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第4話

心霊ちゃん(4)「会いに行ってみよう」



話を終えた塚橋ユリエが
そそくさと気まずそうに出て行ったあと、

ガランとした昼休みの空き教室に
1人取り残されたカホが立ち尽くしていた。


梓山 カホ
梓山 カホ
はぁ……

誘ってもらえて
本当に嬉しかったのになぁ……


そもそも昨日の遊びの誘いの目的が
遊ぶこと自体ではなく
カホを陥れることにあったという事実。

結局は
鈴野サナの勘違いから来た逆恨みであり、
ユリエの言葉を信じるなら、
少なくとも彼女はサナの暴走を食い止めようと
努力していたようではあるのだが……


……諸々を加味して考えても
カホが受け止めるには少々残酷過ぎたようだ。




そしてもう1つ
衝撃を受けたことがある。

梓山 カホ
梓山 カホ
鈴野さんと塚橋さんって
すごく仲良しの親友同士にしか
見えなかったのに……
 
……塚橋さん、心の中では
そんな風に考えてたんだ……


クラスメイトのサナとユリエは
いわば “カホの憧れ” だった。

いつだって一緒に
楽しそうに行動している2人の姿は、
彼女の目にはとてもまぶしく映っていた。


だからこそ、
先ほどのユリエが話した本心は
カホが予想だにしない内容であり
非常にショックだったのだ。

梓山 カホ
梓山 カホ
“自業自得” 、かぁ……


昨日の出来事のことをユリエは
「サナの自業自得」と表現していた。

そして「これを機にサナと距離を置く」とも。



彼女がそう言いたくなる気持ちは
カホにだって分かる。

事情を聞けば、
昨日の一連の諸々は
サナが引き起こしたとしか
言いようがないからだ。


しかもユリエは今回に限らず今までずっと、
サナがやらかしたことの後始末を
していたのだという。

いつもなら穏やかなはずのユリエが
感情を爆発させてしまうぐらいなのだ。

きっと彼女は人知れず、
不満を抱え続けていたのだろうとカホは思う。


梓山 カホ
梓山 カホ
でも……これじゃ

鈴野さんが……


確かに鈴野サナは
カホをおとしいれようとした張本人。
そのことを許せるかと聞かれると、
正直カホは答えに困ってしまう。


だが彼女が実際にカホにしたことといえば、
遊びに誘い、そして写真を撮っただけ。


たったそれだけ。


なのにサナは
事故で大怪我をして入院しただけでなく、

友人ユリエにも距離を置かれそうになっている。




カホはなぜか
そんな彼女のことを “自業自得” と割り切り
突き放すことができなかった。



頭の中では
自分がサナに味方する義理はないし、
突き放してしまったほうがいっそ楽だと
いうことぐらい、カホはしっかり理解している。



だが突き放そうとするたびに、
脳裏に鮮明に焼き付いた光景が頭をよぎる。

撥ねられた直後のサナの瞳・・・・

あれは必死のSOS・・・・・・だったのではないか……


……そう思えば思うほど
カホの良心がざわつきはじめ、
「何かしなければ」
という気持ちに突き動かされてしまうのだ。


梓山 カホ
梓山 カホ
とはいっても
どうしたら解決できるかなんて
見当もつかないや

そもそも
私なんかができることってなると
選択肢が限られてるしなぁ……


頭を悩ませているうちに、カホはふと
朝のHRで聞いた担任教師の話を思い出す。


梓山 カホ
梓山 カホ
そういえば鈴野さん、
M市立病院に入院してるんだっけ……


……会いに行ってみようかな

このまま1人で考え続けても
なんからちが明かない気がするもの





    *****





放課後になったところでカホは
学校から直接 “M市立病院” へと向かった。


M市立病院は、
カホが住んでいるM市の中で最も大きな病院だ。

内科や外科など多くの診療科が設置された
一般的には “総合病院” と呼ばれるタイプで、
カホも何度か親戚のお見舞いで訪れた経験がある。



入ってすぐの1階受付でたずねたところ、
サナが入院している病室の番号はあっさり判明。

梓山 カホ
梓山 カホ
ええっと……

この辺りだと思うんだけど……

カホが番号片手に
病室が並ぶ4階一般病棟をウロウロしていると、
1人の女性が笑顔で話しかけてきた。
??
もしかしてあなた、
うちの娘のお見舞いに来てくれたの?
梓山 カホ
梓山 カホ
……?

きょとんとするカホ。

??
あらやだごめんなさい!

ついくせ
「うちの娘」って言っちゃったけど
それじゃ誰か分かんないわよねぇ

娘はね、“サナ” っていうのよ
梓山 カホ
梓山 カホ
ということは
鈴野さんのお母さんですか?
サナの母親
ええそうよ!

