第17話

17話 思いを
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2023/04/22 15:11 更新

真っ暗闇な夜に出発したのはいいものの、さすがに夜が進み闇が深まってきたので進むだけ進んで野営をしていた。

もう既に森の霧は晴れているが、木々の密度は相変わらずで、月明かり1つ通る隙間もないほど。

そんな場所で少し話がしたいとフィートが声をかけた。
フィート
フィート
色々巻き込んでごめんなさい

頭を下げる。
フランマ
フランマ
いえいえ!?頭をあげてください!
フィート
フィート
本来、これは身内だけで終わらせるべきだった。でもどうしようもなくて、“長に気付かれないようにアウラを逃がした”
フランマ
フランマ
…………え?

スっと頭をあげて、再び淡々と話し始める。
フィート
フィート
反省はしている。でも、後悔はしていないし、する権利すらないと思っている。……君はきっと、知る権利があると思ったから、少しだけ話をしたい……聞いてくれるかな?
フランマ
フランマ
な、何を言って
フィート
フィート
ちゃんと話そうか。 よく聞いて欲しいんだ

ほとんど表情は変わらない。でも、真面目な話をしようとしている空気は、しっかりと漂っていた。
フィート
フィート
きっと長と管理人は、大事なことを隠している
フランマ
フランマ
大事なこと……ですか
フィート
フィート
そう。私やメモリアでも知らないような、2人だけの、秘密

ゆっくりと、淡々と、それでいてはっきりと、彼女は自分の考えを伝えていく。
フィート
フィート
きっと、300年前……私達はメモリアの力で記憶を自ら消した
フランマ
フランマ
メモリアさんが、え?記憶って…
フィート
フィート
理由は分からない。でもその仮説を作れてしまうほど、謎が多すぎる。まぁでも別に、知らなくてもいいと私は考えていたんだ。長様が私達に知るなと言うのなら、大人しく従うつもりだった………
フィート
フィート
……でも、彼女はそうではなかったようだ
ここで思い当たる彼女とは、ただ1人。
フランマ
フランマ
アウラさん、ですか
フィート
フィート
あぁ、私はあの子に魔法を教えていたんだけれどね、その時に、言ってしまったんだ

“この世には知らないものが多すぎる”

その言葉は夢見の子供にはあまりにも甘い。
フィート
フィート
彼女の好奇心に火がついたようでね、外の世界のことを聞いてくるようになった。いつの間にか、知りたいじゃなくて知らなければならないになっていたんだろうね。そして困ったことに私はまぁ、別にいいかと思ったのだよ。あの子が私の代わりに明かしてくれるのなら、それはそれで悪くはないか、とね
フランマ
フランマ
………………それって、アウラさんを、身代わりにしたのと同じでは?
フィート
フィート
そういうところは鋭いんだね…
スッ、と細くなった目が痛い。
フランマ
フランマ
す、すみません…
フィート
フィート
謝らないでくれよ。その通りだからね。現に、こうなってしまった…まぁでも、言い訳をするのなら、知らなかったのさ
フランマ
フランマ
知らなかった、?
フィート
フィート
魔女が森を出たら暴走する?一体何が?冗談じゃないよ。聞いたこともなければ、どうして戦争中は森の外で魔法を放てていたのかすらわからない。わかることはあの日あの時あの瞬間、私達は戦場にて戦っていたということだけさ
フランマ
フランマ
………………

先程のフィートの言葉の意味を少しだけ理解する。

魔女にもなかなか難しい事情があるようだ、と目を瞑った。

魔女とて人間だ。
森以外で生きていけない理由なんてないはず。
むしろ森で生きる方が難しい。
それに、ネーヴの言い方は、

“魔女はこの森から出ては行けない”

重要なのは、魔女の森であるということ。
フィート
フィート
でも、どうしてだ?私達が魔女の森にいるのは、300年前の人間に国を追い出されたからじゃなかったのか?

人間であり、300年前に生きる者でもないフランマは、行き場を無くした声が口中に留まり続け顔をしかめる。
そんな様子を見てフィートはフランマの心境に気づいたのか気づかなかったのか、再び口を開いた。
フィート
フィート
しかし不思議なこともあるものだね
フランマ
フランマ
不思議?
フィート
フィート
全く、記憶にないのさ。人間に追われた、逃避行の日々がね
フランマ
フランマ
300年前でしょう?当然…とはいかなくとも、記憶が朧気になるくらいはありえるのでは?
フィート
フィート
それだけじゃない。戦争の風景も、何もかもだ。森に来る前の記憶が、ネーヴの霧で覆われた様に、思い出せないのさ。世界で最も大きいと呼ばれた大戦の記憶だぞ?

