第18話

18話 信頼の証
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2023/04/27 16:13 更新
アウラ
アウラ
なんで……霧が……
ソルム
ソルム
あの森、お宅の国があるとこだろ?
アウラ
アウラ
そうよ、あの霧は長様の魔法!どうして…霧が晴れるなんて今まで1度もなかった!
ソルム
ソルム
……戻るか?
アウラ
アウラ
え?
ソルム
ソルム
国に戻るか?と聞いてんだが。あんたの家族が危険なのかもしれないなら、俺もできる限りの協力をする
アウラ
アウラ
…………

アウラは深く深く思考の海へ潜っていく。自分はどうするべきか。今、国はどうなっているのか。

まず、非常事態だからといって自分が戻ったところで出来ることは少ない。
ネーヴェラとエルヴァージュ、そしてフィートが居ながら解決できないのならアウラが行ったところでどうしようもないことは言わずともわかる事だ。
どころか、足でまといになったっておかしくない。

きっと、大丈夫だ。

そう願うことしか出来ない。

大丈夫である理由を探して、何も考えなくていい理由を探している。

別に戻ったっていいのだ。

またソルムと共にここまで来ればいい。

でもきっと、“次”を許してくれるほど彼女らは優しくはないだろう。

それくらい閉鎖的で、心配性だ。

それに魔女の中には、この霧が晴れた原因になった異変とアウラの脱走を関連付ける者も出てくるかもしれない。

関連していることを疑うのは簡単でも、関連していないことの証明は難しい。


……現実から目を背ける理由が出来てしまった気がした
アウラ
アウラ
いいわ。行かない
ソルム
ソルム
本当にいいんだな?
アウラ
アウラ
それよりも私は、私の目的を優先させる
ソルム
ソルム
…わかった。なら、出来るだけ早くたどり着けるように、急ぐか。
アウラ
アウラ
ええ。
ソルム
ソルム
ま、夜も遅いからまずは…

くぁぁ、と大きな欠伸をした。
ソルム
ソルム
寝るかぁ
アウラ
アウラ
すごくイラッとしたのに言っていることは正しいから何も言えないのが悔しいわ
ソルム
ソルム
ひでぇな!?
いかにも心外だ、と言わんばかりに顔を歪めたあと不満気な顔へとコロコロ表情を変えて、最後にフッと優しく笑う。

慈悲に満ち溢れたような顔は、とっくに忘れていたソルムが神官であるという情報を彷彿とさせる。
ソルム
ソルム
お前の国、何も無ければ良いな

お調子者のような彼はきっととても優しくて、人の心に触れるのが怖くて、それでも助けたくて、だから神官をしているのだろう。

まだ付き合いの浅いアウラでも、それを何となく理解することが出来た。

自分が間違った思考へと落ちていかないように、優しく気遣って笑わせてくれて、笑いかけてくれる。

彼の慈愛に甘えて、アウラもその思惑に自ら乗りに行くことにした。…というより、するしか無かった。
アウラ
アウラ
…そうね
ソルム
ソルム
不安はあるだろうがお前がするべきなのは休息だ、ゆっくり寝ろよ〜
アウラ
アウラ
番の交代を…
ソルム
ソルム
……お嬢でもその辺の気遣いはできるのな。大丈夫だよ、俺は魔ほ…じゃねぇや、魔術で自分の疲れを浄化できるからさ。だから安心して休んどけ〜

それが真実かはともかく、アウラのことを気遣っての発言であることは容易に理解出来た。

よくできた人間だ、と素直にそう思ってしまう。
アウラ
アウラ
……ありがとう
ソルム
ソルム
勘違いすんな?さっきの話は事実だ。それに精神が安定してないやつの番で寝るなんて、俺にゃ出来ねぇよ

照れ隠しとも取れる言葉に笑いながら、アウラはゆっくりと夢の世界へ身を委ねていった。


ソルム
ソルム
…………………

規則正しい呼吸を繰り返し眠り始めたアウラをよそに、静かにため息を吐くソルム。
ソルム
ソルム
何があったんだかなぁ…ネーヴの霧はそうそう晴れねぇはずなんだが…まぁ、考えても仕方ないだろうな。こればっかりは

パチパチと弾ける焚き火の火の粉が、ソルムの思考をより鮮明にしていく。

さっきまでの優しい顔が嘘のように、目を細めて闇に包まれた空を睨んだ。

しかしすぐにヘラりと笑みを浮かべた顔に豹変する。

アウラの前でも見せているはずのそれは、独りのときにしか見せない不気味で独特な雰囲気を漂わせていた。
ソルム
ソルム
やっと、終わる

役者は揃った。
ソルム
ソルム
あとは流れに身を任せて導くだけ

ようやく彼の罪を、代わりに償える。
ソルム
ソルム
アウラには、少し悪いことをするけどな

さぁ、
ソルム
ソルム
歯車を動かそうか

彼を照らす月は、あの日と同じ十六夜月だった。



十六夜にはためらう、躊躇するって意味があるらしい。

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