ピコン。
あ、スマホ音消してなかった。
さっき動画見てたからだ。
届いたメッセージを開けると
と一言だけ。
珍しいな、と思いながら
と打ち返すと、すぐに既読がつく。
画面開いてるのかな?
すぐに返ってくると思ってしばらくメッセージを待ってたけど、何も来ない。
諦めていつものようにサイレントにしようとした瞬間着信が鳴り、思わず指があたってタップしてしまった。
名前も見ずに出ちゃった。
翔太、、だよね?ちょっと不安になって相手の様子を伺ってると
と聞き慣れた独特な笑い声がする。
よかった。これは絶対翔太だ。笑
安心して、思わずこっちも笑ってしまう。
ああ、、俺いつも返信遅いもんな、、すいません、、笑
てか普段そっけないくせに、こういうとこ相変わらず可愛いな。
と思いながら、柔らかい口調で返す。
その意味深な言葉に、思わずドキッとする。
普段だったら何とも思わないんだけど、
最近よく誘ってくれるようになったり、他のメンバーとの事を気にしたり。
え、それヤキモチ?っていう場面もあったりして
ちょっと意識しちゃってるとこ、ある。
いやいや、
でも翔太が隠し言葉の意味なんて知ってるわけないじゃん。
そう自分に言い聞かせて
え!そうだった!
あれ今日だったっけ。
楽しみにしてたのにすっかり忘れてた!
慌ててベランダに出て空を見上げると、
夜空に大きな月が浮かんでる。
やっぱりあの言葉に意味なんてないんだ。
とちょっとほっとしたような、残念なような気持ちで「じゃあね」と切ろうとすると
完全に部屋着のスウェットだし、もうご飯も食べた。
正直出かけるモードではない。
でも、やっぱりなにか相談でもあるのかな。
ベランダから下を覗いてみたけど、翔太の姿は見えない。
行ったりきたりしてる俺を想像したのか、ふふっと笑う翔太。
てか部屋着バレてるし。さすがメンバー。
翔太とはもう付き合いもかなり長いもんね。
少し嬉しくなりながら、そのまま家を出ると
マンションの前の街路樹にもたれて立っている翔太を見つけた。
そんなに背が高いわけでもないのに、ものすごく目立つな。オーラ?顔?分かんないけど。
会いたくなって、、?俺に??
その言い方にまたドキッとしながら、並んで歩きだす。
でもこんな時間にわざわざ来るなんて、
よっぽどの話とかあるのかも、、翔太って無駄にイケメンな言い方する時あるしな、、まさか辞めるとか言わないよね、、いやそれは無いよね、、
じゃあ何だろう、メンバーと何かあったとか、、?と不安になりながら、
きっかけを探して他愛もない話を続ける。
「あ、そうだ」
思いついたように翔太がそう言って立ち止まる。
そんなの初めて聞いたなぁと思いながら、
一緒に立ち止まる。
「ん、じゃあはい。してみて。」
俺の両肩にぽんと手を起き、月の方を向かせる。
めちゃくちゃ期待しながら思いっきり目を閉じて、ぱっと開けると、、
期待はずれの結果に少し口を尖らせて、
ねえ、と翔太の方を振り向くと、
愛しそうにこちらを見つめてる。
え、、?
「翔太、、?」
翔太の顔、月燈りに照らされてめちゃくちゃ綺麗で、そんな眼で見つめられたらドキドキするよ、、
どうしたの、と聞こうとする声を遮るように、
儚い笑顔でまっすぐ見つめられたまま、さっきと同じセリフが囁かれる。
やばい、目が逸らせない、、ドキドキと胸が高まる。
どうしよう、これってもしかして、、と戸惑っていると
ぐいっと腕をとられ、抱き寄せられる。
ゆっくり瞳を閉じて、綺麗な顔が近づいてくる。
え、え、これって、、キス、、、?
優しく唇が触れ、離れる。
確かめるようにもう一度ゆっくり、熱い唇が重なる。
やっぱり、強引じゃないのに避けられない、、なんで俺受け入れてんの、、
長いキスの後、ゆっくりと唇を割って熱い舌が入ってくる。
「、、!」
驚きながらも、見つめられた時からどこかで期待してた自分がいて。
目を閉じたまま、翔太に身を任せるように力を解く。
受け入れた俺を感じて、抱きしめる腕にぎゅっと力が入る。
角度を変えさせて何度も絡まる熱い舌。
夜の静寂に、時折翔太の「はぁ、、」って吐息がすごく大きく、色っぽく響いて
頭の芯が溶ける。
「ん、、」
ヤバい、、もう何も考えられない、、。
しばらく甘い時間が続くと、ゆっくり唇が離される。
ふう、と大きく呼吸していると
と、翔太が鼻先がつきそうなほど近い距離でまっすぐ見つめてそう言う。
月が綺麗だね、の意味。
"愛してる"
翔太が、俺の事を、、"愛してる"、、。
少し不安そうな、真剣な表情。
これは本気の時の瞳だ。
翔太が、覚悟を決めたときにする瞳だ。
俺も、ちゃんと返さないと。
きっと色々考えて、今日を選んで来てくれたんだ。
俺の事、たくさん考えてくれたんだ。
きっと今も、これで良かったのかな、間違ったかなって不安になってるんだろうな。
ちゃんと、届いてるよって伝えないと。
あの翔太がこんな事するなんて。
自分から告白するなんて。
よっぽど勇気がいる事だ。
それほど、想ってくれてるんだ。
少し考えて、俺も覚悟を決めたように、
真っ直ぐに翔太を見つめる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。