気づいたら午後の授業なんて終わってて。
そらくんの「あなた部活行かないの?」って声で我に返った。
教室には私たち含めて8人ぐらいしかいなかった。
慌てて帰りの用意をしようとロッカーに向かうと、
瑠衣くんが私のかばんを持って来てくれた。
先に行ってて、って改めて言おうとしたら悠莉くんに遮られた。
私のことを気遣ってくれてるんだろう。
正直1人で部活向かうなんて怖かったし、ありがたい。
静かに言ってくれる瑠衣くん。
けどなんて返したら良いのかわからなくて、
気づかないフリをして、帰りの用意をした。
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準備を終えて、部活に向かう。
いちおう仮ではあるけどパートが決まって1週間。
みんな音はだいぶ出せるようになってきてて、確かにそろそろ曲をもらってもいい頃。
吹奏楽定番っていったらやっぱsingsingsingとか、宝島とか……そういうのが思い浮かぶけど、最初はそんなゴリゴリなのは難しいし。
私もディズニーとかなら吹いてみたいかも。
ていうか、そんな場合じゃない。
コンクールの曲練習しなきゃいけないんだもん。
なんだかんだ言ってコンクールまで2ヶ月切ってる。
相当頑張らないと。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。