💜🐰side
なんだ、起きているのか
その返事を聞いて
僕は手を置いていたドアの取っ手を強く押した
そう言って僕の方に体を向けたのは
この家の最年少の住人
りうら 中学1年生
りうらは脳の病気で目が見えない
本人曰く光は感じるらしいが
きっと今も僕の姿は見えていない
僕が来る前に制服をばっちり着こなして
学校に行く準備をしたようだ
りうらの足元にはバッグと白杖が置かれていた
前までわんわん泣きながら
おんぶをねだっていたのに
弟の成長を感じ嬉しさと寂しさが混ざった
よく分からない気持ちになった
そんなことはまあとりあえずどうでもいい
部屋を出て階段の前まで来る
ゆっくり手すりを頼りに下りるりうら
それに合わせて僕は前に立ち
サポートしながら一緒に下りる
りうらはいつも『ごめんね』って謝る
目が見えなくなるっていうのは
片腕しか無くしてない僕なんかより
この世界がよっぽど怖くなるだろうに
自分の心配なんかより
迷惑をかけてごめんっていう
僕の目をりうちゃんにあげれたら
なんてよく考える
僕に目なんかあってもなくても
この社会から目を背けて
逃げる弱虫なとこは変わらないからさ
そう言うとりうらは
少し悲しそうに眉を下げた
多分、今日も僕が学校に行かないことを
今の言葉で悟ったのだろう
嫌な言い回ししちゃったな
そう考えてももう遅い
声に出された言葉は
もう無かったことには出来ない
どんな時でも、どんなことでも
動けなくったりうらと僕
どうしようかと廊下に突っ立って考えてると
リビングに繋がるドアががちゃりと開いた
車椅子に乗りながらもぐいぐいと
器用に僕らを引っ張る
結局そのまま朝ごはんを食べたが
りうちゃんは終始真顔だった
そう言って玄関の方にばたばた行った3人を見ながら
少し惨めになった僕は小さな声で
いってらっしゃい
と呟いた













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。