第48話

⋈ season2 ep.13
414
2026/04/04 11:24 更新
廊下。

橘は壁の前に立ったまま、佐野を見ていた。


「……なに」

佐野
「仕返し」


「まだ言ってる」

橘は少し笑う。


「はやとくん、嫉妬してたのに」

佐野
「……」

佐野は少し近づく。


「……近い」

佐野
「あなた」


「なに」

佐野は橘の耳元に顔を寄せる。


「……っ」


「ちょ」

佐野
「この前さ」

低い声。

耳元。

橘の体がびくっと揺れる。


「……はやとくん」

佐野
「水族館」


「……っ」

佐野
「覚えてる?」


「……覚えてる」

佐野
「耳」


「……」

橘の顔が一気に赤くなる。


「やめて」

佐野
「なんで」

そして——

ふー。

橘の耳に息を吹きかける。


「……っ!」

変な声が出る。


「んっ」

佐野が一瞬止まる。

そして少し笑う。

佐野
「ほんと弱い」


「……っ」


「やめてって」

佐野はまた耳元で話す。

佐野
「あなた」


「……っ」


「はやとくん」

佐野
「なに」


「近い」

佐野
「近くする」

また耳元。


「……んっ」

また声が出る。


「……っ」


「ほんとやめて」

佐野
「やだ」


「……っ」

橘は顔を隠す。

でも佐野は止まらない。

佐野
「あなた」

また耳元。


「んっ……」


「……外だからやめて」

顔が真っ赤。

佐野は楽しそうに笑う。

佐野
「わざと男子と話した罰」


「……っ」


「ずるい」

佐野
「まだやる?」


「やめて」


「ほんとに」


「外だからやめて…っ!」

佐野は少し笑う。

佐野
「じゃあ」


「なに」

佐野
「家帰ったら覚悟しとけよ?」


「……は?」


「うるさい」

橘は顔を真っ赤にしたまま、佐野から距離をとる。


「もう近づかないで」

そう言いながら歩き出す。

でも——

耳はまだ赤い。

佐野はその後ろを歩きながら小さく笑った。

佐野
「かわいい」


「聞こえてる」

佐野
「知ってる」


「うるさい」

でも橘の歩くスピードは、少しだけ遅かった。

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