花が目を覚ましてから
1ヶ月
まだ記憶は戻ってないようだけど
少しづつだけ前のような関係にはして行った
花は病室のベットに横になったまま
俺を見つめてきた
俺の心は深く傷が付いたけど
花は知らない顔をしている
俺ももっと苦しいのは花だろうから
深くは話さないようにした
ゆっくり思い出すまで
あのとき
花を傷つけた分
今は俺が傷付くんだ
俺は
そっと花のそばにしゃがんで
花の手に頬を乗せた
俺はハッとした
手から頬を離して
花を見た
花は窓の外を眺めていた
安心したのか
そのまま俺は
眠りについてしまった
ここ最近まともに寝てなかったからなのか
俺は夢を見た
昔の頃の夢
確か春になると
あの河原に咲く
桜を花が欲しがったんだっけ
俺がまだ
10歳の頃
花が桜の木に向かって
手を伸ばしてる
花が伸ばしていたのは
桜の木下に垂れ下がった枝だった
俺は花よりも背が高かったから
桜の木に手を伸ばして
桜の花を取った
それからは毎年
この季節になると
花に桜をあげていた
ハッ
夢か...
今年はまだ
花に桜渡してないや
でもほんとに
小さなさくらじゃ
お見舞いに来た人達の花束に負けるか
俺は
急いで出ていった
約束したんだ
花と
絶対
取ってくるよ
桜
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!