結局のとこ、理事長という手をイルマさんが使ったことによって、半強制的に印を押すことになった
私の視界の端で薄い呼吸を繰り返し、眠っているエイトの手を握る
いつも暖かいエイトの手は、いつもに比べて随分と冷たくなってて
けれども、私の手よりも暖かいから、まだ大丈夫だろう
そう信じてる
私は正確な悪魔の生死の線が分からない
どこまで行ったらあなたは死ぬの?
どこが限界なの?
分からないよ
私自身はやり直せると知ってるから、限界を超えようが、構わない
でもあなたはそうじゃないでしょう?
だって今、水を多く被っただけで、死にかけてるもん
それでも問えないのは
問うとあなたが消えそうだから、なんて
言ったらあなたは笑い飛ばしてくれるだろうか?
私の予想だと、大真面目に考えてくれる気がする
では、なんでそんなにも儚くなってしまうの?
火というものは不安定で
形が無くて
気体でも液体でも個体でもないただの現象で
私がどうこうできるものではない
私が掬えるものでは無い
すぐに火は消えるから
どれだけの業火でも、燃えるものがなくなって、やがて小さくなり、いつの間にか消えてなくなる
循環前の記憶、段々と取り戻したんだよ
エイト
エイトが循環がどんなものかどれぐらい知ってるのか、分からないけど
循環前の私に、炎を扱う奴が近くに居たよ
そいつに力ちょっと取られたけど
エイト、あなたはどうしたい?
私みたいな変な奴と一緒に居て楽しいの?
エイトは可哀想だよ
私みたいな変な奴に好かれて
嫌だったら離れてくれてもいいのに
なんて
私みたいな変な奴と一緒に居ると、そのうち変なことに巻き込まれることになるよ
きっと
それでもいいのなら
最後まで見守らせて欲しい
なんて
強欲だろうか?
ギュッと握っていた私の手をエイトが握り返してくる
段々とエイトの暖かさが戻ってくる
さ、私は報告しないと
ス魔ホに一通
仕事終わり、リビングで足を組みながら椅子に座り、ス魔ホ片手に明日のスケジュールを確認していたら、疲れた表情をうかべるエイトがリビングに入ってくる
私はチラ、と視線をエイトに向け、すぐに視線を元に戻す
そういうと、エイトはふい、と向こうを向いてしまった
私は変な事言っただろうか?
ま、そんなことはいいか
今の私からすれば、エイトが元気になっただけで、嬉しいから
私の前にエイトはしゃがみこむ
しゃがみこんで、エイトの暖かい手が私の頬に当たる
嗚呼、エイトだけの暖かさだ
エイトの手に染み込んだ、仄かなタバコの香りがする
わ、と声を出しそうになったのを抑える
エイトは私に抱きついてきていた
正面から、優しく
手に持っていたス魔ホを机の上に置く
少々静寂が空間を支配する
その間、私を抱きしめ続けるエイトの頭を撫でる
数テンポ置いて、エイトは立ち上がる
そう言ったエイトは、私の顔をじっと見て、ふっと笑う
どうしたんだろうか
そう言って、去ってくエイトに向かって手を振る
向こうも元気に手を振っている
エイトが見えなくなった頃、私は立ち上がり、女子寮の方へと向かう
少し前、やけに大きく見えたバビルス常駐教員の絵がふとまた視界に入る
けど、今はそんなに怖くも、大きくもない











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!