第7話

短編集7 jm
2,082
2020/01/18 05:26


どうしてこんなに欲張りになるんだろう。
人間は欲深い。



「好きです。付き合って下さい。」

『‥よろしくお願いします。』


玉砕覚悟で告白したあの日から数ヶ月。


付き合えるなんて思ってなかった。
だって、君は人気者だから。

クラスだって違うし
唯一の接点と言えば委員会くらい。
それでも廊下ですれ違うときには
声をかけてみたりわたしなりに
がんばっていた。


みんなに優しくて、
ふわふわ可愛いって言葉が似合うような君。

だけど、やっぱりちゃんと男の子で。
ときどき見せるその顔に告白を決意した。



あのときは
気持ちを伝えるだけで良いなんて
思ってたけど、
やっぱり少しでも
君の特別になりたいと思った。



でも人間とは欲深い。
付き合えただけで幸せ。
なんて思っていたのに今では

ずっと一緒に居たいとか、君に触れたいとか

他の子と話さないで、
そんな笑顔を見せないで


君の口から好きって聞きたい。

とか。


思ってしまう。


付き合えているだけでも奇跡だというのに
なんともまあ、おこがましいのだろう。



最近はこんなことばかり
考えていて、


『‥あなた聞いてる?』

ジミンくんに覗き込まれて
ハッとした。

「あ、ごめん。ボーッとしてた」

『‥最近、なんかあったの?悩み事?』

「え、違うの違うのごめんね」

『うん、それなら良いけど。
 僕に言えないことでも誰かにはちゃんと
 話して一人で抱え込まないでね』


あー、どうして君はそんなに優しいのだろう。

こんな気持ちで悩んでるわたしが
ほんとに嫌になる。


「‥ジミンくんは、わたしのことすき?」

『ん?もちろん。だから一緒居るんでしょ?』

と目を細めて優しい笑顔をする君。


わたしはなんでこうなのだろう。
1人で勝手に欲張って、嫉妬して、
こんな質問して気持ちを確かめるなんて


自分の気持ちはちゃんと伝えられないくせに。





今日は放課後残って
一緒に委員会の仕事をしていると

[ジミン、後輩のかわい子ちゃんが呼んでる]

声のする方を見ると
かわいいと有名な子が入口に立っていた。



少し、申し訳なさそうな顔をした君が
席を立ちあの子のところへ向かおうとした時


ジミンくんの制服の袖を掴んでいた。
自分でも思ってなかった自分の行動に

「あ、ごめん。」


と言いながら手を離す。


ジミンくんは一瞬びっくりしたような顔をして
ふふっと笑い
わたしの頭をポンポンとする。


そのまま女の子のもとへ向かい
別の場所へ移動するのかな
なんて思ってたら
ジミンくんが何かを告げて
早々に戻ってきた。



あれ?告白じゃなかったのかな?
なんて思っていると
顔に出てたのか


『ここじゃできない話しって言われたから
 ごめんねって言って戻ってきたよ』

というジミンくん。


『で、あなたはさっきなんで
 僕の袖を掴んだの?』


きっと気づいているだろう。


『やっぱり、言えない?』
と少し悲しい声。



嫌われてもいいから
わたしの気持ちを伝えよう。



「わたしね、ジミンくんに告白したとき
 付き合えるなんて思ってもなくて
 ほんとに夢みたいだったの。
 初めはそれだけで嬉しかったのに
 だんだん、だんだん欲がでてきて。」

うん。と優しく相槌しながら
聞いてくれる君。

「なのに、ジミンくんが他の子と
 話してると、
 そんなに楽しそうにしないで
 そんなふうに笑わないで。
 って心の中で嫉妬してた。」

『うん』

「…それにジミンくんの口から
 好きって聞きたいなって」

だんだん小さくなる声に


『思ってること話してくれてありがとう。
 ほんとはなんとなく分かってたけど
 あなたにちゃんと言ってほしかったんだ
 いつも本心は見せない。
 そんな感じだったから。
 袖掴んでくれたときは嬉しかった
 あ、嫉妬してくれてるのかな?って。』

と話す君。

『心の中ではいつも思ってたけど
 言葉にしないとやっぱり伝わらないよね
 あなた好きだよ。
 きっとあなたが思ってるよりもずっと
 僕の方がすきだから。』


少し照れたようにでも真剣な顔。



やっと言えた自分の気持ちを

ちゃんと受け止めてくれたことに。

初めて聞けた好きの言葉に。

涙が溢れて止まらなかった。


『あ〜も〜泣かないで〜』

と少し焦ったような君が
愛しくてまだ涙は止まりそうにない。




これからは好きだからこそ
ちゃんと向き合っていこう。

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