あなたは?
梓山 カホ
梓山 カホ
あ、初めまして
梓山カホといいます

えっと……
鈴野さんとは同じクラスです
サナの母親
あらそうなの!
来てくれてありがとうね!
梓山 カホ
梓山 カホ
いえ……
サナの母親
でもごめんなさい

今は娘に会っても喋れないのよ
梓山 カホ
梓山 カホ
えっ?
サナの母親
事故のあとしばらく経ってから
意識は取り戻したんだけど、
サナったら起きるなり
すごくおびえた感じで叫んでたのよ

だからお医者様判断で、
いったん薬で寝かせることになったの

事故に遭ったのが
よっぽどショックだったみたいね……
梓山 カホ
梓山 カホ
……あのぅ
ちなみに鈴野さん、
起きた時に何て言ってましたか?
サナの母親
どうだったかしら……


……そうだ、
「こっち来るな」とか
「なんでお前がいるんだ」とか
そんな感じだった気がするわ
梓山 カホ
梓山 カホ
!!
サナの母親
まぁお医者様によれば
錯乱は一時的なものだろうし、

怪我自体は治療すれば
後遺症なく治るはずって事だから
心配はしなくて大丈夫そうよ


だからあなたも
そのうち、落ち着いた頃にでも
また来てやってちょうだいね!

きっと娘も喜ぶと思うわ!
梓山 カホ
梓山 カホ
あ、はい……





    *****





ひと通りサナの母親から話を聞き終えたカホは
病院から退散することにした。

サナと会話が出来そうにないことから、
これ以上ここにいても何も進展しそうにないと
判断したのだ。





    *****





病院からの帰り道、
カホは歩きながら考え事をしていた。

梓山 カホ
梓山 カホ
……やっぱり鈴野さんには
何か見えてるみたいだな……


サナが目覚めてから叫んでいたという
「こっち来るな」
「なんでお前がいるんだ」
などの言葉。

それは彼女が昨日
事故直前に絶叫していた内容とほぼ同じ。



あの時のサナの様子から考えて
ほぼ間違いなく彼女には

何か・・

が見えていると思っていいだろう。




では “何か” とは一体……?


思い当たるのはあれしかない。
梓山 カホ
梓山 カホ
幽霊・・……



カホの仮説はこうだ。


サナの目的は
「カホに幽霊を憑りつかせる」ことであり、
迷うことなくそれを実行しようとした。

だがどういうわけか、
幽霊が憑りついたのはカホではなくサナだった。

幽霊から逃げようとしたサナは
うっかり車道に飛び出し車にかれた。

そして幽霊は今でもサナに憑りついている。


梓山 カホ
梓山 カホ
うん、状況からして
なんかこんな感じな気がする


もしこれが当たってるとしたら、

今、鈴野さん
本当にすごく怖いんだろうな……


……まさか自分が
幽霊に憑りつかれちゃうなんて
想像もしてなかっただろうし……

カホは現在のサナの状況や心情を想像し、
思わず身震いしてしまった。





とはいえ、
カホが立てた仮説は正直なところ根拠にとぼしい。



そもそもこの説を成立させるには
“幽霊がいる” という前提が欠かせない。

普段のカホだったら
どっちかといえば幽霊なんてもの信じてないし
「非科学的」というユリエの意見に賛成だ。




だが事故直前のサナは凄い迫力で、
ありえないぐらい本気に見えた。

特にあの怖がりようは尋常じゃなかった。

あの様子を思い出すだけで
カホは幽霊の存在を否定できなくなってしまう。
むしろその存在を信じかけている。

さらに今のところ、
この仮説以外に有力な正解が見えない。

考えれば考えるほど、
カホの中の
「サナが幽霊に憑りつかれた説」の信憑性しんぴょうせい
上がっていく一方になってしまうのだ。



ただし引っかかることが無いわけではない。

梓山 カホ
梓山 カホ
鈴野さんには見えて、
私や塚橋さんには見えないって
どういうこと……?


昨日サナが怖がり始めてから、
彼女が凝視していた方向を
カホもユリエも確認したはずだ。

だが少なくともカホは
幽霊含め “サナが恐怖を抱きそうなもの” を
何も発見することができなかったし、
おそらくユリエもそうだろう。

そして病室でサナが怖がっていた
という話を聞いた限りでは、
サナの母親も特に違和感を抱いた様子はない。


つまり幽霊は、サナだけにしか見えていない・・・・・・・・・・・・・のだ。



ではなぜ、そんなことになったのか?
原因は何なのか?

梓山 カホ
梓山 カホ
やっぱ……あれ・・だよね



 ―― “心霊ちゃん”


梓山 カホ
梓山 カホ
ちょっと怖いけど……

……調べてみなきゃ