第153話

⚽️否認⚽️
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2023/06/25 08:12 更新
烏 side








烏 「……チッ」








最後まで聞かへんで勝手にどっか行くなや。





小さな背中はあっという間に遠ざかって、



見えなくなった後も廊下に響いていた足音も、徐々に小さくなり、やがて消えた。








烏 「……。」




















氷織 「行ってもたね。」





烏 「!」








訳も分からず追いかけようとしていた足を止めさせたのは



突然 後ろから降ってきた、後輩の声だった。








烏 「……なんや、氷織か。」








彼女の走っていった方角に一歩踏み出していた足を戻し、声のした方を振り返る。



すると、



珍しく感情の入っている目をした彼が、真っ直ぐに俺を見つめていた。








烏 「何そないな目でガン見してくんねん。俺のこと堕とそうとでもして───」


氷織 「なぁ……」





氷織 「今度は 何したん?」





烏 「っ、」








飛ばしかけた冗談を遮る氷織の一言。



そのたった一言に、胸がズンと重くなる。



氷織は、さっきまで俺が座っていたソファーに静かに腰を下ろすと、








氷織 「嫌われちゃうで。」








また一言、そう呟いた。








烏 「…………ハッ。知らへんわ。」


烏 「そもそもハナから仲良ぉする気なんてあらへんかったし。」


氷織 「ふーん。」








とても共感しているようには思えないが、静かに隣で相槌を打つ氷織。



なんとなく落ち着かなくなった俺はもう一度ソファーに座り、



片手に握っていたスクイズボトルのキャップを、無意味に開いては閉じる。









氷織 「…………。」


烏 「なんや。」


氷織 「いや、」








隣に座った俺を、まじまじと見つめてくる氷織。








氷織 「珍しいなぁ思うてさ。」


氷織 「烏がそないに───」





氷織 「女子に興味持っとんの。」





烏 「…………、」








別に興味なんかあらへんし。








って、言おうとしていたのに。





開きかけた口は、



その台詞を発することはなく。





言葉に詰まる俺に気がついたのか、



何かに納得したように口元を緩めた氷織が、俺の代わりに会話を繋ぐ。








氷織 「でも、そんなら態度改めなあかんよ。」


氷織 「いつまでもそのままじゃあ───、」








烏 「……、分かっとる。」








このままじゃいけないってことぐらい。



痛いほど分かっている。



いつまでもこのままじゃあ、確実にアイツは遠ざかっていく。





…………いや、



もう、遠ざかっているか。





現に、さっきの俺から逃げるように走って行ったそれが。



何よりの…………、





拒絶の証拠。








烏 「……っちゅうか……、」


烏 「第一印象の時点でアウトやろ。あんなん。」








思わず自分で自分を嘲笑あざわらう。















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烏『よろしくお願いする気はあらへんで。』





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あの時、あなた ア イ ツはどう思ったんやろか。





氷織とは対極的な、ひねくれた先輩。



感じの悪い、意地悪な先輩。





きっと、そんなところだろう。








氷織 「でもさぁ、今ならまだ取り返しつくかも知れへんで。」








どうだか。





今から何かしたところで



変わることなんて きっとあれへん。





ずっと、キツい言葉で遠ざけて。



自分でいた種で。



こんなにも苦しくなるなんて。





知ってたら最初から、そないなことせぇへんかったはずやのに。








烏 「あぁ………………、っ、クソ…………、」








どうして……





どうしてこないに しんどいんや。








氷織 「そういえば、もう謝ったん?」


氷織 「 "認めへん" うたこと。」


烏 「…………。」





烏 「今も認めてへんし。」








せや、俺は認めてへん。





アイツの才能も。



努力も。



サッカー愛も。





…………このよく分からない、むず痒い気持ちも。





そう思えば、楽になる気がした。








氷織 「……へぇ。」








それ以上、氷織が何も聞いてこなかったのは








この言葉が嘘であると



知っていたからではないことを願う。


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