それに、300年と言えど変わり映えしない森の中に引きこもっているだけだ、と付け加える。
フランマ
フランマ
それは…偶然とは言えない?
フィート
フィート
それを裏付けるように、誰も覚えていないし、話の中に出そうとしない。世界が、真実を隠すために認識の外に置いているようにね
フランマ
フランマ
認識の、外?
フィート
フィート
あの子の認識阻害の結界と似たようなものだよ、そこにあるけど、感じることは出来なくて、感じられないように、わからないように隠されていく。
私がそうならなかったのは、感情というものの中にそれがなかったからなのかもね
フランマ
フランマ
感情の中……戦争に対しての負の感情を利用して、認識しにくくなるように、自然的に“思い出したくない”を作っていた?
フィート
フィート
そういうことだね。でも私は、その感情に左右されるものがなかったんだよ。私自身、人と比べて感受が気薄なのは理解している。そして私と共にいるあの子も、私の発言で認識阻害が切れてしまったんだろう

ここからが難しくてね、

そう言うフィートの、暗がりにの中の炎に照らされた美顔は、少しだけ眉をひそめているように見えた。
フィート
フィート
300年前の大切な何かを、きっと長達は隠している。それによって、私たちは憎むべきではない相手を憎み、恨むべき人を忘れ去っているのかもしれない
フランマ
フランマ
憎むべきではない相手……?
フィート
フィート
……まあ、可能性の話だよ。ここまで話しておいてと思うだろうが、気にする必要は無い。君はあの子を無事森まで送り届けることが仕事だからね。そのためと言っちゃ何だが、最後の助言だ。

……嘘に隠された真実は、どんな時でも、解き明かせばいいってモノではない。君が秘密を見ることになった時、それが秘密である所以が理解できないかもしれない。……でも、忘れないで欲しいんだ。世界の秘密が秘密として存在しているなら、その裏には血と涙を流した先人がいて、その奥を私たちに理解する権利はない。
フランマ
フランマ
………どういうことでしょうか
フィート
フィート
いずれわかる、と私は思っているが。わからないのが最善さ
長生きしかしていない婆さんの独り言さ、と雑くはぐらかし、もう語ることはないと告げた。
フランマ
フランマ
………忘れないようにします
フィート
フィート
律儀だね。ありがたいよ

明日に備え、フランマはすぐに眠りにつく。
夜番を買ってでたフィートは独りでに呟いた。
フィート
フィート
私の知らないところで、何があったのか…もう、間違いは正せないと言うのにな。
できるなら300年前の私に戻りたいものだが

それでも、300年前の私は選択を変えることはないだろうが。

彼女は自嘲の笑みを漏らす。
ここ最近では珍しく顔に表情がついた、人間らしい顔だった。

彼女とて、感情がない訳では無い。
ただ、少しだけ心が鈍く、想いが顔に出にくいだけなのだ。
フィート
フィート
今の私の最善を探すべきだね
どんな形であれ、300年止まり続けていた世界が動き出しているのを感じる。
きっとここでひとつの終わりを迎え、そして始まっていく。

年寄りの時代は終わりかな、と思うがそれでもアウラにはまだまだ広い世界を知って欲しいものだ。
目に入れても痛くないほど愛しい教え子の未来を、自分が否定することだけは絶対に許されない。私があの子の行く末を応援し、そっと背中を押してやりたいのだ。
今回その仕事を引き受けることは叶わなかったが、停滞し続けていた世界を変えるのはあの二人。



焚き火に枯木をくべ、夜空をただ見上げていた。

フィート
フィート
さぁ……どうなるだろうね?
















フランマ
フランマ
短い間でしたけど、ほんとにありがとうございました

場所は森の出口手前。
あれほど苦労した森を、ほとんど魔物に遭遇することも無く走り抜けられた事実に頬を引き攣らせたのはつい先程のことだが、今はフィートに礼を言うくらいには落ち着いていた。
フィート
フィート
いや、礼は私たちがすべきだ。君は魔女の我儘に付き合ってくれた。礼を言うよ

機械的にぺこりをお辞儀をする。彼女と知り合って数日もたってはいないが、これが彼女のできる最大の謝礼だと、フランマはどこかで感じ取っていた。

フランマは姿勢をただし。森の外を眺める。

再びフィートに向き合って、力強く告げた。
フランマ
フランマ
行ってきます

想像以上に、優しい声色が返ってきた。
フィート
フィート
行ってらっしゃい。うちの末っ子を頼むよ
フランマ
フランマ
………、はいっ!

一礼して森の出口へ駆け出す。

「キミも怪我には気をつけるんだよ〜」
と、間延びした声が響く。
顔を見なかったら本当に抑揚のついた感情的な声だな、と走りながら思う。

王都には全力で向かえばこれから1日半ほどで到着する。
森の入口、つまりこの場所にたどり着けばネーヴェラの言っていた“暴走”の心配はない訳だが、残された時間はあまりにも少ない。

これからどうなるのか、詳しいことは誰にも分からない。

なのにこれにフランマが付き合う必要は皆無。

ただ危険な戦場に、自ら走りにいくのは、自分の命を守ることが優先される冒険者として正しい姿とはいえなかった。
フランマ
フランマ
それでも…僕が行かなくちゃ

誰かが悲しむ未来は、あまりにも苦しいから。

それに、行き当たりばったりな冒険も、自分らしくて良いものだ。
久しく感じていなかった高揚感は、これから自分の想像も出来ないことが起こるだろうという期待感故か。

それでこそ冒険者。それでこそ冒険!

魔女たちが聞いたらどう思われてしまうだろうか。案外笑って許してくれそうな気もするが。



フランマが駆け出した後、残されたフィートはいつの間にか生まれた霧の中に消えていった。






4000字近い…なにかの冗談かな?w
あ、はい…お久しぶりです…皆もう内容覚えてないよね

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