
中島敦
ヒェッッ?!!///
(なまえ)
あなた
膝枕をされていたことに気づき顔を真っ赤にする中島

すぐに体を起こし飛び退く
太宰治
太宰治
敦くん
中島敦
中島敦
太宰治
太宰治
変身中の記憶は全く無しかい?
中島敦
中島敦
なんの事です…?
(なまえ)
あなた
でもまだ右手に残ってるね
中島敦
中島敦
右手…?
自分の右手を見つめる

そこには大きなもふもふした毛と鋭い爪が
中島敦
中島敦
……
中島敦
中島敦
え゙ぇ゙ぇぇえぇぇぇぇ?!!
能力名〝月下獣〟
中島敦
中島敦
え、え、え?!
中島敦
中島敦
ナニコレ、ナニコレ、何コレ?!!
現実逃避するようにブンブンと右手を振り回す中島
太宰治
太宰治
中島敦!!
中島敦
中島敦
ッッ!
太宰治
太宰治
今日から君は武装探偵社の一員だ
中島敦
中島敦
ぁぁ…
中島敦
中島敦
ハイィィ…???(汗)
(なまえ)
あなた
はぁ…敦くん実はね……
中島に真実を伝える

最初こそ信じていなかったものの、獣化した右腕や武装探偵社と異能の存在により信じざるを得なかった

中島は一先ず今日は社宅に泊まることになり皆も帰っていく
(なまえ)
あなた
敦くん、災難でしたね
(なまえ)
あなた
あれ程嫌っていた虎の正体が自分だったなんて
太宰治
太宰治
そうだね
(なまえ)
あなた
最初に人間の姿で接触したことが唯一の救いだったんでしょうか?
太宰治
太宰治
かもしれないね
太宰治
太宰治
少しいいかな?
(なまえ)
あなた
太宰治
太宰治
いつから彼の正体に気づいていたんだい?
太宰治
太宰治
私は茶屋での会話でだけれども
(なまえ)
あなた
僕もあの話で気づきました
(なまえ)
あなた
ただ、軍警から依頼が来て情報を見た時引っかかったんですよね
(なまえ)
あなた
あの虎が夜の間だけ目撃されている
(なまえ)
あなた
それもあの街中で
(なまえ)
あなた
あれほどの巨体で誰にも見つからずに移動なんて不可能に近い
(なまえ)
あなた
それで思ったんです
(なまえ)
あなた
この虎は異能力者で夜に姿を変えて暴れているのではないかって
(なまえ)
あなた
故意に行っているか無自覚なのかは分かりませんでしたけどね
太宰治
太宰治
そうかい
(なまえ)
あなた
僕からもいいですか?
太宰治
太宰治
なんだい?
(なまえ)
あなた
彼を本当に社員にする気なんですか?
太宰治
太宰治
(なまえ)
あなた
おそらく彼はそれを断ると思います
(なまえ)
あなた
それに社員の人達は皆納得していませんでしたし…
(なまえ)
あなた
まぁ貴方のことです
(なまえ)
あなた
何か案があるのでしょうけど…
太宰治
太宰治
まぁね
(なまえ)
あなた
はぁ…
中島を思うと気の毒で仕方ない

だが彼にとってこれが最前なのだろう

そう思いこれ以上は何も言わないでおく
(なまえ)
あなた
では僕はこれで
(なまえ)
あなた
おやすみなさい
太宰治
太宰治
(なまえ)
あなた
先輩…?
太宰治
太宰治
ッ…あぁ、おやすみ……
(なまえ)
あなた
たまに彼の反応が遅れることがある

恐らく考え事をしているのだろう

だが何を考えているのかは教えてくれないのでもう聞くのは諦めた

背を向け歩き始める太宰を見つめる
(なまえ)
あなた
彼は社内の全員が知っているように自殺マニアだ

何故そんなに死にたいのかは知らないし別に興味もない

彼の過去も態々聞こうとは思わない

彼には彼なりの理由があるのだろうと思っている

でもこの時だけは…

いつもおちゃらけた姿の太宰が

何を考えているのか分からない謎の多い彼の背中が

小さく見えた

一人にさせたくないと思ってしまう自分がいる
(なまえ)
あなた
太宰さん…
太宰治
太宰治
ッ!…えぇっと…あなたの下の名前くん…?
太宰治
太宰治
どうかしたのかい…?(汗)
無意識に太宰の袖を掴み引き止めていた
(なまえ)
あなた
ぁ…えっと……(汗)
(なまえ)
あなた
きょ、今日、泊まっていきませんか?
太宰治
太宰治
(なまえ)
あなた
ぁ…(汗)
(なまえ)
あなた
す、すみません…
(なまえ)
あなた
なんか…一人にさせたくないと言いますか……
(なまえ)
あなた
 って、いやッ…あのッ…//(汗)
思っていたことをそのまま口に出してしまい焦るあなた
太宰治
太宰治
ハァァ…
(なまえ)
あなた
ッ?!
(なまえ)
あなた
あ、あの…(汗)
盛大な溜息にアタフタするあなたの下の名前

迷惑だったのだろうかと焦ってしまう
太宰治
太宰治
君がいいのなら…
(なまえ)
あなた
(なまえ)
あなた
もちろんです!
小さく聞こえるか分からないほどの声量

だがあなたの下の名前にはちゃんと聞こえたらしい

笑顔で返事をし太宰の手を引き自宅へと招くのだった

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