エンジンがハンドルを軽く切り、車がゆっくり減速していく。
窓の外には、見慣れた掃除屋本部の建物。
……ああ、戻ってきたんだ、と実感するする。
エンジンがいつもの調子でそう言うと、車が小さく揺れて完全に停まった。
エンジンの声に押されるように、私はカチャッとシートベルトを外す。
…なんで外すのはこんなに簡単なのかな?
さっきザンカに手伝ってもらったところが、少しあったかい気がした。
ドアを押して外に出ると、違う乾いた風が頬を撫でる。
少しひんやりしてて、砂の匂いが混じる、それでもどこか安心する匂い。
その後ろでルドもドアを開ける音がした。また、リヨウがトランクを空け本部へかけて行った。
靴が地面につく軽い着地音。
続けてザンカが無言で降りてくる。
一応声をかけて振り返ると──
ルドがほんの少しだけ、きょとんとした顔であたしを見ていた。
(……そんな顔するんだ)
…多分、慣れてないのかな?
心配されることとか、気遣われることとか。
ザンカは子犬見たく目をキラキラさせて、ゆっくり足場を確認していた。
エンジンは運転席から降り、ドアをちゃりと閉めながら
最初に足を踏み入れたエンジンが軽く手を上げ、
そのあと私、リヨウ、ルド、ザンカの順で入る。
すると、受付の机で"やらしい本"を見ていたセミュは
顔を上げてこちらを確認した。
メガネの奥にある目は、全部を見透かすみたいに鋭い。
エンジンとルドはそのまま受付へ向かう。
エンジンが先に歩き、ルドがそれに続く
セミュが私たちのほうを見て手をひらりと振る。
その後リヨウ、ザンカ、私は
受付を後にして部屋に繋がる廊下を歩いていた
本部の廊下は、いつもの低い照明と
機械油の匂いがほんのり混ざって落ち着く空気。
リヨウは途中で「じゃ、戻るわ」と自分の部屋へ消え、
ザンカと私は同じ方向へ進む。
ザンカは歩きながら、なんとなく私の方を見たり、見なかったり。
一拍。
彼の睫毛が揺れる。
そしたら、彼の顔がブラッと赤くなり
手を宙にばたつかせて
その言葉にザンカはわずかに肩をすくめる。
耳は赤く、
けれど目はちゃんと私の方を見ていた。
そう言い残して自分の部屋へ歩き出す。
扉を閉める直前、
彼はほんの一瞬だけ振り返り、
嬉しそうに、安心したみたいに、
小さく笑った。
扉が閉まり、廊下に静けさが戻る。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。