朝の羅刹学園。
四季はいつものように大声で挨拶しながら教室へ入る──はずだった。
だが、その足が止まった。
四季の机だけ。
まるで誰かに蹴飛ばされたように傾き、中身は床に散らばり、ノートは破れかけ、プリントはぐしゃぐしゃ。
クラス全体が静まり返る。
入ってきた皇后崎は、一瞬だけ殺気のような気配を流し、散乱した机を無言で見つめた。
無理に笑う四季。
その声はかすれていた。
静かな声が落ちる。
四季の胸がつまる。
(怒っていい……?俺が? こんなことで?)
教室に入った京夜が散乱した様子を見た瞬間、笑顔が凍りつく。
その言葉に四季の指先が震えた。
(……俺のこと、ちゃんと見てくれてるんだ……)
そこへ、訓練から戻ってきた遊摺部が現れた。
淡々とした口調のまま、しかし瞳に一瞬だけ怒りが宿る。
その低い声に、四季は胸がじんと温かくなる。
遊摺部は四季の肩にそっと手を置く。
四季はぐっと唇を噛んで顔をそむけた。
泣きそうだったから。
矢颪は騒ぎを聞きつけて教室へ駆けてきた。
机を見て目を丸くしたあと、すぐに四季の手を取って覗き込む。
矢颪の優しい声に、四季の胸の奥で何かが緩む。
遊摺部と無陀野の調査は早かった。
犯人は隣クラスの男子二人。
という、くだらない理由だった。
四季はうつむいた。
四季は顔を隠すように腕で目をこする。
遊摺部はそっと四季を抱き寄せた。
京夜は笑いながら四季の頭を撫でる。
無陀野は散らばったノートを拾いながら言う。
四季は堪えきれず、ぽろりと涙を落とした。
矢颪は背中を優しくさすり、遊摺部は静かに見守り、無陀野と京夜は机を元の状態に整え、皇后崎はそっとティッシュを差し出した。
四季は気づく。
(俺……こんなに守られてたんだ……)
――夜の寮
四季はふと、隣の皇后崎に話しかけた。
皇后崎はそっぽを向いたまま、小さく。
四季は笑って、布団に潜り込んだ。
今日だけは、胸の奥がずっと温かかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。