水族館の出口近く。
橘
「……」
橘はおみやげコーナーの棚を見ていた。
キーホルダー。
お菓子。
ぬいぐるみ。
その中で——
橘の目が止まる。
橘
「……かわいい」
小さなペンギンのぬいぐるみ。
手のひらより少し大きいくらい。
橘はそっと持ち上げる。
橘
「……」
ちょっとだけ笑う。
橘
「かわいい」
その横で佐野が見ていた。
佐野
「欲しいの?」
橘
「……別に」
橘はすぐ棚に戻す。
橘
「見ただけ」
佐野
「ふーん」
橘
「行こ」
橘はそのまま歩いていく。
佐野は一瞬ぬいぐるみを見る。
そして——
何も言わずにそれを手に取った。
レジへ向かう。
店員
「こちら一点ですね」
佐野
「はい」
袋に入れてもらう。
そして橘のところへ戻る。
橘は外で待っていた。
橘
「遅い」
佐野
「トイレ」
橘
「……ふーん」
二人は駅へ向かって歩く。
夕方。
少し疲れているけど、なんだか楽しい一日だった。
改札の前で止まる。
橘
「……今日は」
橘
「ありがとう」
佐野
「うん」
少し沈黙。
そのとき、佐野が袋を差し出した。
佐野
「あなた」
橘
「なに」
佐野
「これ」
橘
「……?」
橘は袋を受け取る。
中を見る。
橘
「……」
さっきのペンギンのぬいぐるみ。
橘
「……え」
橘
「これ」
佐野
「さっきの」
橘は佐野を見る。
橘
「……買ったの?」
佐野
「うん」
橘
「……」
橘はぬいぐるみを見る。
そして小さく笑う。
橘
「……ありがとう」
橘
「大事にする」
佐野は少し満足そうだった。
橘はぬいぐるみを抱える。
橘
「……はやとくん」
佐野
「なに」
橘
「今日楽しかった」
佐野
「俺も」
橘は少し照れながら言う。
橘
「また行きたい」
佐野は少し笑った。
佐野
「どこ」
橘
「……どこでも」
橘
「はやとくんとなら」
夕方の駅前。
ペンギンのぬいぐるみを抱えた橘は、少しだけ幸せそうだった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。