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第1話

Day1
12
2024/03/07 13:00
◆◇◆◇◆◇
お母さん
あなたは、私の宝物よ
小さい頃、何度も何度もその言葉を聞いた。最初は、よく分かってなくて。ただ嬉しくて、笑顔を返した。私の笑顔を見ると、お母さんはもっと笑顔になって。私をぎゅっと抱きしめた
そんなお母さんがくれた、【宝物】という称号も
今ではただの呪いになっている
Day1
アオ
…………………………
点滴の音が響く病室で。私は一人待っている。お母さんの目覚めを。一人、待っている
アオ
お母さん………
私が小学生の頃、倒れたお母さん。病院に運ばれて、いろいろ検査をして。お母さんの病名を、私は知らない。見つかってないのか、それとも意図して隠されているのか。もし、わざと隠してあるなら、そういうことだ
アオ
(お母さんは、もう、死んじゃうかも)
私は毎日、お見舞いをしてる。学校には友達なんていないし、家でも嫌なことばかりだし。唯一の希望が、お母さんの目覚め
今日、お見舞いに行ったら、もしかしたら目を覚ましているかも。ぼんやりとした顔で、私の目を見て。ぽつりと、私の名前を呟いて。来たんだと嬉しそうな顔をするかも
なんて、そんなことが起きないのは分ってた
看護師
アオちゃん………、その、お母さんは
アオ
まだ、目覚めないんですよね
看護師さんが、おどおどした様子でそう尋ねてきた。必死に私を励まそうと、努力してるのが分かる
「幼い頃にお母さんが倒れたかわいそうな子」
そういう評価を下してるのが、嫌でも分かった
看護師
まだ目を覚まさないけど………、
でも、段々良くなってるよ
アオ
良くなってるって、なんですか?
看護師
え?
アオ
どこがどう、良くなってるんですか?
看護師
え、えっと、それは………
看護師さんは困ったようにそう呟き、目をそらした。ほら、嘘だ。変に気を使われても、逆に傷付く。それくらい理解して欲しい
アオ
じゃあ、帰りますね
看護師
…………アオちゃん、何か悩んでることがあったら、気軽に声をかけてね
アオ
分かりました
「何か悩んでること」。お母さんのこと以外にあるの?。私は聞いたのに。あなたは嘘をついた。答えなかった。有言実行不可能な言動は謹んで欲しい
アオ
…………また来るね、お母さん
最後にそう挨拶をする。返事はない
分かってる
アオ
(返事なんて、期待して、無かったし)

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