※(ここからは第三者目線で物語を進めていきます。
第三者目線の時文頭には※をつけておきます)
いよいよ晩夏に歩んで行こうとしている季節だが
蝉の鳴き声が絶えず
あたりはは蒸し暑いままである
小さな少女はその鴉を道標にして
休憩を与えられる隙もなく、せっせと付いて行く
育手の所へ向かおうとしている途中なのだ
長い旅路の中
彼女の額からは薄い汗が滲み
暑さで唇は乾燥していた
「ふーっ、
どれだけ走るの…?」
あなたは息を切らしながらも、
鴉の後を追うと
黒い翼は薄暗い山の中へ姿を消した
『早すぎるよ、待ってったら!』
この鴉はこの少女にとって大事なのだ
何せ蝶屋敷を出発する前に
「いい?
あなたちゃんは、
絶対にこの子を見失ったらだめよ?」
とカナエに念押しされていたのだ。
大きな木々が立ち並ぶ山中は
おそろしいほど静寂の中
鳥の囀りさえ聞こえない
路は無く、青々とした雑草が生い茂っている
少女は己の感覚を頼りながら
山を登り始めた
________
どれ程時が経ったのだろうか
一日飲まず食わずとは言えないが
体力は残り僅かだと彼女は思い知った
全身の汗が衣服に吸収され
布にへばり付かれて身動きがとるのも苦しい所
滝の音がどこからか聞こえて来る
『水、!』
一刻も早く涼しい水の中へ飛び込みたいという思いに駆られ、
あなたは音の源とを辿ると
鬱蒼とした竹林を駆け抜けた末に
鼓膜が震える程の轟く滝が
目の前に現れたのだ
下流に位置するあなたは大喜びで
滝壺の中へと飛び込んだ。
清らかで甘美な水は喉を潤し
再び山を登る力を彼女に与えてくれるだろう
太陽が徐々に西へ沈み始め、
雲が薄紅色になろうとしている時に
どこかで会話の声が耳の中へ入ってくる
しかし、滝の音で掻き消された
「_____さと降りんか。」
(さっさと降りんか。)
「__やく……ぜ!」
(はやく行こうぜ!)
そして一人の子が愚図る声も聞こえる
「…び、出来たよ、」
(準備、出来たよ、)
『育手さんかな』
呑気に水の中で浸かりながら首を傾げるあなたには
今から起きる事を知る術もない
『あれ、何で急に空が暗くなったのかな』
顔を上げる同時に、滝音を引裂くような悲鳴が聞こえた
『…え、?』
涙をぼろぼろ流しながら泣き叫んでいる三人の少年少女が、あなたの真上から降ってきたのである
えらいこっちゃ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。