第46話

⋈ season2 ep.11
379
2026/03/29 19:08 更新
次の日の朝。

橘はカバンを肩にかける。

そこには——

昨日水族館で買ってもらった
ペンギンのぬいぐるみがついていた。


「……」

少しだけ触る。


「かわいい」

小さく笑って、そのまま学校へ向かった。

教室。

橘が入ると、少し空気が変わる。

女子たちが小声で話している。

「見て」

「また佐野の彼女」

「ぬいぐるみつけてる」

女子はあまり橘に近づかない。

でも——

男子は違った。

「橘」


「……なに」

男子が近づいてくる。

「そのぬいぐるみかわいくね?」


「……でしょ」

男子
「どこで買ったの?」


「水族館」

男子
「へー」

男子はぬいぐるみに手を伸ばす。

男子
「ちょっと見ていい?」

その瞬間——

パシッ。

男子の手が止められる。

男子
「え?」

そこにいたのは佐野だった。

佐野
「触んな」

低い声。

男子
「いや、ぬいぐるみだろ」

佐野
「あなたの」

男子
「……は?」

佐野は橘の手を取る。


「……っ」


「はやとくん?」

佐野
「行くよ」

そのまま橘の手を握る。

教室の視線が一気に集まる。


「ちょ、どこ」

佐野
「いいから」

そのまま教室を出る。

廊下を歩く。


「はやとくん」

佐野
「なに」


「手」

佐野
「うん」


「……握りすぎ」

佐野
「離さない」


「……」

そのまま階段を上る。

屋上のドアを開ける。

ガチャ。

風が吹く。

佐野はそこでやっと止まる。


「……どうしたの」

佐野は少し黙る。

橘の手はまだ握ったまま。


「はやとくん」

佐野
「なに」


「怒ってる?」

佐野は少し目を逸らす。

佐野
「……別に」


「嘘」


「怒ってる」

少し沈黙。

そして佐野が小さく言う。

佐野
「……触ろうとしてた」


「え」

佐野
「さっきのやつ」

佐野
「あなたに」


「……ぬいぐるみでしょ」

佐野
「違う」

橘は少し驚いた顔をする。

佐野は橘を見る。

佐野
「あなただから」


「……」

橘の顔が少し赤くなる。

佐野
「かわいいから」


「……」


「うるさい」

でも少し嬉しそう。


「……はやとくん」

佐野
「なに」


「嫉妬?」

佐野は少しだけ黙る。

そして小さく言う。

佐野
「……そう」

橘の心臓がまた速くなる。

佐野は橘の手を少し強く握る。

佐野
「だから触らせない」


「……」

橘は少し俯いてから言う。


「……別にいいよ」

佐野
「なにが」


「はやとくんだけなら」

風が吹く屋上で——

橘の顔は少し赤かった。

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