のそり、と起き上がる。時計を確認するともう12時だった。
ドタドタっと階段をかけおりリビングへ行くと、父さんと母さんがいた。
バタンとドアを閉める。
夜に狩りをする、とはそのままの意味ともう1つ意味がある。
お前も行くんだぞ、という意味だ。
今日は1ヶ月に1度の僕も狩りをする日。
18歳を迎えたら1人で狩りが出来るように今から練習するんだ。
父さんは僕がいつまでも上手にならないからあんまりこういう日は好きじゃない。
だって僕は天使村の人間になりたいし天使村の人間と仲良くしてるし。上達するわけねーだろ。
憂鬱な気分を振り払い、村境へ足を早めた。
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るぅとくんの手の上には花かんむりが乗せられていた。
目が見えない分、るぅとくんは人よりこういう細かい作業は苦手なはずだ。一つ一つ穴を触って確認していかなきゃならない。
こんなに喜んだのは人生で初めてかもしれない。
何より、自分の好きな子からプレゼントを貰うなんて天にも昇る思いだ。
…あぁ、この時間が、永遠に続けばいいのに。
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夜。顔を隠すための仮面と闇に紛れるための黒いマントを身につけて僕ら家族と狩りの仲間達は天使村へ向かう。
全員散らばったと思うと瞬く間にあちこちから悲鳴が聞こえてくる。
人なんて殺したくない。こっちの方で隠れてよーっと…
父さんがいる所には倒れた男女と青年がいた。
わなわなと震えながら銃先をるぅとくんへ向ける。
が、引き金を引けない。
パァン!!!!!!
横にいた父が手を伸ばし、僕の銃の引き金を引いた。
るぅとくんが後ろへ倒れる。血が吹き出す。
ずっと閉じていた目は半開きになって焦点があっていない。
全身の力が抜けた。
目の前で好きな人が死んだ。
僕の持っている、この銃で。
るぅとくんの腕から何かが落ちた。目をやる。
花かんむりだった。
なんて馬鹿なんだろう。
なんて愚かなんだろう。
僕は所詮黒族で、るぅとくんは白族だ。「白族になりたい、仲良くしたい」なんて叶わない望みなんか夢見て、
僕は、馬鹿だ。
力が入らない体を引きずってるぅとくんの手を握る。
涙で視界がぼやける。あぁ、るぅとくんの顔が見えないじゃないか。
口に銃をくわえた。
引き金を、引いた。
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True End
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。