アルはもう、ルナに嫌みすら言わなかった。
ただ無言で
ルナの方なんて見なかった。
え?
突然のルナの言葉に、アルは驚く。
もう、帰るの?
思わず、アルはルナの方を見る。
ルナも、アルの方を見てなかったみたいだ。
アルは声を絞り出す。
ルナは胸が痛かった。
罪悪感。
嘘だった。
本当はアルのことが心配でたまらない。
まだまだ通い続けたい。
毎日毎日会いたい。
でも、もうやめる。
アルのためだ。
アルがそんなに死にたいんなら
アルがそんなに全てを諦めるなら
アルがそんなに私の言葉を受け止めてくれないのなら
もう、諦めた方がアルのためなんじゃないだろうか。
ルナはそう思っていた。
アルはただ、戸惑っていた。
ルナは当たり前にそばにいて、
何があっても、自分が何を言っても、
いつでも会いに来てくれて
あぁ
自分にとってルナは本当に大切な存在だったんだな。
今更その事に気づいてしまった。
弱々しい声でアルは言う。
ルナも聞いたことないほど苦しそうな声だった。
込められているのは、紛れもないアルの本当の思いだろう。
だから。
そうか。そうなんだ。
自分は、こんなことを思っていたんだ。
本当に思っていたのはこんなことだったのか。
アルはようやく、自分を理解できた気がした。
初めて、自分の思いに本当に触れることができた。
ルナはいつもと変わらない口調で言う。
アルは自分の思いを言ってもなにも変わらないでくれる、そんなルナに少し安心した。
私はどう思っているのか。
アルは考える。
生きていたい。
生きていたくない。
そんな正反対の感情が、ぶつかり合う。
ルナはまっすぐとアルに見て言った。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!